愛を注いで

木陰みもり

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5、2人のズル休み〜side 拓真〜

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 その日俺は夢を見た。幸せな夢だ。好きな人と同じ気持ちを共有できた夢。抱き合い、手を絡めながら、お互いの体温を確かめ合う夢。重ねた唇から流れ込む甘い液体に高揚し身悶えする夢。身体中が熱くてふわふわする夢。それらは全て、現実なのかと思うほどに生々しく体温として身体に残っているように感じる。
「んん…あつっ…み…ず……」
「水ですね、どうぞ」
「ありがとう」
「体調はどうですか?」
「ん~よく寝たらスッキリしたよ」
「それはよかったです」
俺は身体を起こし、手渡された水を勢いよく飲み干す。熱った身体に冷たい水が行き渡った感じが心地良い。寝起きのぼーっとした頭がスッキリしていく。
 いつもより広いベッド。見たことのない色のカーテン。誰かに手渡された水の入ったコップ。誰かの体温を感じる繋がれた右手。え?
 恐る恐るコップが出てきた方を向くと、尊くんがニコニコしながら横に寝ていた。一体どういうことだ?理解が追いつかず、目をキョロキョロしていたら、尊くんが声を上げて大笑いした。笑ってないで状況説明して欲しいんだけど!ここはどこなんだ?
「あはは、どういう状況か分からないって顔してますね。」
「いやだって、気付いたら自分の家じゃないって普通驚くよ?」
「ふふ、ここは僕の家です。拓真さん昨日途中で倒れちゃったんです。だから僕の家に運ばせてもらいました。」
俺昨日倒れたのか?確かに途中から記憶が曖昧だ。自分の家に帰った記憶がないと思ったら、そういうことだったのか。
「え、そうだったのか?ごめん、迷惑かけて」
「気にしないでください。それよりも、他に変わったところありません?」
「他に?」
そういえば俺は昨日ワイシャツを着ていたはず。でも今はTシャツ?それに下半身もなんだか開放感があって…
 ガバッとタオルケットをめくると何も身に纏っていない俺の脚があらわになった。しかも昨日最後の記憶では下着の中が気持ち悪かった。だけど今はその不快感が全くない。まさかと思いTシャツを捲ると昨日履いていた下着ではなかった。しかも中は綺麗に拭かれている。状況を理解するにつれ、羞恥で顔がどんどん熱くなっていく。
 そんな俺の様子を、尊くんは面白そうにクスクス笑っている。思わず俺は、熱くて爆発しそうな顔をタオルケットで隠した。こ、これは恥ずかしすぎる。

 一頻ひとしきり笑った美琴くんが申し訳なさそうに謝ってきた。
「すみません、揶揄からかいすぎました。顔見せてください」
声がすごく寂しそうで、しゅんとしているのが伝わってくる。勿論スッキリ寝られたのは尊くんのおかげなのは分かっているし、俺のためにしたことも分かっている。でもものすごく恥ずかしくて顔を見せられないんだ。
 俺が悶々としながら黙っていると、尊くんはさらに寂しそうな声で尋ねてきた。
「寝苦しそうだったので勝手に着替えさちゃいましたけど、僕に脱がされるの…嫌でしたか?」
尊くんを拒絶したわけじゃないのに、誤解されてしまった。また傷付けてしまった。俺はタオルケットを離し、尊くんの方を向いて、精一杯頭を下げた。
「嫌とかじゃない!むしろお礼を言わなくてごめん、ありがとう」
しかし尊くんは何も言わず、俺も下げた頭を上げるタイミングを失い、2人の間に沈黙が流れる。
 俺、何か間違えたか?段々と不安が大きくなり、少しだけ顔を上げ、前髪の隙間から様子を伺った。目線を徐々に尊くんの方に上げていくと、ニヤニヤしながら俺を見つめる視線とバッチリ合ってしまった。
「あ、やっと目が合いましたね。」
嬉しそうな声色で呟く彼は、寝起きだからか、はたまたベッドの上だからか、昨夜以上に大人びて見えて、思わずドキッとしてしまった。というか全然落ち込んでない!俺もしかして騙された?
「あ、あのー…尊…さん?」
「ふふ、僕が悲しんでると思いました?」
目を細め満面の笑みでこちらを見るその顔は、してやったと言わんばかりの小悪魔な顔だ。
 色んな意味でドキドキさせられて、こんなにも言葉1つで翻弄させられて、俺って本当に格好悪い。それに比べて尊くんは、こんな駆け引きみたいなこと仕向けて、本当に同い年?今は年上と言われてもいいくらいに余裕を感じる。でもちょっとだけ距離が縮まったような…そんなことを考えていると、急にギュッと腰に巻き付かれた。
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