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追跡される…遥
しおりを挟む車に乗り込んで暫く走っていると、後方のタクシーの異変に気付いた。
朗らかに俺達の車を追跡しているような素振りを見せていたのだ。
変に亜耶を怖がらせたくない為、少し遠回りして家に戻ろうとしたが。
「遥さん、何時もと道が違うけど、何かあった?」
妙に感がいい亜耶にどう答えたらいいか迷った末。
「後を着けられてるみたいだ。」
隠してもわかってしまうんだから、伝えた方が良いだろうと口にした。
「えっ! 何で?」
亜耶が後ろを振り返って確認しようとするが。
「見なくて良い。ただな、このまま着いてこられると家がバレてしまう。」
折角のマイハウスが知られるのは流石に嫌だ。
「こわ…。ねぇ、遥さん。一旦実家に戻ってから改めて出ない?」
亜耶が唐突に言い出す。
「それだとゆっくり買い物が出来ないぞ。」
俺は、車内の時計に目をやってから言うと。
「そうかも知れないけど、でも家を知られるよりは良いと思うの。」
亜耶の言う事も最もだと思い。
「じゃあ、そうするか。」
俺は進路を変更して実家に向けて車を走らせた。
鞠山邸の門扉を潜り抜けるとタクシーは入口で止まった。
俺は車を駐車スペースに止めるとエンジンを切った。
車を降りて玄関に歩みを進める。手にはケーキの箱を持って。
「ただいま。」
亜耶が言えば。
「お帰りなさい。随分と早いわね。」
お義母さんが怪訝な顔をしながら迎えてくれる。
「それが、昼食後にそこのシェフからケーキを頂きまして、家に置きに行こうとしたんですが追われてしまいまして、急遽こちらに来た次第です。」
俺が付け加えると。
「あぁ、門の前に横付けになってるタクシーね。」
ってお義母さんが言う。
何故、それを…。
俺が疑問に思ってると。
「それなら、もう一つの門から出ていけばいいわ。」
お義母さんの言葉にまたしても疑問符が浮かぶ。
「亜耶は知ってるでしょ? そっちから出て行きなさい。」
亜耶は頷いては居るが、果たして大丈夫なのか?
そう思いながら。
「これ、夕食後のデザートに出してください。」
手にしていたケーキの箱を渡す。
「わかったわ。」
「では、行ってきます。」
亜耶の手を取って、歩き出す。
「気を付けてね。」
再びお義母さんに見送られて玄関を出たのだった。
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