僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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青い光のスヴェトリナー

僕と幻影の城

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 サクッー


 まさにそんなふうに鎧に囲まれている筈の場所で簡単にナイフが突き刺さった。
 魔力の渦を断ち切るかのようにつきたてれば寝ずの騎士の動きが止まりサラサラと土塊に変わり風に溶ける。突き立てたナイフには紙が突き刺さっていた。『emeth』と書かれた紙があった。ちょうど『e』と『meth』の所に切り傷ができて切り離されている。どこかで見たような術式だ。


「この世界とは異なるゴーレムの術式だな。」
「ああ。例の欠片が生み出しているからか。確かにこれなら寝ないで働くし、札さえ無事なら倒せ。」


 便利だなと納得する。
 あえて面倒なのは札の位置はどこでも良いので毎回『邪眼』を発動していないといけないことか。
 そうすると分散して城を散策出来ないのも悩みだ。ルカさんは別としても兄上と僕なら気づかれずに散策は可能だし騎士たちを倒すことも容易い。だが、兄上が持つのは‥…。


「問題ない。神眼を使う。」
「分かった。ここまで来たからルカさんは身を潜めてて。」
「足を引っ張りたくないからそこの倉庫に隠れておくだよ。」
「うん。そうしてくれると助かる。」
「王のところはあの見える外階段から行くといいべ。姫様は奥の離れにいるだ。」


 ルカさんが指をさす方向には何処から行けばいいか一見ではわからない外階段が見えた。
 城によって隠れる様に奥にそびえ立つ高台が見えた。そちらに件のお姫様がいるのだという。王様を倒してしまえばのんびりとお姫様を助けられる。どうしようかな。


「とりあえず城の中から俺は侵入する。」
「僕はあの階段からだね。」
「姫様は後回しだ。」
「うん。」


 一番の目的は魔道具の回収であるためすくっと行動を開始した兄上の瞳はいつもの青灰色ではなくロゼ色の奇麗な瞳になっていた。いつもの色も好きだけど、このロゼ色は滅多に見れないから何か一層尊く感じる。


「拝むな拝むな。行くぞ。」
「はい。」



 その場で兄上と分かれて僕は階段の方に向かう。外から見る限りは地上に繋がっているという事はなく、途中から中に入ってゆく形の様だ。いや、途中から外に出てまた中に入ると言えば良いのかな。どちらにしろその外階段には窓があり城の外から登ってそこに入れそうだ。
 暗器の糸を使いスルスルと登りながら時折見回りの騎士や兵士を観察する。やはり邪眼で見ると体の一部が魔力の流れがおかしく見えるところがある。狙うならそこだな。
 もしもこの技術で他国を攻めようとしていたら膨大な被害が起きていたであろう。王がそこまで気が付かなかった事と、近くに鉱脈があったことが幸いした。


 予想通り窓の近くまでたどり着いたが何か違和感を感じる。中に入ってしまってから邪眼を解除すると目に見えていた窓が消失した。城の守りに寝ずの騎士や兵士だけでなく幻影を用いているということか。

 さて、この階段を下に行くか上に行くか。

 サイド邪眼を発動して思案する。幻影はこの目があれば違和感を感じても迷うことはないだろう。ただ城の内部の地図は流石に外部に流出はしていなかったのでルカさんに簡単に地図を書いて貰ったのだがそれが2階か3階かわからなかたのだ。わかりにくい様な構造をしているからここが2階でとか現在位置をわかりにくくしているのだ。まあ、内部から王の位置をバラされなにくいようにしていると言うことだ。

勇者のときも城の内部を把握するのに時間がかかったな。


「よし、下からにしよう。」



 迷ったら一度外に出てまた外階段に戻れば良い。
 階段を下るとそこには室内に繋がる扉があった。扉に顔を近づけて先の様子を確認するも先には何も気配は感じられない。
 静かに中に入れば侍女さえ居ない場所に出てきた。
 城に生きた人はいないのだろうか。
 それにしては辺りの掃除はちゃんとされているように見受けられる。

 部屋は赤と金の色合いの装飾に絵画などが飾られていてイメージ通りの城の室内である。悪魔城とかのゲームでよく見るような感じだ。
 とりあえずは王様の居る場所とは違うようなので部屋から出て散策をする。


 カタンッ


 部屋から出たら小さな音が聞こえてきた。

 そちらに人がいるのか騎士がいるのかわからないがとりあえず向ってみた。
 向かった先にはまた部屋があった。
 今度は人の気配を感じたので、生きた誰かしらがいまいるのだろう。それが敵かそれとも別の何かか。
 息を整えて部屋の中に入る。


「誰?」


 中には一人の女性が部屋を掃除していた。
 僕が入ってきたのに気が付いて悲鳴よりも何者かを尋ねるあたりは肝の座った女性のようだ。光射して見えるは金糸の髪に緑色の瞳の美しい姿だ。街中の人々とは違い諦めていない力強い瞳には好感がもてる。


王城ここには生きた人間は私と王しかいないはずよ。」
「他の人達は?宰相とか王妃とか居たんじゃないの?」
「王が不思議な術を使って排除してしまいました。どうやら干渉しすぎたようです。」
「君は生かされているのだね。」
「気まぐれでしょう。口煩い兄妹が自分の足元を掃除するのが楽しいのでしょうね。」
「もしかして君は‥…。」








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