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2.一緒に帰る
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SHR(ショートホームルーム)が終わったあと、俺がいつも一緒に帰るメンバーとダラダラ喋っていたところに、早坂が近づいてきた。
「なぁ、乃木。今から帰る?」
「えっ? 帰る……けど……」
「じゃあ俺と一緒に帰らない?」
教室で早坂とまともに話したことすらないのに、なんで早坂は急に声をかけてきたんだろう。
周りの奴らも早坂の奇行にびっくりしている。
みんな「早坂が話しかけてきた!」「乃木っ、一緒に帰ってやれよ」となんだか早坂の味方みたいなところが気になるが。
「い、いいけど……」
早坂と話をしてみたいな、という気持ちは四月に早坂が転校してきたときからあった。
だってすごく興味がある。どうやったらこんな完璧な人間になれるんだろうって。
「じゃあ行こう」
ハッと俺は息を呑んだ。
早坂がにっこり笑った。
早坂は物静かなタイプだからあまり笑顔を見せたことがない。そんな奴が俺だけに笑顔を向けてくるから、すごくドキドキして目が離せなくなった。
かっこいい。マジでかっこいい。国宝級の顔面のくせにそんなに優しく微笑みかけてこないで欲しい。
結局、早坂とふたりで帰ることになり、いつメンとは教室で別れることになった。
「あれ? 早坂、今日は俺たちと帰らないの?」
波田野が早坂に声をかけてきた。波田野の隣には蓑島もいる。
「うん。今日から俺、乃木と帰ることにしたから」
「あー、なる。そっかそっか」
波田野はなんだか含み笑いを浮かべている。
「俺も頑張るわ。早坂もせいぜい頑張れよ」
「あぁ」
早坂は波田野の言葉に静かに頷いてみせた。
「男かぁ……。これは面白いことになりそうだな。早坂にはこのくらいのハンデがあったほうがいいもんな」
蓑島が乃木を見てニタニタ笑っているように見えた。
ハンデ……。いったいなんの勝負でのハンディキャップなのだろう。
「蓑島。その話は無しだ」
「あ、そっか。ごめん」
「じゃあな、早坂!」
「あぁ、またな」
波田野と蓑島は早坂に挨拶をして通り過ぎていった。
三人のやり取りを聞いていて俺の中にある考えが浮かんでくる。
まさかとは思うが、早坂はあの波田野が考えたゲームを受けたのだろうか。
早坂がそんなくだらないゲームに参加するなんて思えない。でも、早坂は急に俺に声をかけて誘ってきた。それこそ不自然だ。
早坂は、俺を好きにさせて告白をして、ゲームに勝とうと考えてんのかな。
そのゲームが終わったら俺はどうなるんだろう。あの告白は実はゲームでしたとネタばらしされて、あっさり捨てられるのだろうか。
早坂は酷い。俺の気持ちを弄ぶような真似をして……。
いくら平凡な俺でも、ゲームの攻略対象にするなんて酷すぎるだろ。
「乃木。どうしたの? 荷物が重い? 俺が持とうか?」
そう言って早坂が俺の肩にかかっていたスクールカバンを奪い取ろうとするから、慌てて「いいっ、大丈夫っ!」と拒否した。
「乃木は南田駅だったよな? 俺、その駅のひとつ先の駅に住んでるから、電車の方向も一緒だな」
「なんで俺の降りる駅知ってんの?!」
びっくりして思わず声が出た。早坂が転校してきてまだ三ヶ月しか経っていない。それなのにどうして俺のことについて知っているのだろう。
「波田野から聞いた」
「あ、そうなんだ……」
波田野が知っていることにもちょっと驚きだが、まぁ、波田野は電車で俺を見かけたことがあるのかもしれない。
それにしても早坂はすごい。俺と早坂が並んで廊下を歩いていると、それだけでみんなから注目されているのがわかる。
しかも早坂が俺をエスコートするようにして隣を歩くから、ものすごい優越感だ。「乃木くんいいなぁ」と女子生徒からの羨望の眼差しを感じる。
そうだよな。早坂と一緒にいられるだけでもすごいことだよな。
でもこれは、俺が告白ゲームの攻略対象にされているだけだ。
これからきっと早坂は、あの手この手で俺を好きにさせようとしてきて、いざ俺が早坂のことを好きになって告白を受けようものならゲーム終了。そこで早坂との関係は終わりだ。
早坂なんか絶対に好きにならねぇよ。
残念だったな、早坂は。攻略対象の俺が、ゲームの趣旨を聞いて知ってしまっているだけに俺が早坂に騙されることはない。早坂がどう頑張っても勝ち目はないだろう。
このまま攻略対象としてやられっぱなしは嫌だ。何か仕返ししてやりたい。
騙して悪かったと早坂を謝らせて、こんなくだらないゲームをやめにしてもらいたい。
そのためには——。
ぼんやり考え事をしていたら、気がついたら目の前が階段で、俺は階段の一番高い場所で思わずつんのめった。
「乃木っ、危ないっ!」
咄嗟に俺の身体を守る、早坂の腕。
早坂は細身なのかと思っていたのに、意外にも腕の力が強くてびっくりした。
「大丈夫か?」
「うん……」
「よかった。乃木の隣にいられて」
早坂はほっとした顔をして「ぼんやりし過ぎだよ、何を考えてたんだ?」と訊いてきた。
何を考えていただなんて言えるわけがない。俺は早坂への仕返しを考えていたんだから。
「もしかして、俺のこと?」
「へっ?!」
なんでバレてる?! でもまさか仕返しを企んでるとまではバレていないはず。
「なんだよそんな顔して。乃木は可愛いな」
「うるさいっ!」
このクソイケメンが!
