愛を注いで

木陰みもり

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10、お家デート②〜side 拓真〜

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 昨日、俺は格好良く花束を渡して告白する予定だった。だって好きな人には格好良いって男なら誰でも思うだろ?
 だが俺は一瞬で自分のコンプレックスを暴かれて女々しい姿を晒してしまった。しかも相手の店で倒れて迷惑をかけるし、仕事を休む連絡も入れてもらって、何から何まで世話になりっぱなし。
 そりゃ疲れとか色々ありすぎてついつい弱音吐いちゃったり、昔から自分の意見とかしっかりいうのは苦手だったけど、なんかもう色々、俺って格好悪すぎる。
 今朝は一杯一杯で気が付かなかったけど、男同士のお付き合いって、どちらかは必ず女側になるんだよな。どう考えても俺って女側…だよな。挿れられてはいないけど、太腿で、擬似性行為みたいなことしちゃったわけだし、尊くんは多分俺に挿れる気満々だと思う。
 昼間っから仕事休んで何考えているんだと思われるかもしれないが、俺にとっては早急に考えなければならない重要事項だ。正直確かめたい。尊くんに直接聞けたらどんなにいいか。俺はついつい大きなため息を吐いてしまった。
「また悩み事ですか?」
心配そうに俺の顔を覗き込んできたのは、昨日恋人になった人。「君との性事情で悩んでる」なんて口が裂けても言えない。
俺は笑いながら「なんでもない」と小さな嘘を吐く。こういう時ちょっと胸がチクッとする。それに尊くんはきっと俺が言えないことを分かっている。ご飯を食べる前のキッチンでのやり取りできっと…
 だから彼はあまり突っ込んで聞いてこないし、俺が言いたいことは突っ込んで聞いてきてくれる。あって間もない人がこんなに分かってしまうなんて、俺ってそんなに分かりやすいのか?なんだかここ数日こんなことばかりだ。
 こんなことで悶々と堂々巡りな思考をして、本当に格好悪すぎる!そもそも俺は考えることが苦手なんだ。こういう時は行動で示すのみ!
 俺は食器を洗う尊くんの背後にそっと近付き、抱きついてみた。けど思ってたのと違う格好になってしまった。本当は上から覆い被さるように抱き締めたかった…って尊くんの方が身長高いから無理だった。
 まぁ抱きついたら尊くんが嬉しそうに笑ってくれたからいいか。
 俺は抱き締めついでに片付けのお礼を言った。尊くんは家事が楽しいのだろうか、ニコニコしながら食器を洗っている。良い男は家事も完璧だ。
「夜は俺作ってもいいか?」
「え、良いんですか!嬉しいです」
よし、料理は割と得意だから作ってお礼しよう。それに上手くできたら格好良いだろう。俺は意気込みレシピサイトを見るためにリビングに戻った。
 そうと決まれば美味しいものを作ってあげたい。あ、でも尊くんの好きなもの作った方が良いか。家族に手料理なんて作ったことないし、何作るか迷うな。
 悩み込んていると、尊くんが苦笑いしながら隣に座っていた。これは「また悩んでる」って思われただろうな。
「今度は何で悩んでるんですか?」
やっぱり思われていた。俺は基本的に超が付くほどの優柔不断だから、よく何に悩んでいるのか聞かれることが多かった。中身は正直どうでもいいような小さなことで悩んでいることが多い。呆れられることが多いから、なるべく悩んでも顔には出さないようにしてきた。そう出さないようにしていたと思っていたんだけど、周りは気遣って言わないでいてくれただけかも。
 せっかく恋人になったのに、優柔不断すぎて呆れられて面倒臭いなってさよならとか、いつもの流れだけは避けたい。ここは自分のことちゃんと話しておいた方が良いだろう。
「俺、すごい優柔不断なんだ」
「ふふ、気付いてました」
「ほとんどしょうもないことで悩んでいる」
「知ってます」
「正直呆れるだろう?」
「呆れませんよ」
「そうだよな、呆れないよな…えっ?」
今、何て言ったんだ。「呆れない」って言ったのか。今日は特に本領発揮してたと思うんだけど、本当に言っているのか。
「疑っていますね。何度でも言いましょう、呆れませんよ、可愛い悩みだなって思います」
「か、また可愛いって…」
「拓真さんが自覚するまで言いますよ。僕は優柔不断でなんでも悩む拓真さんが可愛いと、好ましいと感じています」
真っ直ぐな曇りのない目で真剣に言われてしまった。そんな顔で言われたら受け入れるしかないじゃないか。急に真剣な顔になるなんて、本当にズルいと思う。そしてうっかりキュンとしてしまった。
 いいさ、今は甘んじて「可愛い」を受け入れようじゃないか。でもいつか格好良いって言わせてやる。俺は心の中でそう誓った。
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