愛を注いで

木陰みもり

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9、お家デート①〜side 尊〜

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 嬉しそうに言われてしまったらこのサンドウィッチは拓真さんだけのオリジナルメニューするしかない。そうしようと心の中で僕は誓った。
 拓真さんは「食べるの勿体ないくらい綺麗だな」と呟きながら何枚も写真を撮っている。目をキラキラさせて、まるでおもちゃを与えられた子供みたい。僕は嬉しそうにしている拓真さんをこっそり写真に収めた。
 それから僕たちはサンドウィッチを持って一緒に写真を撮った。なんだかすごく恋人っぽいことをした。しかもすごくいい雰囲気。お互い写真を撮り終えたし、それとなくサンドウィッチをあーんなんてできたらと思い、思い切って差し出してみた。
「拓真さん、はいどうぞ」
「あ、ありがとう」
口元まで運んだのに、呆気なく手で取られてしまった。両手が携帯で塞がっている間にするべきだったなと僕は1つ学んだ。
「うん!すごい美味しい。カラフルなのに味はちゃんとまとまってるんだな」
「あはは、ありがとうございます」
「ほら尊くんも食べなよ」
拓真さんはサンドウィッチを1つ取り、僕の口元に運んできた。これは拓真さん自らあーんをしてくれている状況、なわけないか。
 僕は拓真さんの手からサンドウィッチ受け取った。今日のサンドウィッチは昨日より出来が良かった。
「あー…もう1つ食べる?」
「いえ、これは拓真さんの分ですよ」
「あー…うん、ありがとう」
なんだか拓真さん急に歯切れが悪い気がする。それにやたらサンドウィッチを僕の口元に運んでくるな。
 これってもしかして、僕にあーんしたいってことなのかな。でも僕がさっきからかわしてるから、上手くいかなくてちょっと歯切れの悪い言い方になっていた。ということなのだろうか。だとしたら悪いことをしてしまった。
 僕は拓真さんの顎に手を添えてこちらに顔を向けさせた。そのままサンドウィッチを拓真さんの口に運んだ。今度は「あーん」としっかり声に出して。拓真さんも恥ずかしそうにしながら、それでもゆっくり口を開けて食べてくれた。
 食べながら「俺がしたかったんだけど」と悔しそうに呟いていた。もちろん拓真さんにもやってもらわないと不公平だ。サンドウィッチを拓真さんに手渡し、僕は彼の目の前で口を開けた。拓真さんも恥ずかしそうに小声で「あーん」と言ってサンドウィッチを食べさせてくれた。
「拓真さんが食べさせてくれた方が何倍も美味しいです、イテッ…」
ちょっと調子に乗りすぎてしまったらしい、頬を赤く染めムッと膨らませた拓真さんにデコピンされてしまった。
 この優しい時間がまた僕の心を満たしていく。
 デコピンでちょっと痛い額も、口の中に広がる甘さも、今のこの時間全てが初めての経験で、大切な思い出。

人と寝るといつもよりぐっすり眠れた。
特別な人に作るご飯は心を弾ませた。
人と食べるご飯が普段の何倍も美味しく感じることを知った。
自分はあまり人に関心がないと思っていたけど、全然そんなことはなかった。
彼が苦しそうにしていると、自分のことのように苦しかった。
彼が嬉しそうにしていると、つられて嬉しくなった。
かまいたくなるのも、悪戯したくなるのも、彼だけだ。
ずっと僕のことだけを見ていて欲しいと思うのもそうだ。

拓真さんが昔の話をしてくれた時、嬉しかった。僕もいつか話せる時がくるだろうか。誰かに話したいと思ったこともなかった昔話。だけど今は話を聞いてほしいと思ってしまった。いつかその日がきたらいいな。

「ちゅっ…考え事か?」
不意にキスされてしまった。しかも唇に。キスの味はデザートサンドウィッチの甘いクリームの味がした。
あぁなんて幸せな休日なんだろうか。
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