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残り幾日かの狂騒曲
僕と女の再会
しおりを挟む怪しい女を追ってたどり着いたのは地図にさえ載っていない集落のような場所。
周り一面が荒れ果てた土地であるにも関わらずその場所だけは木々が咲きほこり水が湧き出でいる場所になっていた。砂漠で言うなればオアシスの様な場所であろう。
ただ残念なのはその集落に住んでいるのは見たことのある黒装束の者達の姿のだった。
間違いなく彼らは魔の森や人魚の国で会った者達の仲間だ。
幸いにもこちらには気付いていなさそうな彼ら。
それならば探りを入れるには今ほど絶好のチャンスはない。
兄上と父様に視線とハンドサインで侵入することを提案すると二人共直ぐに同意してくれた。一人だけさぼりなのか集落から出てきた黒ずくめを捕まえると気絶させて気ぐるみを剥がしポイと空間魔法にしまう。以前それで大丈夫だったのは確認済だ。剥がした黒装束をちょいとアレンジして父様が身に着けて潜入する作戦だ。さらには兄上が造った試作品という名の無線インカムを父様の耳に取り付け音声の確認をしたあとに、顔がわからないようにフードを深く被り準備は終えた。素知らぬフリをして父様は集落に紛れ込んだ。
集落のルールなどが有ることも考えて他の人の真似をしたりとごく自然に紛れ込む。
誰かが話し込んでいるのを見かけたらそこにそっと近づき聞き耳をたてて情報収集してくれた。
そのおかげで最後の一つがどこかの火山項にあることが分かった。火山はこの国でもいくつもある。そこには火の属性の魔物やモンスターが居ることもあり、今までの傾向を見る限りではそういった場所に仕込まれているのかもしれない。
さらに火山について聞こうとしたところ、父様の肩を叩く人物が現れた。マントが頭から被っていて顔付きは確認できなかったそうだが、フードからは銀糸の髪がちらりと垣間見れ、マントで隠すようにしているが隠しきれない武器は大型の物らしい。
「貴方、知らない気配がするな。」
「‥…。」
「魔力を感じないから仲間は確かだと思うが、新人か?」
この声はあの時よりも透き通っているが間違いない。あの時の女の声だ。
魔力感知の持つ者がいるかもしれないと魔力感知不可の紋をマントの内側に入れておいて良かった。
一向に返事の無い父様に不信感を抱かれてはその身が危険だ。だからといって適当に喋るのも宜しくはない。この状況をどうするかをハラハラしながら見ていると父様は向き直り、ハンドサインを女の目の前でした。女はハンドサインが始まると慌てた様にそれを止めた。
「待って、待ちなさい!‥…ゴホン。話せないのか。じゃあ良いだろう。魔力を感じないのだから仲間だろう。」
「‥…。」
女はハンドサインがわからないらしい。周りの者もそれがハンドサインだと知っていても内容まではわからない様でざわざわとしている。いらない注目が集まってしまったが疑われたわけでは無さそうなので身を隠している場所でホッとした。だけども魔力がないから仲間ってザルだな。それとも侵入されてもどうと言うことない自身の現れか。
「世界中に仲間がいるからわからないのは難点だな。ムラキ様ならハンドサインもメンバーも分かったのでしょうが残念だわ。念の為殺しとこうか?」
「お話途中すみません。今、あの御方が音の国に現れたと情報が入りました。」
「なんだと。なら、あの国王を退治に来たのだな。うふふ。あの化け物は世間では知らない種だ。どう対応するか見ものだな。」
突然の別の者の報告にフードを落ちたのも気が付かないでうっとりとした表情になる。紛れもなくあのときの女だ。ムラキが音の国に来たのか?いや、向こうの仲間は目撃情報があると言っていた。それならばこんな時に音の国に現れたのは僕のことか。そういえばこの間も僕に変な感情を持っていた。
それにしてもやはりあの蝦蟇を仕組んだのはわざとだったか。確かにあの元王様のガスによる被害は蝦蟇を知らない人なら殺すほかどうにも出来なかっただろう。しかし、こちらには辺境の地を守る父様がいた。しかも対処も知っていた。
僕の情報を届けた者もこんなにも早く事が終わるとは思いもよらないだろうな。
「あの御方の仲間を城で見かけました。まだ戦闘しているのかもしれません。」
「そうか。なら見に行くとしようか。あの方の戦う姿はゾクゾクする。楽しみだ。」
「お供させて下さい。」
数人のお供をつけて女が音の国に向かうことになったようだ。
未だ火山の場所の情報が乏しいので、父様にはそのまま潜入してもらうことにして僕達は女の方をどうにかしよう。まさか、シヤさんを置いてきたおかげで分断させることが出来るとは予想外だが良い。
女がこの中ではリーダー格で強いのは先程の会話からも分かる。ならばもしも潜入がバレても僕達が出る幕はない。何なら情報が欲しいだけであのとき戦闘になっても勝てたと思う。
父様に無線で女を追う旨と、火山の位置の割り出しをお願いする。
了解の意味かカツンと音が無線から響いた。
顕になった顔をフードで隠し直した女が集落を後にするのを見て、僕と兄上はそっと後を追った。
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