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番外編『心配症のゼイン』5
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ゼインはさっきまでテオドールを寝かせていた小さなベッドを持ち、寝室へと移動させる。
今夜は親子三人、水入らずの時間になる。
ハルはベッドのそばで立ったままテオドールを抱っこしている。そんな様子をゼインはベッドの端に腰掛けて、やたらと嬉しそうな顔で見ている。
「なんですか、ゼインさま。言いたいことがあるならどうぞはっきりおっしゃってください」
「可愛いなと思って」
「ああ。テオドールですか? 抱っこしたいんですか?」
「いいや、ハルだよ。ハルが可愛い」
「えっ?」
「ハルも座りなさい」
「わ……!」
半ば強引にゼインに引っ張られて膝の上に座らされる。ゼインはテオドールごとハルを抱きしめてきた。
「可愛い。俺のハル」
「ゼインさまったら」
「可愛い。好きだ。大好きだ」
「こら、ダメでしょ。テオドールがいるんですから」
「嫌だ。離さない。ふたりとも大好きだ」
駄々っ子みたいに甘えた声を出して、膝から下ろしてくれない。ああ、もう困った旦那様だと思いながらもハルはゼインに身を委ねる。寄りかかっていたほうが、ゼインも楽だろうから。
「なぁ、ハル」
「はい。ゼインさま。私はそばにおりますよ」
そう返事をすると、ゼインの短い笑い声が聞こえた。
「幸せすぎて怖い」
ハルをぐっと抱き寄せ、溜め息をつくように言った。
「幸せを手に入れたら、今度は失うのが怖い。俺は欲張りなのだろうか」
「私がテオドールを産んだとき、目を覚まさなかったときのことを思い出してしまったのですか?」
ハルの問いにゼインは静かに頷く。こうも素直だと、ゼインのことが可愛く思えてくる。
「ごめんなさい、ゼインさま。あのときはたくさん心配をかけてしまいましたね」
本当に申し訳なく思う。ゼインは人一倍心配性だから、誰よりも辛かっただろう。
「でも今はこのとおり元気です。ゼインさまが無理するなっていうから、寝たふりばかりしていますが、散歩にも行きますし、城内ならあちこちフラフラと……」
「は……?」
信じられないという顔でゼインが眉間にシワを寄せたから、ハルは途中で黙る。
「と、とにかく元気なのです。ゼインさまが思うよりも! だから」
「ハル。お前ってやつは。今日もパーティーにこっそり参加していたなと思ったが、他にもあったのか」
「……はい。すみません。黙って寝ていられる性格ではないので。ゼインさまが心配してくださってる気持ちは嬉しいんですけど、ずっと寝たきりっていうのはヒマでヒマで。あくびくらいしかすることがないんです」
「ヒマ!?」
「はい。しょ、正直に申し上げますと……」
怒られるかと思ったのに、ゼインは急に笑い出した。
「くっくっ。ハルはいつも俺の想像以上だ」
ゼインは笑顔になる。
「最高だ。俺の不安などハルにかかれば吹き飛んでしまうな」
「ええ。だからいつも申し上げておりますが、私は元気なのです。それに、欲張りでもいいんじゃありませんか? ゼインさまはもう少し我が儘に生きてもいいと思います。欲しいものは欲しい、やりたくないことはやりたくないでいいんじゃないでしょうか」
ゼインは幼いころから我慢ばかりしてきたように思う。自分のやりたいことは言わずに、国のため家族のため、生きてきたような人だ。ちょっとくらいの我が儘は許されるはず。
「俺の、欲しいもの……」
「はい。したいことでもいいですよ」
「俺のしたいこと……。なんでもいいか?」
「はい」
「ハル」
ゼインは急に真面目な顔になる。
「な、なんでしょうか」
ハルも身構える。なんでも持っているゼインの我が儘とはなんだろう。ちょっとだけ、いや、すごく興味がある。
「あの、初夜のときの透け透けの服は、まだあるのだろうか」
「んっ?」
「あれを着たハルを、また、見てみたくてだな……」
真っ赤な顔をしながらゼインはとんでもない要求をしてきた。
(あ、あれをまたっ……?)
