194 / 245
海の国と泡と消えゆく想い
僕の目の前の奇跡
しおりを挟むイリヤの歌は正直言ってうまい部類だと思う。
だけどあのアクアの歌の後に披露されると物足りない。会場の皆も同じ感情なのか首をかしげて歌が終わると一応ばかりの拍手が贈られる。
たとえイリヤの歌が類を見ないほどの物だとしてもアクアの物には敵わない。
「うむ。全員の歌が終えたようだな。投票をと思ったが皆の気持ちは一つの様だ。」
王様は周囲を見て満足そうに頷いた後にアクアの名前をよんだ。
その途端に皆からもう一度の盛大なる拍手と歓声が起こる。これは確かに投票なんて意味はない。満場一致とはいかないもののアクアの優勝で間違いない。
フェンが彼女を抱き上げて喜びを表した。いきなりの抱き上げに驚いたものの優勝と言う想像していなかった快挙に本人も喜んだ。
「では、アクアは何を望む。」
「私が望むのは‥…。」
「望むのは?」
「この方との地上での暮らしです。」
彼女の言葉に時が止まったかの用な静けさが訪れる。だけどアクアのその眼差しが本気であることを示していた。
「私はずっと陸地に憧れていて、そして陸上の殿方と恋に落ちました。彼は私と同じ世界で生きたいと実験途中の新しい魔法を使ってすでに2日程海に居ます。」
フェンが魔法の事を教えたのか彼女がこの魔法の事を発表してしまう。まあ、いずれは発表する予定だったし、実験途中とつけてくれたから良いだろう。フェンが遠くで謝っているように見えるが良い宣伝だと思ってサムズアップしといたらホッとした表情をした。
アクアの2日も海の中に居ることを知った人々は興味深くフェンをジロジロと見つめていて許される事なら根掘りはぼり聞きたいところであろうよ。
だけど、彼女の話は続いている。
「王族は陸上で国際の会議に参加するのに一週間は海に戻らないと聞きました。私も彼と共に有るために努力をしたいのです。そのすべを教えて下さいませんか。」
「アクア。」
互いのために努力して共にあろうとする二人の姿は美しい。
そう思ったのは僕だけじゃないようだ。知っている気配が会場を覗いているのを感じる。
そしてどうやらあのお方がまた使い走りにされた様だ。
アクアの一生懸命な願いに王が答えようとしたところで会場の上部で光の泡がまた発生した。
本日二度目の女神様の登場である。こんなに女神様が干渉なさるなんて前代未聞のことであろうが当の本人はケロンとしている。僕がいるから出てこれやすいのだろうか。
『「素晴らしい歌が届いて来たので見に来たら、性根も素晴らしい者だったとは。」』
「め、女神様。」
『「素晴らしい物を聞かせて貰った褒美だ。受け取るが良い。効果は使いの者にでも聞きなさい。」』
女神様はあっという間に消えてしまったが水晶の用な丸い何かがアクアとフェンの身体に溶け込んでいった。見た目はなんとも無さそうだが僕の目にはとんでも能力が見えている。
直ぐに効果を教えてあげたいが見えていない女神様の気配が僕の背後にあるので行動するのを待っているのだ。
「何?」
『何かを企んでいるムラキの配下の者が外に居ます。気をつけて下さい。』
「ふむ。ありがとう。」
その一言を伝えたかったのだろう気配は消えた。
気配が消えたのでアクアとフェンの元に行くと、二人が効果を聞くためにこちらを見てきた。周りの者たちも知りたいのだろうワクワクとした視線が向けられている。
「うん。どうやら女神様はお二人の願いを叶えたようだね。」
「願い?」
「二人は地上でも水中でも補助がなくても行動できると言うことさ。」
「え。」
「良かったね。」
そう。女神様はアクアとフェンに地上に出ると自然と人間の姿になり生活ができ、海に入ると人魚になれ生活できる能力を与えたのだ。周りはアクアがいや、愛し合う二人が起こした奇跡だと騒ぎ出した。
そこに水差すのが空気をよめないDQNと呼ばれる存在。ここではイリヤだった。イリヤは姉の祝福されている雰囲気が気に入らないのかズカズカと二人の側によると手を振り上げた。それを見て何をされるか察したフェンがその手を掴む。男の力には流石に敵わないのにイリヤが無駄な抵抗で暴れる。
今になってだがイリヤが会場で何が起こっているのを知っていた不思議と両親に連れられて出ていたのにここに戻ってこれた事実に、カトレア様の言葉が重なる。
『何かを企んでいるムラキの配下の者が(会場の)外に居ます。』
と言うことは僕達はそちらに向かった方が良さそうだ。
イリヤの方は任せてしまって大丈夫だろう。
僕はバルスさんとウォルターに声をかけると人知れずに会場を後にする。
会場の外は不気味なほどに静かだった。
本来ならいるはずの衛兵も兵士も騎士も誰も居ない。いや、そう思っていたがどうやら眠らされているようで目立たぬところで横になる兵士の姿。
薬の様なもので眠らされているのかどんなに揺すっても起きない。
中に知らせたら別の意味で騒ぎになってしまうだろうが、今会場の外に出るほうが危ないだろう。バルスさんに目配せをするとウォルターに王様とその近くの兵士に知らせる様に指示をだした。
僕達は恐らく戦って居るだろうラメール夫妻の元に急いだ。
0
あなたにおすすめの小説
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!
ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。
え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!!
それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる