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はじまりと記憶
僕は人形の王に合う
しおりを挟むバルスさんと別れてしばらく身を潜めていると、約束通り派手な音が聞こえてきた。
空にまで届く赤色に、破裂音、黒い煙から考察するに爆弾のような魔方を使って気を引いているのだろう。
案の定、多くの人形達が音のする方に向かって行く。残る人形も居るが先程に比べたらだいぶ楽になった。精鋭の様な者も居るが所詮は人形。シヤさんや兄上の敵ではなかった。
ちなみに、コウにぃの手には太めの剣が握られている。気が付いたらいつの間にか持っていたのだが何処に隠していたのか。
やっと、工場の所まで着いた。
工場は前世の海岸倉庫の様な形をしている。
辺りには人形の気配はない。緊張しながらも工場の扉をスライドするように開けた。
中は薄暗く、ガラクタと呼ばれるものが散らばっていた。
そのガラクタの中にも微かに道が続いており、その道は奥へと向かっている。
「シヤ、どんな風に見える。」
「花工場ですね。」
シヤさんにはこのガラクタ工場は花の加工工場に見える様で、街でも見かけた様ざまな花が此処に集まっている感覚がするのだとか。それを聞いたコウにぃは顔を歪め思案するように手を顎に当てた。その行動の意味を聞く前に、遠くから声が聞こえてきた。笑い声の様なそれは、ガラクタの道の奥から聞こえている。
3人は頷き合うと奥へと歩みを進めた。
奥には、更なる扉があり声はこの中から聞こえてきている。扉の前には、兵士のような人形が二体護衛の様に立っている。まあ、実際護衛なのだろうが。
その二体の人形にシヤさんと兄上か音もなく近寄ると、剣を一閃させて声を上げる暇もなく地に倒した。
僕は扉の前に進み出て、ギギッと軋んだ音を立てさせながら開く。
中は薄暗く、こちらの方が明るいからか光の筋が伸びていた。その光の先にガラクタの山にポツンと一人の青年が立っていた。ボロボロなローブを纏い所々が赤黒い染みを作っている。そんな青年は笑い声を上げてその目の前にある巨大な人形を見上げていた。
巨大な人形は厳つい形をしていて、ゲームで言うオークのようである。全体的に赤黒い。
その腕は四本生えており、それぞれに得物を持っていた。左上部には独古、左下部には剣、右上部は槍を持ち、右下部には弓を構えている。
その佇まいは、今まで見た人形とは違い武人の様にみえた。
扉の光がとうとう彼の意識をこちらに向かわせた。その灰色の目は光がなく濁った死魚の様である。全体的に痩せた彼の姿で唯一その場所だけがおかしい。
その目を見ていると気分が悪くなるようだ。
「やあ、シシリー。」
その濁った目は僕の事だけを見つめながら、乾いた唇は歪んだ笑みを浮かべていた。僕の事を見つめながら別の誰かを思い出して要るのはその言葉からわかった。
「シシリー、見てごらん。やっと、完成したよ。」
「か、完成?」
「ああ、シシリーはずっと反対していたよね。でも、きっとその思いも変わっただろう。こんな、芸術品を見たら!」
「悪趣味だな。」
巨大な人形を芸術品という青年に、コウランの言葉が重なる。
コウにぃは気だるけに僕の隣に立つ。
「誰だ?」
「こんな人の死骸を繋ぎ会わせた物が芸術品か。」
「何がみえている?」
「ここは死臭が凄いな。」
『死臭が凄いな』その言葉に、コウにぃが何を見ていたのかがわかった。
そう、ここはこの国に迷い混んできた獲物を捌き、人形に変える場所。僕がガラクタだと思っていたのは被害者の……。
「想像したらゾッとする。」
「アキを連れてこなくて良かったな。」
アキさんがこれを見たら耐えられないことを暗に示しながら、コウにぃは剣に手をかける。
「お前、シシリーじゃないな。」
「ごめんね。愛しの娘じゃなくて。」
「ほう、ワタシが誰か分かるか?」
「ロキ王だろ?」
確信を持ってそう答えれば、青年、ロキ王は高笑いをあげた。何が可笑しいのかその笑いは数分間続くとピタリと止まり感情のない顔でこちらを見据える。
「殺れ、ギガンテラ。」
ロキ王の命令に巨大な人形のギガンテラが動き始めた。
しかし、ちょっと不味いかも知れない。この人形の真実の姿を見れているのは兄上だけなのだから。
「シヤさん、あれはどう見えます?」
「ただの巨大なファンシー人形だ。武器も見えない。」
「僕には四本腕の人形です。武器を持っています。」
「六本だ。」
マジですか。
見えない武器があるのは最悪なハンデだとおもう。
とりあえず、動いてこちらに攻撃を仕掛けるそぶりが見えたから思いっきり大きく避けた。
その後に続く破壊音と土煙が捌けてから見えた床の凹みから見えている物よりだいぶ物騒なのが分かる。
「シヤさん僕が操っても大丈夫です?」
「ああ、全く役に立たないよりはそれが良いな。」
「では、失礼します。」
『蜘蛛』を使い、シヤさんのからだの数ヵ所に糸を伸ばす。そして僕の見える範囲で回避の手伝いをした。完全に操るのではなく要点だけ操る。そうすることで、シヤさんの能力も存分に使えるようにしたのだ。
「ほお、シシリーの偽物は面白い技を使う。」
「偽物はそっちでしょ。」
ギガンテラの攻撃に防戦一方だ。
これは一度引いた方が良さそうだが、そう簡単に逃がしてくれるわけがない。
見えない攻撃があるのがまず、ダメだ。対策しようにもあのミラーダストの術式の防御式を作らなくてはならないしな。これなら、あの親父さんのところで作っておけば良かった。
何度目かの大きな攻撃を避けたところで、パリンという何かが割れた音と共に煙幕が放たれた。これを好機と一端の引きに徹する。その時、少女の声が聞こえてきた。
「こちらです宝玉の持ち主よ。」
次は1月の16日に変更します
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