僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

僕と海の国のティーパーティー

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「今日は来てくれて有難うございます。」


 目の前でアクアがお茶を入れてくれながらそう言った。
昨日は1日が買い物で潰れたが良い出会いも出来たので満足な日だった。今日はアクアの屋敷に行くことにしたのだけどもいちいち時間を気にしながら海の国で活動するのが面倒だったので空気魔法と変換魔法を応用した魔法を使ってみた。ちなみに世間一般にはそんな魔法名称は無いのだが僕の中でわかりやすくイメージできるのでそう呼んで使っている。他の人からみたら創作魔法の一種になるかもしれない。その魔法達を使って水中にある酸素を僕達が吸える空気に変換してみたのだ。これなら時間を気にせずいつまでも水の中を散策できるだろう。

 まだ長時間の水の中にいることへの弊害は克服できてないがせっかくなので長時間の水中活動用の魔法が手持ちにあってもいいだろう。『聖女の集い』で使用した魔法とは原理自体が異なる。あっちは短時間なら優秀なのだ。


 新たな魔法の実験ながらポリプスさんに会いに行き、アクアの家に行くことを伝えたら紙袋と住所の描かれたものを押し付けられた。
 紙袋を覗くとそこには小瓶が何個も入っていて瓶には『薬』と書かれている。もしやアクアの妹の薬か。
 鑑定をかけて中身を知った瞬間にポリプスさんに問いかけの視線を送ったら察した彼女がとにかく実際に見てみろと言っていた。


 彼女の家に着くとアクアが庭の手入れをしていた。後で聞いた話だが妹の治療費が昔から掛かっていたらしく令嬢ではあるものの少人数で生活をしているようだ。侍女もそんな事情を知っていても残ってくれた人達で彼女は感謝をしていた。

 
「妹も最近調子が良いので今度のパーティーは家族で行けそうなんです。」
「良かったね。」


 彼女曰くお茶を口元に運ぶ。
 こちらのお茶はなんともデゥルデゥルしている。水の中でも親和されない様子から察してもらいたいが粘性か高いものの様だ。見た目の影響か僕と人魚達以外は余り飲もうとしていないが味ははっきり言って美味しい昆布だしである。

 お茶だと言われて飲むと驚くけど、前世で昆布茶とかめかぶ茶とか飲んでいた身としては実に馴染み深いあじである。


「お茶のお味はどうですか?余り売れ行きは良くなくて。」
「僕は好きだよ。売れ行きってここの家が販売しているの?」
「はい。海の国の名産にと祖父の代から手掛けてます。」


 始めて見る人にはびっくりで売れないよね。
 でも昆布の生臭さも変な味もしない純粋な旨味の固まりは丁寧な仕事をしていることが分かる逸品だ。しかも昆布には美容のための成分が多く含まれていて体にもいい。多く取って直ぐにというものではないが、それをキャッチフレーズにしたら貴族の女性たちには人気がでそうだ。

 世間話を装ってそんな話をすれば彼女が食いついてきた。
 フェンの話もあったから観察していると彼女は他人との間に自ら壁を作るタイプの様だ。
 彼女は頭の悪い人ではない。自分を犠牲にするのがくせになってしまっているだけで説明をすれば自分の中で取り込んでちゃんと自分の意見へと変えることができる。あとは自分に自身が持てればガラリと変わる事だろう。


「そんなふうにPRするのは思いつかなかったです。」
の人と協力して粉とかに加工すれば料理にも使えるね。」
海の国こちらでは使えませんけど。それも素敵。」
「‥…お姉様。」
「イリヤ、どうしたの?」


 色々なアイディアが出て盛り上がってきた所で部屋の扉が開いたと思ったら鮮やかな水色の髪が現れた。フリルの多いパジャマ姿でその手には人形が握られている。紺色の瞳には涙が浮かべて現れた少女に慌ててアクアが立ち上がると側に寄った。

 彼女が例の妹さんだろう。
 キュルと目の色を言葉通りに変えて彼女の状態を観察する。


***

イリヤ・ラメール(16歳)

性別 女
種族 人魚
魔力 300

状態 健康(少し肥満)

魔法属性 水 

 
***


 仮病か。
 ポリプスさんはいつからかこれを知っていたのだろう。
 あの時渡された紙袋はアクアの手に渡った時に『何時もの薬だわ。』と話していた。
 だけど僕の目には『薄めた水飴』と映し出されたのだ。もしも本当に病気ならこの薬で良くなるわけが無いのだ。

 それにしても、このイリヤと言う少女の演技には眼を見張るものがある。こんなところで燻っていないでそっちのほうに行けば良いのに。

  本当に熱があるような頬の赤みに潤む瞳、しおらしさの上目遣いは庇護欲を掻き立てるだろう。長年共にいる家族が騙されるのだから初めての会う人にはどう映るだろうか。

 ウォルターは何かを言いたそうにこちらを見ているが、バルスさんはケロッとしていて二人とも反対な態度だ。


「忙しそうなら出直すよ。」
「いえ、きっと熱で寂しくなっただけだと思います。部屋に連れて行って直ぐに戻ります。」
「お姉様。彼等はどなた?」
「お客様よ。さあ、部屋に戻りましょう。」
「嫌よ。ワタシもここに居るわ。彼等とお話がしたい!」


 うるっと目から涙が零れそうだ。
 だけどチラリとこちらの反応を見る姿はどうも違うことを考えていそうだ。別にこちらはいても構わないと言う言葉を待っているよう。
 
 なら、ご期待にでも答えてみようか。


「熱があるのでは休まないといけないよ。」
「え?」
「熱は身体の悪いものを退治している証拠だからね。」
「そうなんですね。お詳しい。」
「ね、熱はだいぶ下がったの。大丈夫よ。」
「顔が真っ赤で見ていて痛々しい。早く休んだほうが良い。」


 逆の意味でのご期待だけどね。
 何でここにいたいのかは想像だけどわかっている。アクアの交友関係が知りたいのだよね。しかも地上の身なりの良い護衛までいる人達なら尚更知りたいはずだ。この子からは全てを奪いたい欲求の匂いがする。




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