191 / 245
海の国と泡と消えゆく想い
僕と妹さん
しおりを挟むアクアのフェンに対する気持ちはわかった。
フェンの止められないニヤケ顔を殴りたい気持ちだが今は寄り添うイリヤをどうにかしよう。この魅了の魔法の様なものは正確には魔法ではない。魔法なら魔力の動きが分かるし対象物の指定には修行も必要となってくる。
昔は本当に病弱だったと言う話なのでそんな修行など出来ないだろう。となると彼女のこの体質は何かの副作用とでも言おうか。昔からこんな体質ならば両親もアクアを顧みることなくイリヤに構いそうなのにそれがないと言うことは最近になって能力に目覚めたか。
しかも自覚もなさそうというよりもともとが自分が中心タイプだから違いに気がついてない。
気づかれる前にこの能力を消してしまってから話を進めたほうがいいと判断して最初に出会って以来の鑑定をかける。すると前には無かった『禁断の果実』と言う項目が出来ていた。何をきっかけに出来たかはしらないが『禁断の果実』で思い浮かぶのはかつての天界で作られた人の話し。ヘビが誘惑をして神の果実を口にしたのだがこの体質にも性質が似通っているようだ。
急に生えた様なものなので抜くのもまだ可能だ。
気づかれないとは思うが片手に薄っすらと魔力を纏わせイメージは掃除機のように問題の物を吸い出す事にする。魔眼で見える彼女のどす黒い感情の奥に見える一つの光る希望の様な何かが見えた。それに触れると彼女の感情が読めてきた。彼女はウォルターの言っていたように我儘なお姫様といった感じだ。自分が中心で誰もが望むままに動く事を臨んでいる。
その感情に目覚めたのは幼い頃。
姉、アクアの勉学の友達が遊びに来た時の事だった。
窓から庭を覗いていると、姉とその友達が楽しそうに遊んでいる。簡単な魔法を使って勉強がてらのものらしい。
とても羨ましくてそっと部屋を抜け出したイリヤは庭に来ていた。
イリヤの存在に気が付いたアクアが部屋に戻そうとしたところ、友人の男がそれを止めたのだ。ベッドにずっといるのは可哀想だから、そう言ってイリヤのみたいものを見せてくれた。
空気で出来た兎や、土魔法で作り出した滑り台。学校で創ったという宝石も沢山くれた。
姉の様に学校へは行けないけどこうやって病弱でいれば我儘が許される。
夜にやはりというか熱を出したもののいつもより心が踊っていたこの日の出来事はイリヤにとってかけがえのない日になった。
何事にもきっかけがあるとは言うが、これは周りではなく自らの心の問題だな。
イリヤの中から問題の物を抜くついでに記憶に触れてしまい余計なものを見てしまった僕はいつの間にかその手に金の林檎を手にしていた。
「あら、それはこの間お姉様が食べさせてくれた果物よ。美味しくてもう一度食べたかったの。頂戴。」
「これは駄目だよ。普通の者が食べてはいけない物だ。」
「え、ワタシは食べたわよ。なんとも無かったわ。」
「これは奇跡を一つ叶えてくれる神の果物だ。きっとイリヤが良くなったのはそのお陰だろう。」
そういう事にしておこう。
噂ではとても病弱なイリヤが暫く体調を崩さずにパーティーに参加できた事に疑問を持つ者もいるだろうし、その前に食べたこの樹の実のお陰ど言うことにしたほうが彼女も都合が良いだろう。現に何か言いたそうだがそしたら長年仮病を使っていたことがバレるかもしれないので何も言えないでいる。
イリヤに薬を渡していたポリプスさんや最近、医者や、ポリプスさんのお陰で事実を知ったご両親も口を閉じる。
こちらはラメール家のために口を閉ざしているのが正しいだろう。
長年、次女を甘やかせて我儘を受け入れ他の家に頭を下げた事もあったはずだそれは愛する娘が熱でうなされている姿を信じて少しでも欲しがった物を渡したかったからだ。それが嘘だったと知った今は、怒りより悲しみがあるし他の家の者にも迷惑をかけてしまったのが心苦しいのだ。
「じゃあ、ワタシのもう一つの願い叶えたいから頂戴。」
「もう一つの願い?」
「ワタシ、幸せになりたいの。お金持ちの旦那様に甘やかされながら何もやらなくて良い生活がしたいの。」
「今までと同じじゃないか。」
「違うわ。今までは大した事なかったもの。最近はアクアお姉様も欲しいって言っても何もくれないし。」
最大限のやってきたことを大したことが無いと言われて遠くでラメール夫妻が涙をこぼした。
「アクアにもあげれない大切なものがあったのだろう。」
「でも、お姉様の物はワタシの物はなのよ。あの髪飾りもワタシの水色の髪の方が似合うと思うでしょ?」
「赤が似合うのは間違いないが、あれは彼女にぴったりだ。」
同意されないと理解したイリヤがむくれるように唇を尖らせる。
そして『禁断の果実』を無理やり取ろうと手を伸ばしてきた。2歳の体格差では簡単に奪われてしまうだろうが、こちらには二人の護衛がいる。指で弾いた果実はバルスさんの手の中におさまる。
あの果実は後で兄上にでも食わせてしまおう。
さて、問題はこの世界がわかっていないお嬢様をどうするかだけども。
「イリヤはこの世界の均衡を知っているかい?」
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる