僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~

SHIN

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はじまりと記憶

僕は宝玉を手に入れる

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 少女の声に導かれるままに戦線を離脱した僕達は、工場から少しだけ離れた場所にある洞窟に来ていた。
 洞窟の入り口は草木によって隠されるようにしてある。そんな隠された入り口から一歩中には入るとそこは光苔が壁に生え、うっすらと幻想的な光景を産み出していた。

 光舞う洞窟の通路を進んでいくと、広めの空間に出た。きほどの通路と同じように光苔に壁が覆われ、灯籠が淡い色で灯されており意外とそこは明るかった。
 その空間の中でで、片腕のない少女は静かに我々の到着を待っていたようである。

 少女は一人で空間の中央で古ぼけた椅子に座っている。人形の様に動かないその表情は覚悟を決めたように晴れやかに微笑んでいた。


「お待ちしておりました。」
「やっぱり、貴女が……。」


 少女、シシリーは無事の方の腕で胸元の服を乱した。シヤさんのちょっと嬉しそうな悲鳴を聞き流しながらその行動の行く末を見つめていると、シシリーの手は白い陶器の様な肌に手を這わせる。
 そこには血のように赤い何かが心臓の様に鼓動を打っていた。

 よく目を凝らすと、それは拳大もあろうかという宝玉であった。それを認識したとたんに、僕は頭痛に似た痛みを感じ始める。宝玉の鼓動と連動するように波打つ頭痛。兄上とであった時と違いさほどの痛みは無いが、あれが僕達の求めているもの記憶だと言葉にしなくてもその場にいた者は理解した。

 頭痛の影響でよろめいた僕を兄上が支えてくれる。
 それを見たシシリーは小さな声を上げて笑う。

 
「やはり、この宝玉を探しにこの国まで来たのですね。」
「話が早くていい。そうだ。元々、宝玉はコイツの物だ。返せ。」
「ええ、ええ。お返しします。私には過ぎたる物ですもの。だけど、私のお願いを聞いてくれても良いですよね。」


 シシリーさんは胸元の宝玉の所に手を当てて鼓動を感じるように目を閉じたあと、こちらをにっこりと微笑んで語り始めた。


 シシリーさんは本来は体温も持たない人形なのだという。
 まあ、それは誰もが想像着いた事だ。

 その人形を作ったのはこの人形の国の名も無き職人。

 そして、その人形に恋をしたのは国の王だったロキだった。

 ロキはその人形を嫁にすると国中に宣言した。国外に漏れなかったのは当時の宰相のお陰であろう。
 それに反対したのはもちろんいきなりそんな突拍子もない報告を受けた国民で、王の目を醒ますためと元凶となったシシリーを破壊しようとした。ロキはそんな国民を何人も処刑した。
 国民の不満は膨れ上がるばかりである。
 そんなある日、名も無き職人は遺跡から見つけてきた不思議な宝玉をシシリーに埋め込んだ。その瞬間にただの人形は睫毛を震わせ息をし始めた。ロキは喜び、名も無き職人に褒美を渡してシシリーを妻へと迎えようとした。

 しかし、シシリーと名も無き職人はその提案を拒否する。

 なぜならロキはすでに80になろうかという老人だったからだ。娘どころか孫とでも通せそうな年齢差である。元々、名も無き職人はシシリーを手放す気はなかったのだ。

 
「拒否されたロキは怒り、名も無き職人を殺そうとしました。でも、狂った王は宰相の手筈でクーデターを起こした国民によって倒されたのです。」
「ロキは先程まで僕達の前に居たけど?青年の姿で。」
「ええ。ロキの執念は凄まじく、名も無き職人に彼はとりつきました。一つの体に二つの魂が宿っている状態になってしまいました。」


 名も無き職人に取りついたロキは、復讐を開始するのも時間の問題でした。
 国民をひとりひとり残虐なやり方で殺してゆき、名も無き職人はそれを救おうと国民をロキから守るべく人形を身代わりとして作りました。それを名も無き職人の中で見ていたロキはその人形にどこから得た知識から魔方陣を与え生き人形を作り始めたのです。ロキに逆らわない国民。それを求めていたのでしょう。そのうちに迷い混んできた冒険者を人形の材料にしながらこうして人形の国が出来たんです。

 初めて聞く話に、顔を歪めて聞いていたが話が終わりその先を促す。その行動にこくりとシシリーはうなずく。


「私の願いは名も無き職人、お父様の解放です。」


 きっと一大決心をしたのだろうシシリーは宝玉を胸元からばきりと宝玉の周りを破壊しながら取り出した。取り出してから、シシリーの動きが、鈍くなり出す。
 彼女は自分の願いのためにその命を投げ出そうとしているのだ。


「どうか……幸せにと……伝えてください。」


 シシリーの手が宝玉をこちらに向かって差し出しながら動きを止める。
 僕は無言でその手にある宝玉を手に取る。
 暖かいような冷たいような不思議な宝玉に口づけを落とすように触れた。そして、呼吸をするように息を吸うと宝玉はその呼吸にあわせて僕の中に吸い込まれてきた。

 

 

 気がつくと、小さな体に戻った姿で兄上に抱き締められていた。どうやらまた記憶の整理のために意識をと切らせてしまった様だ。

 だけと、僕の正体がわかった。

 六花と紫暗彼らは僕のなんなのかもちゃんと理解した。理解したからか、僕の目に浮かぶ風景が一気に変わる。

 先程までの空間のよりはるかに広い洞窟は壁だと思っていた所に泣き腫らした目をしたがいた。 
 
 そうか、シシリーは彼らを守るために幻覚を張ったのか。


「約束は守るよシシリー。」

 



 

次回は1月末。
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