簡単に可愛いとか言うなよ!
「なぁ、乃木。今から帰る?」
「えっ? 帰る……けど……」
「じゃあ俺と一緒に帰らない?」
教室で早坂とまともに話したことすらないのに、なんで早坂は急に声をかけてきたんだろう。
周りの奴らも早坂の奇行にびっくりしている。
みんな「早坂が話しかけてきた!」「乃木っ、一緒に帰ってやれよ」となんだか早坂の味方みたいなところが気になるが。
「い、いいけど……」
早坂と話をしてみたいな、という気持ちは四月に早坂が転校してきたときからあった。
だってすごく興味がある。どうやったらこんな完璧な人間になれるんだろうって。
「じゃあ行こう」
ハッと俺は息を呑んだ。
早坂がにっこり笑った。
早坂は物静かなタイプだからあまり笑顔を見せたことがない。そんな奴が俺だけに笑顔を向けてくるから、すごくドキドキして目が離せなくなった。
かっこいい。マジでかっこいい。国宝級の顔面のくせにそんなに優しく微笑みかけてこないで欲しい。
結局、早坂とふたりで帰ることになり、いつメンとは教室で別れることになった。
「あれ? 早坂、今日は俺たちと帰らないの?」
波田野が早坂に声をかけてきた。波田野の隣には蓑島もいる。
「うん。今日から俺、乃木と帰ることにしたから」
「あー、なる。そっかそっか」
波田野はなんだか含み笑いを浮かべている。
「俺も頑張るわ。早坂もせいぜい頑張れよ」
「あぁ」
早坂は波田野の言葉に静かに頷いてみせた。
「男かぁ……。これは面白いことになりそうだな。早坂にはこのくらいのハンデがあったほうがいいもんな」
蓑島が乃木を見てニタニタ笑っているように見えた。
ハンデ……。いったいなんの勝負でのハンディキャップなのだろう。
「蓑島。その話は無しだ」
「あ、そっか。ごめん」
「じゃあな、早坂!」
「あぁ、またな」
波田野と蓑島は早坂に挨拶をして通り過ぎていった。
三人のやり取りを聞いていて俺の中にある考えが浮かんでくる。
まさかとは思うが、早坂はあの波田野が考えたゲームを受けたのだろうか。
早坂がそんなくだらないゲームに参加するなんて思えない。でも、早坂は急に俺に声をかけて誘ってきた。それこそ不自然だ。
早坂は、俺を好きにさせて告白をして、ゲームに勝とうと考えてんのかな。
そのゲームが終わったら俺はどうなるんだろう。あの告白は実はゲームでしたとネタばらしされて、あっさり捨てられるのだろうか。
早坂は酷い。俺の気持ちを弄ぶような真似をして……。
いくら平凡な俺でも、ゲームの攻略対象にするなんて酷すぎるだろ。
「乃木。どうしたの? 荷物が重い? 俺が持とうか?」
そう言って早坂が俺の肩にかかっていたスクールカバンを奪い取ろうとするから、慌てて「いいっ、大丈夫っ!」と拒否した。
「乃木は南田駅だったよな? 俺、その駅のひとつ先の駅に住んでるから、電車の方向も一緒だな」
「なんで俺の降りる駅知ってんの?!」
びっくりして思わず声が出た。早坂が転校してきてまだ三ヶ月しか経っていない。それなのにどうして俺のことについて知っているのだろう。
「波田野から聞いた」
「あ、そうなんだ……」
波田野が知っていることにもちょっと驚きだが、まぁ、波田野は電車で俺を見かけたことがあるのかもしれない。
それにしても早坂はすごい。俺と早坂が並んで廊下を歩いていると、それだけでみんなから注目されているのがわかる。
しかも早坂が俺をエスコートするようにして隣を歩くから、ものすごい優越感だ。「乃木くんいいなぁ」と女子生徒からの羨望の眼差しを感じる。
そうだよな。早坂と一緒にいられるだけでもすごいことだよな。
でもこれは、俺が告白ゲームの攻略対象にされているだけだ。
これからきっと早坂は、あの手この手で俺を好きにさせようとしてきて、いざ俺が早坂のことを好きになって告白を受けようものならゲーム終了。そこで早坂との関係は終わりだ。
早坂なんか絶対に好きにならねぇよ。
残念だったな、早坂は。攻略対象の俺が、ゲームの趣旨を聞いて知ってしまっているだけに俺が早坂に騙されることはない。早坂がどう頑張っても勝ち目はないだろう。
このまま攻略対象としてやられっぱなしは嫌だ。何か仕返ししてやりたい。
騙して悪かったと早坂を謝らせて、こんなくだらないゲームをやめにしてもらいたい。
そのためには——。
ぼんやり考え事をしていたら、気がついたら目の前が階段で、俺は階段の一番高い場所で思わずつんのめった。
「乃木っ、危ないっ!」
咄嗟に俺の身体を守る、早坂の腕。
早坂は細身なのかと思っていたのに、意外にも腕の力が強くてびっくりした。
「大丈夫か?」
「うん……」
「よかった。乃木の隣にいられて」
早坂はほっとした顔をして「ぼんやりし過ぎだよ、何を考えてたんだ?」と訊いてきた。
何を考えていただなんて言えるわけがない。俺は早坂への仕返しを考えていたんだから。
「もしかして、俺のこと?」
「へっ?!」
なんでバレてる?! でもまさか仕返しを企んでるとまではバレていないはず。
「なんだよそんな顔して。乃木は可愛いな」
「うるさいっ!」
このクソイケメンが!
簡単に可愛いとか言うなよ!
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