僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

文字の大きさ
15 / 245
はじまりと記憶

僕は人形の王に合う

しおりを挟む



 バルスさんと別れてしばらく身を潜めていると、約束通り派手な音が聞こえてきた。
 空にまで届く赤色に、破裂音、黒い煙から考察するに爆弾のような魔方ものを使って気を引いているのだろう。

 案の定、多くの人形達が音のする方に向かって行く。残る人形も居るが先程に比べたらだいぶ楽になった。精鋭の様な者も居るが所詮は人形。シヤさんや兄上の敵ではなかった。

 ちなみに、コウにぃの手には太めの剣が握られている。気が付いたらいつの間にか持っていたのだが何処に隠していたのか。

 やっと、工場の所まで着いた。
 工場は前世の海岸倉庫の様な形をしている。
 辺りには人形の気配はない。緊張しながらも工場の扉をスライドするように開けた。

 中は薄暗く、ガラクタと呼ばれるものが散らばっていた。
 そのガラクタの中にも微かに道が続いており、その道は奥へと向かっている。


「シヤ、どんな風に見える。」
「花工場ですね。」


 シヤさんにはこのガラクタ工場は花の加工工場に見える様で、街でも見かけた様ざまな花が此処に集まっている感覚がするのだとか。それを聞いたコウにぃは顔を歪め思案するように手を顎に当てた。その行動の意味を聞く前に、遠くから声が聞こえてきた。笑い声の様なそれは、ガラクタの道の奥から聞こえている。

 3人は頷き合うと奥へと歩みを進めた。

 奥には、更なる扉があり声はこの中から聞こえてきている。扉の前には、兵士のような人形が二体護衛の様に立っている。まあ、実際護衛なのだろうが。

 その二体の人形にシヤさんと兄上か音もなく近寄ると、剣を一閃させて声を上げる暇もなく地に倒した。
 僕は扉の前に進み出て、ギギッと軋んだ音を立てさせながら開く。

 中は薄暗く、こちらの方が明るいからか光の筋が伸びていた。その光の先にガラクタの山にポツンと一人のが立っていた。ボロボロなローブを纏い所々が赤黒い染みを作っている。そんな青年は笑い声を上げてその目の前にある巨大な人形を見上げていた。

 巨大な人形は厳つい形をしていて、ゲームで言うオークのようである。全体的に赤黒い。
 その腕は四本生えており、それぞれに得物を持っていた。左上部には独古、左下部には剣、右上部は槍を持ち、右下部には弓を構えている。
 その佇まいは、今まで見た人形とは違い武人の様にみえた。


 扉の光がとうとう彼の意識をこちらに向かわせた。その灰色の目は光がなく濁った死魚の様である。全体的に痩せた彼の姿で唯一その場所だけがおかしい。
 その目を見ていると気分が悪くなるようだ。  


「やあ、シシリー。」


 その濁った目は僕の事だけを見つめながら、乾いた唇は歪んだ笑みを浮かべていた。僕の事を見つめながら別の誰かを思い出して要るのはその言葉からわかった。

 
「シシリー、見てごらん。やっと、完成したよ。」
「か、完成?」
「ああ、シシリーはずっと反対していたよね。でも、きっとその思いも変わっただろう。こんな、芸術品を見たら!」
「悪趣味だな。」


 巨大な人形を芸術品という青年に、コウランの言葉が重なる。
 
 コウにぃは気だるけに僕の隣に立つ。


「誰だ?」
「こんな人のを繋ぎ会わせた物が芸術品か。」
?」
「ここは死臭が凄いな。」


 『死臭が凄いな』その言葉に、コウにぃが何を見ていたのかがわかった。

 そう、ここはこの国に迷い混んできた獲物を捌き、人形に変える場所。僕がガラクタだと思っていたのは被害者の……。
 

「想像したらゾッとする。」
「アキを連れてこなくて良かったな。」


 アキさんがこれを見たら耐えられないことを暗に示しながら、コウにぃは剣に手をかける。
 

「お前、シシリーじゃないな。」
「ごめんね。愛しの娘じゃなくて。」
「ほう、ワタシが誰か分かるか?」
「ロキ王だろ?」


 確信を持ってそう答えれば、青年、ロキ王は高笑いをあげた。何が可笑しいのかその笑いは数分間続くとピタリと止まり感情のない顔でこちらを見据える。

 
「殺れ、ギガンテラ。」


 ロキ王の命令に巨大な人形のギガンテラが動き始めた。
 しかし、ちょっと不味いかも知れない。この人形の真実の姿を見れているのは兄上だけなのだから。


「シヤさん、あれはどう見えます?」
「ただの巨大なファンシー人形だ。武器も見えない。」
「僕には四本腕の人形です。武器を持っています。」
。」


 マジですか。
 見えない武器があるのは最悪なハンデだとおもう。
 
 とりあえず、動いてこちらに攻撃を仕掛けるそぶりが見えたから思いっきり大きく避けた。
 その後に続く破壊音と土煙が捌けてから見えた床の凹みから物よりだいぶ物騒なのが分かる。


「シヤさん僕が操っても大丈夫です?」
「ああ、全く役に立たないよりはそれが良いな。」
「では、失礼します。」


 『蜘蛛』を使い、シヤさんのからだの数ヵ所に糸を伸ばす。そして僕の見える範囲で回避の手伝いをした。完全に操るのではなく要点だけ操る。そうすることで、シヤさんの能力も存分に使えるようにしたのだ。


「ほお、シシリーの偽物は面白い技を使う。」
「偽物はそっちでしょ。」


 ギガンテラの攻撃に防戦一方だ。
 これは一度引いた方が良さそうだが、そう簡単に逃がしてくれるわけがない。

 見えない攻撃があるのがまず、ダメだ。対策しようにもあのミラーダストの術式の防御式を作らなくてはならないしな。これなら、あの親父さんのところで作っておけば良かった。


 何度目かの大きな攻撃を避けたところで、パリンという何かが割れた音と共に煙幕が放たれた。これを好機と一端の引きに徹する。その時、少女の声が聞こえてきた。



「こちらです宝玉の持ち主よ。」





次は1月の16日に変更します
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

処理中です...