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海の国と泡と消えゆく想い
僕と楽しい思い出の終わり
しおりを挟む青空広がる日差しの眩しい日に青銀の髪に赤の花の髪飾りを付けた少女がクローデット商会を覗きこんだ。もうすでに顔なじみになっている商人達は心得たとばかりにこの店の代表を呼びに行く。少女は白いフレア状のワンピースを着ていてその手には今仕掛けている商品が抱えられていた。職員の一人がその商品を受け取り、彼女の待ち人であるフェンを一緒に待ってみる。
すると先程まで動きやすい服装だったのに小洒落た服装に変えてきた代表が慌てた様子で現れた。
その表情はとても嬉しそうで少女にメロメロなのだと周りからもバレバレである。一方の少女の方も初日にプレゼントしたという赤い花の髪飾りを毎日つけてくれている様子を見る限り満更でも無さそうだ。
長年フェンへの嫁問題を一同で心配していた身としてはこのチャンスは物にして貰いたい。
そう思っていたのだが少女とのデートを終えて帰ってきたフェンは落ち込んだ様子で机に突っ伏した。何があったのかを聞こうとしても『煩い。』『あっちに行ってろ』などの言葉だけが返ってきて以前の彼を思い出した。
以前の彼は商会主の父親と折り合いがわるく色々と危ないこともしていたヤンチャであった。多少丸くなってきたが苛つくことがあると直ぐに表面に出てそんなときは誰もが近づこうとはしなかった。だけどある日、嵐で海に投げ出されて人魚に助けられたと帰ってきた日から変わった。父親を見返して彼女を恋人にすると宣言をしては真面目な坊っちゃんになっていたのだが。
「ディーレクトゥス様、どうしましょうか。」
なんて商会の職員に囲まれている。
ちょうどウォルターのパーティー用の衣装が出来たというので取りに来ただけなのだが、商会に入ったらそこはお通夜のよう。それじゃあ客も逃げるし、纏わりつかれては僕も邪魔だ。しょうがないのでフェンに合わせろといったら一瞬でお通夜から回復した。現金な奴らだ。
一人の従業員が案内をしてくれてついたのは管理簿などを付けるそれなりに大事な部屋だった。案内してくれ人には帰ってもらい彼の名誉のために一人で対面するために付き添いできたウォルターには品物を確認してくるように伝えてその場から離れて貰う。バルスさんは元々お使いを頼んでいるので居ないのでそのまま部屋に押し入る。
中は書類で散らばっていて壁一面には本棚が置かれている。部屋の中央にはどっしりとした机が置かれてその机には酒瓶とフェンがいる。
「振られたって?」
「‥…ここは関係者以外立ち入り禁止だ。」
「振られて諦めるぐらいならその程度だったんだね。」
「違うっ!」
「わかっているよ。アクアは君のために別れを言ったんだろ。」
何でそれをと言うような目線がかち合う。
まあ、想像はしていたことだ。人魚も人間も薬を使わないと長い間一緒にいれない。人魚が薬を使って地上に住んでも一日に一回は母なる海に浸からないと不調を起こす。ポリプスさんもその理由で部屋を水のゼリー状にしていたのだろう。逆に人が海で長期間一緒にいるとその身体は徐々に溶けていく。どうしても相反してしまう。
「ここで諦めるのかい。」
「しょせんは種族が違うのさ。」
「それだけのことじゃないか。」
「何が分かる。」
「君はどうなりたいの。」
ここで荒れていると言うことは諦めがついて居ないと言うこと。だけど自分の種族を変えてまでは想っていないのか。そう尋ねればフェンは立ち上がる。
「オレが人魚なっても良い。そんなことを出来るナニカを知らない。だけど、あの助けてくれた彼女を愛してしまっていて身が焦がれるんだ。どうしたら良い。」
「‥…フェンの幸運は僕がいると言うことだよ。」
「?」
「僕の親は人間と神様なんだよ。」
内緒だよと口元に指を立てたらガバリと肩を掴まれた。
正確に言うと僕の本性である魂を生み出した存在が人間と神でありそこで起こった僕の存在の消失をどうにかしたのが魔であったということ。この世界にはちゃんと人間の両親がいる。
それでも前世では特殊な存在だったが生きていたには変わりない。
種族が違う存在が共に歩んで行った生き証人のような物だとおもう。そんな僕が側にいるってすごく幸運だろ。
「君は魔法が使えるかい?」
「多少なら。」
「それで良い。最後に聞くけど彼女を幸せにしたい?」
「勿論。」
これだけの思いがあるならこれからやってもらう訓練も大丈夫だろう。
「あと2日の内に完璧にこなしてもらうから。」
にっこりと微笑んでフェンを部屋から引きずり出した。
子供に引きずり出されるおっさんなんて見世物に目を丸くする従業員だがフェンのやる気に満ちた表情をみて良かったと安堵している様だ。良い従業員で良かったね。
大剣の似合うパーティー衣装に気分が良いらしきウォルターもついでに回収する。フェンはここの責任者でもあるので長時間誘拐するわけにもいかないので一時間で原理を理解してもらう事になる。商人たちにもその有無を伝えてオッケーを頂いたらウォルターとフェンを連れて海岸にいどうする。その頃には僕の背後に長身の男達がついてくるという不可思議な光景になってしまった。
「さて、ウォルターにフェン、魔法の訓練でもしようか。」
「うげ。マジですか。」
「なんかのときに役立つかもしれないだろ?」
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