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はじまりと記憶
僕の正体を求め
しおりを挟む人形の国ニブヘイムの名が出てから場の空気が悪い。
とりあえず、父様の手から魔法使いのお兄さんを密かに解放させて謁見の間のはじっこに移動しました。
大人達は何か難しい話し合いをしている。
よく、小説だとかだと重要な話は別の部屋に移動とかなるんだけど、此処だと商人との内密の話もするため防音魔法がすごいのでわざわざ移動していない。
「魔法使いのお兄さん、人形の国ニブヘイムってなんかあるの?」
「お、お兄さん!?私の事はバルスと呼び捨てでお呼びください。」
「バルス兄さん?」
「そんなっ、ディーレクトゥス兄弟が怖いからやめてっ。」
ああ、確かに怖そう。
うん、じゃあ、バルスさんで。
そう呼んだらそれだけでも少しだけ複雑そうな彼だが、兄さんじゃなくなった事に胸を撫で下ろすように妥協を示した。
「転生者様に教えることは無いと思いますよ?」
「転生者だからこそ、この世界の事に疎いんです。教えてもらわないと何もわかりません。お願いします。」
「頭を上げてくださいっ。私なんかに。」
「私なんかと言わないで下さい。教えてもらうのだからお願いは当然です。」
生前から考えていたこと。
よく、教えてもらってませんという人がいるけどそれって何か違う気がしていた。
まあ、学生なら先生は金をもらって教えるのが仕事だから教えるのが当たり前だと思うけど、それ以外は他の人の経験や知識をもらうのだからたとえ相手が年下だろうと立場が低くてもお願いは当然だよね。
知識は金なりと誰かが言っていた気がするし。
だから、転生者だからといって当たり前に知識を貰うのは間違っているよね。
貴族としては間違っているかも知れないけど、僕にとってはこれが正解なのです。
「こんな方もいるのか……。」
「ん?」
「いえ、では、私の知る限りの人形の国ニブヘイムの事を教えましょう。」
バルスさんの表情がなんとなく優しくなった様に感じる。
その表情のままにゆっくりと人形の国について語られ始めた。
人形の国ニブヘイム
この国がそう呼ばれるのには一人の老人と一体の人形から始まる。
老人は人形師である日、人と間違うほどの巧妙な人形を作れると世間で話題になった。
彼が唯一売らずにその旁に置く人形はそれはもう誰もが欲しがる精巧な作品であった。
元は工業の国であったニブヘイムはこの老人に弟子入りしようとした人形師で一時期人で溢れ、人形の国と呼ばれる様になる。
ある日、弟子入りがかなった一人が老人の唯一の人形に傷を付けてしまった。
すると、人形に出来た傷からは深紅の液体が流れ始めた。そして広がるは鉄の匂い。
なんとその人形は生きていたのだ。
そのあまりにもの異常な事に恐怖を覚えた弟子はその日の内に老人の元から逃げ出した。
しかし、逃げ出した先々で弟子は人形たちに襲われる様になり、その話を広めながら逃げ続けた。
話を聞いたものはあまりにもの現実的ではないなはしに最初は笑っていたが弟子の周りで起こる奇妙な出来事があまりに多く、さらには手先が人形の様に固くなり始める様になるととうとう信じ始めた。
最後、弟子は全身が陶器の様になりまるで人形へと変化したかの様になると、月が綺麗な夜に人形たちにより人形の国に戻されたのだとか。
それからは人形の国ニブヘイムは人形に支配されている国としてあまり人は近寄らない。
ちなみに、人形の国ニブヘイムの王ロキも呪いで人形にされていると噂されている。
「早く言えば呪われた国なんです。」
「ほうほう。」
「だから、あまり行きたがらないんです。」
「そっか、呪いの国か。」
じゃあ、僕が行かないとね。
にっこりとそういうと今まで深刻な顔をしていた皆がばっと一斉にこちらを見た。
そのなかでもコウランの視線が痛い。
「ほう?」
「理を知る者として見逃せないからね。」
「本音は?」
「呪いの町?超面白そう。」
あっ、コウにぃの問答で思わず本音がでてしまった。
その本音を聞き、家族が止めるため説得を開始する。
美形な家族に詰め寄られると思わずどきまぎしてしまう。
「シンリ、あなたはまだ5歳なのよ。」
いきなり、痛いところをついてきましたね母様。
確かに肉体は、5歳の幼子なのだ。
いくら、前世の能力を引き継いでいるとはいえそこはどうすることも出来ない。
しかも、記憶が覚醒したのもついこないだだし、体の使い方を覚えていても身体がついてこないのが難関である。
三年、いや、一年でそのブランクをどうにかするとしても、記憶を放置するか?
いやいや、別に一人で行くことなんて無いじゃん。
「コウにぃも着いてきてくれるよね?」
「……これでも皇子なんだが。」
「コウラン皇子様。今後はそう呼ばせていただきますね。」
「……はぁ、わかったからやめろ。……寂しいだろ。」
チートな兄上を巻き込めばオッケーでしょ。
というか、コウにぃってば寂しがり屋って似合わないよ。ほら、皇帝陛下まで目を見開いて口をあんぐりしちゃったじゃん。
にじにじと寄ってきたコウランに後ろから抱き締められて本当に寂しそうに頭を背中にグリグリしてきた。
ちょっと可愛いと思ってしまったのは秘密にしよう。
「8年間、独りで待っていたからな。」
「……もう言わない。ごめん。」
誰も分からないだろう微かに震える声色に、少しだけ反省するがこれとそれとは別だ。
「コウにぃもいるし、行かせて。」
「……。」
「無茶はしないしさ。」
「……。」
「ねぇ、お願いだから。」
「……はぁぁ、わかっ」
「駄目だ!」
母様の攻略に成功したかと思いきや、父様が割り込んできた。
「いくら転生者と言えど幾場もない幼子。たとえ魔王様が居れどお前がいく必要は無いだろ?」
僕がいく必要がない?
いや、理を知るものは陰陽の調和をする役目を持つ。行かなくてはならないのだ。
「もしも、行くなら私を倒してから……。」
ダンッ
父様が話している途中で大きな音がしたのは僕が原因。
父様の足を払い、床に倒したのだ。さらには母様の髪をまとめていた簪を借りて、父様の首筋に当てる。
見つめる目は他人を見るように冷たくし、口元には笑みを浮かべる。
それを目撃したバルスさんが恐怖の声をあげるが気にしない。
「これは僕の事だ。僕がやるべきでしょ?と・う・さ・ま。」
「だ、だが、お前は大事な……。」
「大事なら尚更行かせてよ。」
だって、これは僕の……。
次回は10月8日18:30予定
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