僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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残り幾日かの狂騒曲

僕と涙のサイクロプス

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 小石を蹴り落してしまい気づかれたが僕達の姿を確認すると同時にサイクロプスは涙で濡れた単眼を更に大きく見広げた。その暑さにより目がすぐに乾燥してその行動は一瞬だったが確かにこちらを見て驚愕をしていた。
 威嚇するように吠えてはいるがそれは自らの側に寄せ付けないための虚勢。

 もしかしたらこれは話しが通じるかもしれない。

 周りが止めるのを無視して火口に降り立つ。護符があり大丈夫だとはいえ流石に赤く染まる溶岩の上には勇気がわかなかったので、中洲のように取り残された岩の上にだが。

 サイクロプスは目を閉じている。
 ムラキの用意した石のせいで自分自身の性質が変化したのに気が付いているのだろう。サイクロプスから流れくる熱気はその発生源である自分にも影響が出ていた。


「貴方は意識があるの?」
「『うぅ。早く逃げて。もうすぐ全てを焼き殺してしまう。』」
「意識はちゃんと持っているのだね。」
「おい、シンリ!」
「兄上、この方は意識を保てているよ。」
「それを分かったとしても無謀に行くんじゃない!」


 ペしりと頭を叩かれる。
 静止を無視したことは悪かったと思うけどあの涙に濡れた単眼に悪い人の雰囲気が感じなかった。安全だと判断できると思って近づいたのに。


「それでも無謀に行くのは違うだろ。」
「ごめんなさい。」
「『子供達よ。早く山から下りなさい。うぅ。私はもう持たない。』」


 兄上に怒られてしょんもりしていると空気を読まない僕らにサイクロプスの長らしき火口にその身を落としている眼の前の存在が苦しそうに声をかけてきた。苦しんでいるのに何しているんだと怒っても良いのに僕達の事を心配する声をかけてくれる。人間を襲うと聞いていたがそんなことはない。苦しんでいてそれどころではないのかもしれないが。


「僕達は君を助けに来たんだ。」
「『何を‥…。』」
「ほら、ここまで来れるぐらいの強さなんだよ。信じてくれないかな。」
「『うぅう。私達が餌だと思っていた人が‥…。』」


 やっぱり以前は食べてたんだね。


「『不甲斐ない。見下し軽んじてた人が私を助けようとここまで来てくれるとは。だが、私の仲間は私の身体からの熱気ですでに死に絶えただろう。そんな中で生き残っても。どうか、私を殺してください。』」


 コウにぃと顔を見合わせた。確かに死んでいた者も居たが息があるものはなるべく助けて来た。だいたい僕達が通ってきた所で数十人は助けてきた。あの様子なら今、彼女?を止めれば助かる命はまだまだ助かると思われる。

 それを伝えれば、また単眼が驚いた様に開かれた。そして、どこかホッとした表情を浮かべる。

 さて、ここまで来たら取り出す算段てもたてようか。


「君は石のようなもの見なかったかい?」
「『ああ。黒ずくめの者達が不思議な輝きの石を持っていた。私はその石を持っていた男を痛ぶり食べてしまった。』」
「そうか。」
「『これは私への罰かと思っていた。』」
「まあ、敵対するようなら殺して腹から取り出していたけどね。」
「『周りの者が次々と死ななかったらそうなっていたかもな。』」
「兄上。」



 声をかければ兄上の瞳の色が変わる。
 それは全てを見通す神の瞳。
 父上神王が魔帝王の強い血によって死にかけたコウにぃを助けるために自らの血も混ぜたから反映されたチートな遺物。

 その瞳でサイクロプスの身体を見てもらう。
 

「胃から身体に吸収されているようだな。」
「じゃあ、吐き出させるのは無理か。」
「ああ。胃体部にガッチリだ。」
「なら、身体を傷付せないで破壊するか。」
「『無理をして私を生かさなくてもよい。時間がない。私の身体が更に変異させてこの場を灼熱へと変えよう。』」
「大丈夫だって。」


 ここで火口に待機している父様を呼んだ。
 父様は辺境を任されるぐらい強い御方で修羅場もくぐってきている。なのであれができてもおかしくない。


「何だ?」
「身体を傷つけないで衝撃で石だけ破壊して。」
「ん?」
「衝撃で石だけ‥…。」
「いや、内容はわかった。」
「難しい?」
「出来るとは思うが。」


 良かった。位置は兄上の支持に従って貰い、同じく固い骨には影響を及ぼさないでもらいたいから試しにあの人魚の国で手に入れた石で感じを掴んでもらおう。
 骨よりは硬度は低く、肉体よりは固い。丁度良かった。

 イメージは胆石とかを超音波で壊す感じだ。

 そしてそこで石が壊れて開く穴を僕が癒やす。こんな感じでどうだろうか。


「やってみよう。」
「背後からが近いが腎臓があるから前からやろう。胃体部の胃角部辺りだ。」
「いや、いの中は空洞だからむしろ効率的に伝えるなら背後が良いだろう。胃角部とはどこらへんだ。」


 胃角部は胃の下の方にある場所だ。
 兄上と父様がサイクロプスの背後に周りやいのやいのと位置決めをした。
 そしていよいよ、父様がサイクロプスの背に手を当てて身体を攀じる。掌底を打ち込むように勢いをつけたら身体に当たらないギリギリで止めて衝撃だけを身体が貫く。それにはスピードとそれを止める筋力が必要なのだがさすがはチートなディーレクトゥス家当主。いとも簡単にやりのけた。サイクロプスの身体が衝撃で前方にたおれる。

 つかさず僕は回復魔法を胃にかける。
 僕の目にも石があったところは確認しておりその石も無事に粉砕できている。


「これでどうかな。」


 3つ目の要が破壊され空を見上げたが、もうひとつの世界は未だ健在だった。







________

皆様読んでいただき有難うございます。

申し訳ないですが、稲刈りシーズンのため少し休みます。雨でなかなか終わらない。ストックも尽きた。ごめんなさい。


 なんで米って買取は安いのか。日本人の主食なんですけどね。


 それでは金曜には再開出来るように。天気に祈りつつ。


SHIN
 
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