僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

僕と腹に一物のある少女

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 ロマンスグレーをきっちりと固めて目つきの鋭い鼻と口の間にひげを生やした男が入ってきた。
 イリヤがごねている間にどうやら屋敷の主人、アクアとイリヤの父親が来たようだ。屋敷の主人、ラメール氏が部屋の喧騒に気がついて様子を見に来たのだろう。
 ラメール氏は僕達を視界に入れるとイリヤに静かにするように伝えた後に丁寧にお辞儀をして挨拶をしてくれた。

 ラメール氏の名はクメル。海の国では爵位と言う概念はなく順位で貴族を表すらしい。ラメール家順位は七位で無理やり爵位に当て嵌めると子爵ぐらいなのだという。そんな爵位がないのになぜわかるかと言うとラメール家は昔から商品を陸で売っていたのだという。なので人間の事情にも詳しく、内向的な性格が多い人魚にしては珍しく陸に恋する一族なのだ。


「末の娘が邪魔をした。昔から身体が弱くて甘やかしていてね。」
「うん。それは体質ならばしょうがないね。でも、人前に出す予定があるならちゃんとマナーを教えたほうが良い。」


 いつまでもこのままと言うわけにはいかないだろ。

 そういえば父親はハッとした顔をしていたがアクアの父親だからきっと気付いていて気づかないふりをしていたのだろう。それとも気が付きたくなかったか。
 僕のような青二才に言われてカッとならない姿は好意的に取れる姿だが、娘たちをもっと見てあげて欲しかった。


「僕達も王様に今度のパーティーに呼ばれています。」
「では、貴方方が噂の‥…。」
「はい。僕はまだ子供なのでそこのお姉さんの行動の意味を図りかねますが、パーティーでこられる方々がどう思うでしょうか。」
「失礼だがお年はいくつなのだろうか。」
「今年で14になります。」


 目の前の人物が成人も迎えていないのだと言うことにラメール氏はもちろんのこと先程から口を抑えて黙ってますアピールをしていたイリヤも庇護欲を掻き立てそうなふりを忘れて真顔になっている。直ぐに表情を元に戻したが見ている人は見ている。
 ラメール氏はさすがか態度を変えることなく接してきた。


「なるほど、その歳で女神様の使者になるだけありますね。」
「僕はただお祈りしていただけですよ。」
「どういった経緯でアクアと知り合ったかわかりませんが、どうか仲良くしてください。さあ、イリヤは部屋に行こう。」
「嫌です。ワタシも皆様と‥…。」
「体調が良いならパーティーでのマナーを勉強しよう。」
「嫌です、嫌です!」


 嵐が去ったとでも言おうか。
 病弱仮病の妹がいなくなると部屋はとても静かになった。


「若いのにしっかりしてますね。」
「家族からしっかり育てて貰ってますから。」
「‥…。」
「アクアに言う事じゃないですけど甘やかしは家族愛では無いですよ。」
「そうですよね。」
「アクアは自分のために生きても良いと思います。例えばその髪飾りを贈った男ととか。」


 先日会った時には無かった赤いガラスの髪飾り。
 恐らくはフェンが贈ったものだろう。アクアの髪に映えてとても綺麗だ。

 それを指摘すれば顔を赤らめる彼女。
 その姿は意識しまくっているのだと傍から見てバレバレな程で気に入らないが良かったなと心の中でフェンに言っておく。
  となると彼の言っていた憂いの原因は変なおっさんに絡まれたと言うことじゃなくて妹と自分の立場と言った所か。

 あの父親は目が覚めただろうからアクアをこの家暗黙の呪縛から解放してくれる筈だが、あの妹がどう出るかはわからない。彼女はアクアに執着しているように見える。


「‥…はじめて。」
「ん?」
「はじめてイリヤにあげれないって言ったんです。」


 これっと触れているのは赤い髪飾り。
 彼女は教えてくれた。これがはじめてのどうしても渡したくないものなのだと。その思いが恋かは分からないが彼が似合うとはにかんで笑ってくれたときに胸が熱くなったのだ。きっと自分よりも妹の方が似合うとは思ったけど初めての拒否をした。


「それで良いと思うよ。だってフェンが貴女にって贈ったアクアの物だもの。」
「私の物。」
「少し考えて見ると良い。」
「はい。」
「そうだ。最初で頓挫してしまったけど頼みがあるんだ。」


 そうそう。
 今日ここに来ようとしていた理由がちゃんとあるのだ。
 僕は2センチ程の小瓶を彼女の前に広げて見せた。瓶にも拘りを見せて女性が好むようなデザインや男性でも持てるようなシックなものもある。
 瓶の中身は何本か入っているが殆どは空だ。中身はバルスさんが作りあげた変身薬である。手軽に地上で遊べるようにと材料から見直して作った物なのだが試すための被験者をお願いしたかったのだ。

 もちろんここに来る前に寄ったポリプスさんにもいくつか渡してある。

 もしもいい感じに出来ていれば本来の四分の一の値段で売ることは可能だしそのレシピを人魚達のために渡すことにしている。

 瓶は誰でも手に取れる様に種類を用意して見たのだ。


「地上に出るときはフェンが是非とも側に居たいと言っていたから頼むことにしたし、ポリプスさんのお墨付きももらっている。どうだい?」


 せっかく人魚達を理解しようとしてくれた人間の町が側にあるのだからいかないのは勿体ない。暫くはギルドも目を光らせてくれるといっていたので変わるなら今だと思う。


「もしも、アクアのお墨付きも貰えたら王にも献上する予定だ。」
「やってみたいです。」


 それなら良かった。
 人間の方も海に長期間入れるように僕達が今使っている魔法が簡略化して渡す予定だ。犯罪に使われないように調整するのが結構難しいけど。
 
 さて、フェンの恋路のお膳立てはしたし。この昆布茶を楽しんだら帰るとしよう。





    
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