僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
210 / 245
青い光のスヴェトリナー

僕の青い光のスヴェトリナー

しおりを挟む







「どんどんと増えては喚き散らす羽蟲どもが。」
「どんどん増えるという所は同意するよ。」



  オーガの攻撃を片手でいなすのが疲れてきていたが、そこに兄上が合流する。
 
 ルカさんはさめざめと泣くシロガネ様の肩を優しい手付きで抱き慰めた。ゴツゴツとした働き者の手は姫様の悲惨な現実に慰めとなっているようでその手に自らの手を添えて何度もルカさんの名前を呼んでいる。彼は瓶の中身を見ても目を背けることはしなかった。
 だからこそ気がついたのかもしれない。
 僕が見た魔女とは違いまだ息がある人がいることに。
 ルカさんは片手を姫様に添えつつも一つの瓶を手に取り考える。ランプによって封じられた者達を助けるにはどうするのか。


「大丈夫だべ。まだ間に合う人もいるさ。」
「ルカ?」
「ここから出せれば処置が出来る。任せろ。おいらは田舎のもんで大抵の処置はできるからよ。」


 ルカさんの声が聞こえる。どうやら瓶の中にはまだ生きている人も居るようだ。確か姫様はランプの魔人は抜け道を作ってくれていると言っていた。どうにか抜け出せる何か。中からでもやりようによっては抜け出せるのはあのコルク状の蓋をどうにかして外に出ることか、瓶を割って外に出ること。要は瓶の外に出せば良い。


「ルカさん、蓋を開けて彼らを外に出して。ここだと王に邪魔されるかもしれないからシロガネ様と一緒に別の所で。姫様は忘れないでね。」
「わ、分かっただ。」


 僕の言葉にいち早く反応してありたけの瓶を手に抱えて、姫様にも促してその場から離れていってくれる二人。部屋の片隅に放置された瓶の殆どが二人の手によって運ばれていったのを確認した。王はそちらに視線を向けて苦虫を噛み潰したような顔をしていてこちらを見ていない。兄上がオーガを相手取っているのでこのすきにと糸を引っ張りランプを僕の元に引き寄せようとしたが、王がどうやらランプを自分の身体に固定しているようで引っ張れない。

 かえって僕がランプに小細工していることがバレてしまった。
 これなら王の方に糸を差し向けておけば良かった。


「今、ランプを奪おうとしたな。」
「さあね。」
「ならぬ。吾の大事なランプを奪うなど反逆罪だ。ランプよ彼らも瓶に閉じ込めてしまえ。」


 じゃらじゃらと宝石を次々に何かの窪みに投下していく王様。
 青い炎が一段と輝き人のような形になる。僕と顔付きの似たその魔人は目尻から涙を滴らせていて辺りを魔力で充満させてそれが段々と取り囲むように圧縮されてゆく。

 だけど、それだけだった。

 魔力が瓶に具現化される前に弾けるように霧散する。

 その弾けた余波でオーガが砂塵へとかえってしまい復活する前に源の紙切れを切断しておく。ちなみに余波も僕達には影響せずむしろ王のほうが『くっ』といって防御態勢を取っているようだった。

 障害がなくなったので王様の元に近付いてゆく。

 王がランプの魔人に命じて動きを止めようとするも僕達のちかくになるとそれは飛散する。理由は明白。あのランプは僕だから。
 僕だから僕に魔力の攻撃は効かないし、僕が魂から尊敬する兄上にも効かない。
 

 そのことに思いたつこともなく疑問と焦りを滲ませた王が椅子から転げ落ちてランプがその手から離れた。慌てて取りに行こうとしているのを先に糸で引き寄せると僕の手の中でランプが共鳴する。僕に似た魔人を指で撫でて声をかける。


「お疲れ様。もう。休んで良いよ。」
「『かえして‥…。』」
「僕の中に帰って来ておいで。」
「『かえる?帰っていいの。』」


 青い炎が僕の中に溶け込む。
 その手に残ったのはただの珍しい紋様が刻まれた空のランプだけだった。
 そして僕の脳には知らない記憶が巡ったのだが、思わず僕は首を傾げた。ちよっと可笑しいのだ。そんな僕の様子に兄上が近寄ってくる。何か声をかけようとしたところでまだ地面に居る王がワナワナと身体を震わせて大声を上げた。


「何ということをしてくれた!吾のランプを返せ!」
「別にもう用済みだから良いけど。」
「ランプの魔人よこ奴らを殺せ!聞いているのか!殺せぇ!」


 ただのランプになってしまった物に命令をして、もう吸収しない宝石をじゃらじゃらと押し当てるが何も反応しない。
 それが分かるとせっかく返したのにこちらに投げつけてきた。


「どうしてくれる!吾の吾だけの理想の王国がぁ!」
「君の理想はこんな殺伐とした王国なんだね。」
「なんだと?」
「王国って国民で成り立っているんだよ?王がいての国なんじゃない。あくまで王はその国の顔なだけ。」
「何が分かると言うのだ平民がぁ!王がいるからこそ国民は生きられるのだ。」
「‥…その平民が分かることでも君には分からなかったんだね。」
 

 くすくすと笑うと。
 王はつかみかかってきた。それをヒョイと避けると王がまた地面に倒れ込む。彼の頭から王冠が落ちた。

小麦色の髪に濁ったオリーブ色の瞳。あのシロガネに似ていないやけに肥えた姿は国民からの甘い蜜のおかげか。

 今頃街も睡眠を取り戻して働くのを止めて眠りについただろうか。寝ずの騎士が排除されていれば事後処理もらくだろう。優しい魔人はきっとそこを考えてくれているかもしれない。そっと胸に手を当てる。


「さあ、罪を償う時だよ。」
「おのれぇ!」





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...