僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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海の国と泡と消えゆく想い

腹に一物のある少女

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ワタシの名前はイリヤ・ラメール。
 病弱で儚い窓際の美少女よ。
 小さい頃から直ぐに熱を出しては皆から甘やかされたワタシはこの世界のお姫様に違いないわ。お母様やお父様は何よりも優先してくれるし、お姉様は何でも私に譲ってくれる。

 苦しくても楽しい。それが日常的だったのに成長していくうちに苦しみが緩和されてそのうちに熱も出なくなってきた。医者はほぼ完治でしょうと言っていて両親は喜んでいる。だけど冗談じゃないわ。
 せっかくわがままを言っても許されているのに。このまま儚げな少女で男共を魅了して死ぬまで甘やかされる予定何だから。

 そこからワタシは苦しい時の顔を観察して何時でもそのときの状態になれるように練習した。長年その状態が普通だったワタシの身体は染み付いていた様で自在に状態を変える事が出来るようになった。それからは気に食わないことがあると直ぐに体調を崩したふりをした。 

 また病気がぶり返したいえ、それよりも悪化した状態のワタシを見て両親はさらに過保護になったし姉はワタシが癇癪を起こすとすぐに言いなりになる様になった。

 ある日、姉が薬を探しに何処かに行ったときに前に助けた人と再会したと言って嬉しそうに髪飾りをして帰ってきた。赤い花の髪飾りは波に揺れてキラキラキラキラととてもいい綺麗。ワタシの青い髪にピッタリだと思ったからいつも通りにそれが欲しいとねだった。

 いつもなら迷った後に髪に刺してくれるのだけど今回は『駄目。』と言われた。初めてだった。
 そうなるとどうしても欲しくなるのがワタシだ。
 泣いて喚いて熱が出たように振るまったのに、姉はその髪飾りだけはくれない。親にもあれが欲しいと訴えたが初めてアクアが拒否する姿にそのうち別の物をあげるからと逆にワタシを宥めた。

 そうよ。どうせ安物の物よ。

 その日からよろしくない変化が訪れた気がする。
 お城から今年は嵐のせいで得られなかった加護を得られたという報告と共にパーティーをするという話しが来たのは良い。体調が良いふりしてパーティーに参加して会場をワタシの魅力で釘付けにしてやるんだから。

 そのために体調が良いふりをしているのだが、そんな中でお姉様にお客様が来た様だ。チラリと部屋をみたらワタシには劣るけど人形の様な綺麗な男と冴えない男に物語に出てくるような騎士の姿の少し年上の男がいた。
 姉の事を慕ってたまにこういう人達が来るのだけどワタシの儚い姿に直ぐにワタシの物になるのよね。

 いつも通りに寂しそうに部屋に入って潤んだ目でお姉様の腕の中で懇願したら返ってきた言葉は想像しない物だった。


「熱があるのでは休まないといけないよ。」


 はっきりとワタシがいることを拒否された。
 いつもならワタシの儚げな姿に男達は心配してソワソワして寂しがっているのを慰めてくれるのに。その目つきは全てを見透かしているように冷ややかだ。
 少し粘っていたらお父様が現れた。
 お父様は優しいけどこういったお客様に対してのマナーは厳しい。静かにと言われたので言うことを聞いて静かにしているとどうやらこのお客様は只者では無いらしい。女神様がどうとか言っているから教会の人かしら。

 ワタシに対してマナーが云々言っているけどワタシがやっていることがマナーなのよ。

 しかもこの客人私より2歳も年下だったわ。
 そんな子供がマナーだ何だ言ってもなワタシには敵わないわよ。

ってあれ。お父様の目つきが変わったわ。

 マナーのお勉強?
 嫌よ。そんなの要らないって言っていたじゃない。

 王の面前だから最低限のマナー?
 こんな多くのマナーなんて覚えられないわ。また体調が悪くなりそう。え、そしたらパーティーは考えもの?

 ワタシは履きなれない靴に血を滲ませながらマナーの勉強をする。
 それはパーティーでいい男を見つけてこの家族を捨てるため。甘やかしてくれない家族なんて要らないわ。
 時折疲れたように座り込めば心配する屋敷のメイドたち。そうよ。本来はこんなふうになる予定なのに。

 それもこれもあの本当かも分からない女神様の使者を名乗る者が来てからだわ。国単位で騙されてないかしら。パーティーを企画させた事は褒めても良いけど。こんな面倒くさいのはゴメンだわ。


最近お姉様もソワソワしていて構ってくれないし、早くパーティーの日にならないかしら。そしたらいろんな人にこの儚げな態度でチヤホヤしてもらうわ。病気で行けないなんて馬鹿な事にならないように気をつけないと。


 ワタシはこの時に一つミスをした。
今までならこんなに体を酷使したら熱を出してサボっていたのにそれをしなかった。お父様のパーティに連れていけないかもと言う言葉に乗せられて熱を出さないようにしていたのだ。

 それをそっとお父様やお母様が怪しんで見ていることなんて気が付かなかった。其の手にお手紙が握られているのも、それが元主治医からと魔女の物だと言うことも。

 ワタシの足元が少しずつ削られて行っていたのだ。







________

 いつもお読みくださり有難うございます。

 体調が優れないため身体を休めるので3日程お休みを頂きます。再開は7/11です。
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