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残り幾日かの狂騒曲
僕と残り一日
しおりを挟むその場所は程よい木漏れ日が入り重苦しい雰囲気とは反対の場所であった。神聖な雰囲気もあるこの場所は踏み入れる場所によって姿を変える。
その雰囲気に騙されて初めて入る人はその変わった姿に迷子になり遭遇した野獣やモンスターによって命を落とすものがおおい。
遭遇する野獣はその人にとっての絶対的強者である。
ランドグシャ領地の者達はそんな森と共存して生活している。
「皆普通に皆が入って行ってたから感覚が狂っていたな。」
そう言って森に入って直ぐに襲いかかってきた魔獣をダウンさせた僕。
父様から一回目はダウンだけさせよとのお達しだ。父様の様に話はできないので悪意があるかはわからないけど強いものには襲わない様に伝えておいてあり、話がわかる者たちはそれで引き下がるらしいが、それでも諦めないやつは問答無用で倒してしまって良いらしい。
「そもそも力がわかる奴なら襲いかかってこないし、遥かに強いやつは雑魚など興味ないからな。一度逃すのはそれで身の程を知らせるためだ。」
「なるほど?」
「領民にもこの 事は伝えてある。」
「ふーん。」
「薬屋のおばさんが片手で熊を投げてたのは驚きましたね。」
こんな異常事態でも生活はあると言っておばさん初め、数人が未開発の森に入っていた。おばさんが薬草の籠をそのままに熊を倒しているのを見て、この領土の人達が可笑しいのを再確認することになった出来事だ。
「開発するにもどちらも恨みを残すようなやり方は支度なくてな。一度のチャンスは向こうからの提案だ。その代わりこちらも死んでも文句は言わないし話がわかる奴なら一度は見逃す事もある。」
「へえ。」
「もしも侵入者が居ても大体は喰われてしまったと思っていたのだがな。」
でも、それで腑に落ちる事が一つ。あの音の国の王様が転じた蝦蟇。
父様がこの領地で見かけるやつだと教えてくれたそのとおり、ここに潜むやつがもたらしたのだろう。
「シンリ、探せそうか?」
「大丈夫。」
小さい頃に庭のように遊んでいたこの森のいつもと違う気配は分るはずだ。暫く来てなかったけど。
散策を続けて数時間。
空い浮かぶあちらの世界はもう間近になっている。ゲームであと何時間なんて表示が出るときがあるけど、あれはあくまでゲームだからどうと無いのだよね。今はすごく焦りの気持ちになってきた。だからといって焦りに負けていられる場合ではないので、心を落ち着かせる様に深呼吸をした。
「ところで今更ですが向こうの世界と交わったら何が悪いんですかね?」
シヤさんがそうつぶやく。
確かに転生者や異世界者の多いこの世界が別の世界と交わったとしても影響がなさそうだ。むしろ新しい発展があるかもしれない。
「向うは今の状態が全であり一なんだよ。こちらは耐えられても向うは壊れてしまうだろう。」
「そうなんですね。」
「あと、こちらが魔素が薄まり魔法もない魔物も居ない世界になるかもね。」
それはそれで楽しそうだけど。
そんなことになったら魔素を餌にしているものや妖精たちにも被害が行くかもしれない。それは赦さざる事だ。
向こうの世界も交わりなれない魔力にさらされて地球が壊れてしまうのが目に見える。前に住んでいた世界がなくなるなんて許せない。
だから、こうして動いているのだけどね。
「‥…見つけた!」
森の中で普段人が寄り付かず、そこに湧き出る御簾は毒気を含み魔獣やモンスターも滅多に来ない場所があったがそこがビンゴだった様だ。行くのは毒を薬として使う薬屋のおばさんだったり、狩りに使うおいちゃんだったり結構居たようだが、今は父様の命令で入ってこないようにしている。
直ぐに向かうと明らかに毒っぽい色合いの場所に一人の老婆がいた。
もうすでに隠れる気は無いのか、木でできた杖を持ち、毒気が含む水辺の石に腰掛けた老婆はこちらを見て目元のシワを深くした。
「よくぞ来てくれた。」
「お婆ちゃん、貴方はムラキの配下?」
「そうだよ。彼はこの年寄の世迷い言を真剣に聞いてくれた。」
「石を渡してくれないかい?」
「ふぇへへ。断る。」
老婆は杖を使って立ち上がるとそれが合図とでも言うように細かい針を飛ばしてきた。
この人は僕と同じ暗器使いだ。
結界を展開して細い針を逃れたら細かい針は地面をじゃうと音を立てて抉る。毒が塗られて居たようだ。
暗器使いという事は暗殺を生業にしてきた可能性があり、それならこの森でも姿を隠す事はできたのだろう。老婆はふぇへへと変な笑いを上げて杖を振り回すと次々と仕掛けが発動してこちらに攻撃が襲いかかる。
針から始まり鈍鎭に苦無のようなものから鎖鎌までそれを結界で防いだりダダ避けたり、ただ次々にくる攻撃が厄介なだけで、ただの時間稼ぎだとわかるようなものだ。
「ワシの石は渡さないよ。あと数時間持たせれば世界は混沌さね。」
「それは困るのだけどね。」
「うえっへへ。まだまだこちらはあるんだよ。」
「でも、仕掛けの癖は同じだよね。」
はあとため息をつきながら避けていた僕。
その視線の先には杖を振り回す老婆とその背後に巨大な鰐の魔獣がいた。
鰐の魔獣は大きな口を開き気が付いて居ない老婆に襲いかかる。
自らの周りにトラップを仕掛けず、なおかつ仕掛け発動の杖の動きは一定。暗器使いの先輩がどんなお手前か気になっていたのだけどとんだ無駄だった。
鰐は僕らの前で老婆を噛み殺したあとその遺体を食べようとしていたがそれを父様に制してもらった。
もしかしたら遺体に毒があるかもしれなかったからだ。
その変わりに空間魔法から肉を与えればそれで満足したようで森に戻ってゆく。残った遺体を探れば石が身体に縫い付けられたような状態であった。それを問答無用で砕く。
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