僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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残り幾日かの狂騒曲

僕と簡単な終わり

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 幾多いくたの針がムラキの配下に襲いかかった。
 円で包むかのように準備していたので逃げることは叶わなかったであろう。土煙が収まるとハリネズミのように針だらけの人の山ができていた。暫くじっとしていた様だこちらとてあの女がこれぐらいではやられないとは思っていた。

 予想は的中してハリネズミ状態のお供の身体をずらして中心から現れた。
 全ての針をお供が受けたのか彼女の体には一本も針は届いてないようだ。中心部に居た何人かはまだ息もある。そんな彼らを押しのけて中心から抜け出した彼女はこちらにクレイモアを突きつけた。


「シシリー様は何処にいる!」
「さあてね。あの子もこの現象を調べているのでは?」 
「やっと‥…やっと会えると思ったのに。」


 女は銀糸の髪が乱れるのも気にすることもせず空いた片手でガシガシと頭を掻く。スレンダーて可愛いと言うより美人な彼女がそんな様子をしているのは傍から見たら怖い。


「せっかく会えると思って綺麗にしてきたのに無駄だってこと?何なの。あの清浄の様なお姿が、誰にも優しい御方が戦いの中での冷たい視線になるのがまた見れると思っていたのに。そもそも兄がいる?何よそれ聞いていないわ。きっと顔をあの方に変えているのだろう。なら取り返して差し上げないと。婚約者?ムラキ様の元に戻さないつもり?駄目。ダメダメダメ。」
「なんか褒められているのか貶されているのか。」
「褒められてはいないだろ。」
「そうだ。彼らの皮を剥いで本性を曝け出したあとにあの御方の御前で差し出すのも有りだね。さあ、偽物退治だ。」


いや、無しだよ。

 うふふと狂気を孕んだ表情でこちらを見る姿は狂っているとしか見えない。なんでムラキが集める者達はこんなのばっかなのか。狂気を含んでいる方が律しやすいのはわかるけど遭うやつあうやつムラキを尊敬しているというかこんなんばっかだけど。

 アイツが心から忠誠を誓う部下を捨て駒にはしないか。

 ということは目の前の襲いかかる5秒前の女は捨て駒と言うことになるな。

 本来なら両手で持つ筈のクレイモアを片手で軽く振り回す。見た目が若いからと余裕がある風に感じているが先程の攻撃で自分以外は地に伏して居るのが見えないのだろうか。

 彼女が地面を蹴りこちらに飛んできた。
 兄上でなく僕に来るあたりはこのシシリーとそっくり(本人だもん当然)の顔がお気に召さないらしい。この世界には男の娘という文化はまだ根付いてないから性別が違うだけで他人と考える人も居るけど彼女はシシリーを敬愛してそうだし分かっても良いと思うけどな。


 攻撃を交差した双剣で受け止める。足がズッと沈んだ気がしたが受けきらないほどではなかった。交差している剣の内側の剣をずらして相手の攻撃を滑らせる様にいなしたあと、ずらした剣をそのいなして体制を崩す相手に向かって一閃する。
 しかし、それはなにもないところに振り下ろしただけだった。


「やるじゃないか。」
「そう?あんたは大した事ないね。」
「攻撃を受けるだけで精一杯のガキが言ってくれるじゃない。」
「格の違いを見せてあげる。」


 僕は双剣の片方を戻し、片手でチョイチョイと挑発をした。

 職業暗殺者なんて名乗るのはおこがましいけど暗器使いの僕が今までもそうだが普通に戦える。別に他の人と筋力や速度が違うのはそうだけどそれは使い方次第。他の人は知らないけどね。
 あのランプの魔道具から得た微かな記憶の断片で思い出した。僕は暗殺が好きだ。
 これだけ言うとヤバいやつなのだけど、前世で兄上に出会い様々な事を習った。戦い方や戦法、暗器の使い方など。その中で暗殺というのがしっくりときてどう攻略するか考えるのが楽しかったのだ。

 それを知っているから兄上は暗器を充実にしてくれたし、こちらの世界でも暗器を用意してくれたのだ。



 明らかに体格の違う僕が相手様の攻撃を簡単に捌いているのに、彼女は段々と苛立って来たようだ。攻撃が荒くなってきている。
 攻撃の太刀筋から剛と柔、動と静を教わったことはわかるけど全くと言っていいほどに身についていない。それは日頃から心がけていないと言うことだ。簡単に倒せる相手しか戦って来なかったのだろう。


「何故攻撃が届かない!」
「君が弱いからだろう。」
「あたしは強い!だって国では誰もが恐れていて指名手配もされていて‥…。」
「強い人は指名手配なんてされないよ。」
「!」


 僕の持論だけども本当に凶悪で強いのなら目撃情報も出ないし、捜査でも全くと言っていいほど出てこないだろうね。指名手配されるぐらいなら眼の前の女性は大したことはない。実際ムラキも僕と関わらなければこんなにも話題になることは無かっただろう。そういう所だ。



「もう、良いぞ。」
「ん。」


 兄上から声が掛かった。
 なんで二人居るのに一人で戦っていたかって疑問に思わなかった?
 実は僕がこの女を引き付けている間に兄上はハリネズミ状態のお供の方に尋問してもらっていたのだ。息がある人が何人かいたからね。

 兄上を見る限り、大したことはわからなかったようなので、一応この女にも聞いておくか。

 ギンっと力強く攻撃を弾くと女がしゃがみ込んだ。いや、しゃがみ込むしかなかった。弾いたときに立つための筋を裂いておいたのだ。女はまだ気づかないのか怒りを忘れて頭にハテナを浮かべている。ついでに手の方も筋肉を断ち地面にクレイモアが落ちた。

 準備が出来たのでコウにぃに頷くと、コウにぃが女の前に立つ。
 良かったね。の光景が美形の男の顔で。

 あ、でもシシリーの憎き婚約者じゃ嬉しくないか。






 
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