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海の国と泡と消えゆく想い
僕の目の前の奇跡
しおりを挟むイリヤの歌は正直言ってうまい部類だと思う。
だけどあのアクアの歌の後に披露されると物足りない。会場の皆も同じ感情なのか首をかしげて歌が終わると一応ばかりの拍手が贈られる。
たとえイリヤの歌が類を見ないほどの物だとしてもアクアの物には敵わない。
「うむ。全員の歌が終えたようだな。投票をと思ったが皆の気持ちは一つの様だ。」
王様は周囲を見て満足そうに頷いた後にアクアの名前をよんだ。
その途端に皆からもう一度の盛大なる拍手と歓声が起こる。これは確かに投票なんて意味はない。満場一致とはいかないもののアクアの優勝で間違いない。
フェンが彼女を抱き上げて喜びを表した。いきなりの抱き上げに驚いたものの優勝と言う想像していなかった快挙に本人も喜んだ。
「では、アクアは何を望む。」
「私が望むのは‥…。」
「望むのは?」
「この方との地上での暮らしです。」
彼女の言葉に時が止まったかの用な静けさが訪れる。だけどアクアのその眼差しが本気であることを示していた。
「私はずっと陸地に憧れていて、そして陸上の殿方と恋に落ちました。彼は私と同じ世界で生きたいと実験途中の新しい魔法を使ってすでに2日程海に居ます。」
フェンが魔法の事を教えたのか彼女がこの魔法の事を発表してしまう。まあ、いずれは発表する予定だったし、実験途中とつけてくれたから良いだろう。フェンが遠くで謝っているように見えるが良い宣伝だと思ってサムズアップしといたらホッとした表情をした。
アクアの2日も海の中に居ることを知った人々は興味深くフェンをジロジロと見つめていて許される事なら根掘りはぼり聞きたいところであろうよ。
だけど、彼女の話は続いている。
「王族は陸上で国際の会議に参加するのに一週間は海に戻らないと聞きました。私も彼と共に有るために努力をしたいのです。そのすべを教えて下さいませんか。」
「アクア。」
互いのために努力して共にあろうとする二人の姿は美しい。
そう思ったのは僕だけじゃないようだ。知っている気配が会場を覗いているのを感じる。
そしてどうやらあのお方がまた使い走りにされた様だ。
アクアの一生懸命な願いに王が答えようとしたところで会場の上部で光の泡がまた発生した。
本日二度目の女神様の登場である。こんなに女神様が干渉なさるなんて前代未聞のことであろうが当の本人はケロンとしている。僕がいるから出てこれやすいのだろうか。
『「素晴らしい歌が届いて来たので見に来たら、性根も素晴らしい者だったとは。」』
「め、女神様。」
『「素晴らしい物を聞かせて貰った褒美だ。受け取るが良い。効果は使いの者にでも聞きなさい。」』
女神様はあっという間に消えてしまったが水晶の用な丸い何かがアクアとフェンの身体に溶け込んでいった。見た目はなんとも無さそうだが僕の目にはとんでも能力が見えている。
直ぐに効果を教えてあげたいが見えていない女神様の気配が僕の背後にあるので行動するのを待っているのだ。
「何?」
『何かを企んでいるムラキの配下の者が外に居ます。気をつけて下さい。』
「ふむ。ありがとう。」
その一言を伝えたかったのだろう気配は消えた。
気配が消えたのでアクアとフェンの元に行くと、二人が効果を聞くためにこちらを見てきた。周りの者たちも知りたいのだろうワクワクとした視線が向けられている。
「うん。どうやら女神様はお二人の願いを叶えたようだね。」
「願い?」
「二人は地上でも水中でも補助がなくても行動できると言うことさ。」
「え。」
「良かったね。」
そう。女神様はアクアとフェンに地上に出ると自然と人間の姿になり生活ができ、海に入ると人魚になれ生活できる能力を与えたのだ。周りはアクアがいや、愛し合う二人が起こした奇跡だと騒ぎ出した。
そこに水差すのが空気をよめないDQNと呼ばれる存在。ここではイリヤだった。イリヤは姉の祝福されている雰囲気が気に入らないのかズカズカと二人の側によると手を振り上げた。それを見て何をされるか察したフェンがその手を掴む。男の力には流石に敵わないのにイリヤが無駄な抵抗で暴れる。
今になってだがイリヤが会場で何が起こっているのを知っていた不思議と両親に連れられて出ていたのにここに戻ってこれた事実に、カトレア様の言葉が重なる。
『何かを企んでいるムラキの配下の者が(会場の)外に居ます。』
と言うことは僕達はそちらに向かった方が良さそうだ。
イリヤの方は任せてしまって大丈夫だろう。
僕はバルスさんとウォルターに声をかけると人知れずに会場を後にする。
会場の外は不気味なほどに静かだった。
本来ならいるはずの衛兵も兵士も騎士も誰も居ない。いや、そう思っていたがどうやら眠らされているようで目立たぬところで横になる兵士の姿。
薬の様なもので眠らされているのかどんなに揺すっても起きない。
中に知らせたら別の意味で騒ぎになってしまうだろうが、今会場の外に出るほうが危ないだろう。バルスさんに目配せをするとウォルターに王様とその近くの兵士に知らせる様に指示をだした。
僕達は恐らく戦って居るだろうラメール夫妻の元に急いだ。
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