あれはハルの黒歴史だ。それをもう一回……。
すごく恥ずかしい。でも、ゼインの我が儘ならなんとか叶えてあげなければ。
「嫌なら……」
「か、かしこまりました。やります。やりますね、ゼインさま。ですけど少し時間をください」
「わかっている。ハルの体調が戻るまでは」
「そ、そうではなくてですね」
この前、異国の行商が城を訪れたことがあったのだ。そのときにロランに「これはゼインさまが絶対にお好きな感じです」と言われた過激な服があった。そのとき確か、異国の踊り子が身に纏う服だと説明を受けた。
あのときはとても着られないと断ってしまったが、あれを着たら、ゼインは喜ぶのではないか。
あの行商は再び訪れるはず。
ハルはそっとゼインに耳打ちする。
「新作をご用意いたします」
ハルのそのひと言で、ゼインが卒倒し鼻血まで出したのは、後々のふたりだけの笑い話になった。
――番外編『心配症のゼイン』完。
今夜は親子三人、水入らずの時間になる。
ハルはベッドのそばで立ったままテオドールを抱っこしている。そんな様子をゼインはベッドの端に腰掛けて、やたらと嬉しそうな顔で見ている。
「なんですか、ゼインさま。言いたいことがあるならどうぞはっきりおっしゃってください」
「可愛いなと思って」
「ああ。テオドールですか? 抱っこしたいんですか?」
「いいや、ハルだよ。ハルが可愛い」
「えっ?」
「ハルも座りなさい」
「わ……!」
半ば強引にゼインに引っ張られて膝の上に座らされる。ゼインはテオドールごとハルを抱きしめてきた。
「可愛い。俺のハル」
「ゼインさまったら」
「可愛い。好きだ。大好きだ」
「こら、ダメでしょ。テオドールがいるんですから」
「嫌だ。離さない。ふたりとも大好きだ」
駄々っ子みたいに甘えた声を出して、膝から下ろしてくれない。ああ、もう困った旦那様だと思いながらもハルはゼインに身を委ねる。寄りかかっていたほうが、ゼインも楽だろうから。
「なぁ、ハル」
「はい。ゼインさま。私はそばにおりますよ」
そう返事をすると、ゼインの短い笑い声が聞こえた。
「幸せすぎて怖い」
ハルをぐっと抱き寄せ、溜め息をつくように言った。
「幸せを手に入れたら、今度は失うのが怖い。俺は欲張りなのだろうか」
「私がテオドールを産んだとき、目を覚まさなかったときのことを思い出してしまったのですか?」
ハルの問いにゼインは静かに頷く。こうも素直だと、ゼインのことが可愛く思えてくる。
「ごめんなさい、ゼインさま。あのときはたくさん心配をかけてしまいましたね」
本当に申し訳なく思う。ゼインは人一倍心配性だから、誰よりも辛かっただろう。
「でも今はこのとおり元気です。ゼインさまが無理するなっていうから、寝たふりばかりしていますが、散歩にも行きますし、城内ならあちこちフラフラと……」
「は……?」
信じられないという顔でゼインが眉間にシワを寄せたから、ハルは途中で黙る。
「と、とにかく元気なのです。ゼインさまが思うよりも! だから」
「ハル。お前ってやつは。今日もパーティーにこっそり参加していたなと思ったが、他にもあったのか」
「……はい。すみません。黙って寝ていられる性格ではないので。ゼインさまが心配してくださってる気持ちは嬉しいんですけど、ずっと寝たきりっていうのはヒマでヒマで。あくびくらいしかすることがないんです」
「ヒマ!?」
「はい。しょ、正直に申し上げますと……」
怒られるかと思ったのに、ゼインは急に笑い出した。
「くっくっ。ハルはいつも俺の想像以上だ」
ゼインは笑顔になる。
「最高だ。俺の不安などハルにかかれば吹き飛んでしまうな」
「ええ。だからいつも申し上げておりますが、私は元気なのです。それに、欲張りでもいいんじゃありませんか? ゼインさまはもう少し我が儘に生きてもいいと思います。欲しいものは欲しい、やりたくないことはやりたくないでいいんじゃないでしょうか」
ゼインは幼いころから我慢ばかりしてきたように思う。自分のやりたいことは言わずに、国のため家族のため、生きてきたような人だ。ちょっとくらいの我が儘は許されるはず。
「俺の、欲しいもの……」
「はい。したいことでもいいですよ」
「俺のしたいこと……。なんでもいいか?」
「はい」
「ハル」
ゼインは急に真面目な顔になる。
「な、なんでしょうか」
ハルも身構える。なんでも持っているゼインの我が儘とはなんだろう。ちょっとだけ、いや、すごく興味がある。
「あの、初夜のときの透け透けの服は、まだあるのだろうか」
「んっ?」
「あれを着たハルを、また、見てみたくてだな……」
真っ赤な顔をしながらゼインはとんでもない要求をしてきた。
(あ、あれをまたっ……?)
あれはハルの黒歴史だ。それをもう一回……。
すごく恥ずかしい。でも、ゼインの我が儘ならなんとか叶えてあげなければ。
「嫌なら……」
「か、かしこまりました。やります。やりますね、ゼインさま。ですけど少し時間をください」
「わかっている。ハルの体調が戻るまでは」
「そ、そうではなくてですね」
この前、異国の行商が城を訪れたことがあったのだ。そのときにロランに「これはゼインさまが絶対にお好きな感じです」と言われた過激な服があった。そのとき確か、異国の踊り子が身に纏う服だと説明を受けた。
あのときはとても着られないと断ってしまったが、あれを着たら、ゼインは喜ぶのではないか。
あの行商は再び訪れるはず。
ハルはそっとゼインに耳打ちする。
「新作をご用意いたします」
ハルのそのひと言で、ゼインが卒倒し鼻血まで出したのは、後々のふたりだけの笑い話になった。
――番外編『心配症のゼイン』完。
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え!!!
そんな!!!!!
作者の方こそ恐縮でございます。どうしよう嬉しいありがとうございます✨✨
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こちらこそありがとうございます(ᴗ͈ˬᴗ͈⸝⸝)ペコリ
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ゼインとハルの2人を各サイトでたくさんたくさん応援してくださりありがとうございました💕
素敵な感想ありがとうございます!
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