好きだから傍に居たい

麻沙綺

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落ち込む亜耶…遥

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 今日は、簡単に作れるオムライスこれしか無理だったが、また何か作ってやるか……。
 俺は、そう思いながらリビングに足を向ける。
「亜耶。できたぞ。」
 って、亜耶に声をかける。
 亜耶は、ソファーの隅にクッションを抱えて小さく座っていた。
 うぉ~。
 何だよ。
 何で、どんよりしてるんだよ。俺、何か悪いことしたか?
 不安になりながらも、亜耶に近付こうとしてた。
「う、うん。」
 見るからに覇気がない。
 亜耶は、立ち上がってダイニングに重い足取りで進む。
 ダイニングの入り口で立ち止まる亜耶に。
「ほら。冷めちまう前に食べるぞ。」
 そう声をかけて、亜耶の肩に手をやり座るように促す。
 テーブルには、亜耶が準備してくれた物と俺が作った物を並べた。
 俺が作ったのは、オムライスだけだがな。
「う、うん……。」
 亜耶が、動揺しながら、席に着く。
 俺も、亜耶の向かいの席に座る。

「「いただきます」」
 二人で手を合わせて、食べようと俺は箸を手にした。
 が、亜耶の反応を見たくて、じっと様子を見ていた。
 亜耶は、食べにくそうにしながら、一口口に入れる。
「おいしい!!」
 スプーンを持っていない方の手を口許に当ててそう言う。
 俺は、その言葉を聞いて。
「そっか……美味しいか。よかった、亜耶の口にあって……。」
 ホッとしたのだろう気付けばそう口に出してた。
 だが、亜耶が顔を俯かせてしまった。
「どうした、亜耶?」
 亜耶に声をかければ、首を横に振り。
「なんでもない……。」
 って言うんだ。
 見るからに落ち込んでるのに、何でもないって無いだろ。
 俺は、慌てた。
 そこまで、落ち込む必要はないのに、余計なことしたのか?
「ちょっ、亜耶。見るからに落ち込んでるだろうが。俺が料理できるのは、独り暮らしが長いからなんだって……」  
 そう言って、席を立ち亜耶の隣の椅子に座ると亜耶を強く抱き締めた。
 俺は、自分の過去を少しだけ、話そうと思った。

「亜耶には、まだ話してなかったな。俺、中学の時から一人暮らししてた。親、姉兄が煩わしくて……。」
 あの頃は、親の期待が大きすぎて反発し、姉兄の嫉妬心剥き出しの嫌がらせが酷かったし……。
「俺さ。家の重圧に負けて、親や姉兄に反発しまくったあげく、逃げ出したんだ。自分の責任を放棄して……。それから、独り暮らしが始まったんだ。」
 自分にどんな責任があるかなって、わかっていなかったもんな。
「最初のうちはさ、惣菜とか買って食べてたんだけどな。味に飽きてきてさ、だったら、自分で作れば、自分の好みの味付けになるって気付いて、作り出したんだよ。だけどさ、失敗ばかりでさ。野菜の皮も剥くこともままならなかった。亜耶が作ってくれた肉じゃがなんか、食べれた物じゃなかった。かといって、そこで諦めるなんて出来なくてさ、必死に覚えた。オムライスこれだって、今なら綺麗に作ること出来るけど、前は全然ダメでさ。卵を焦がしたり、破いたり、何度も失敗した事か。諺にもあるだろ "失敗は、成功のもと" って。亜耶は、主婦になって、一ヶ月しか経ってないんだ。それに俺、朝にも言ったぞ。 "焦らなくていい" って。亜耶のペースで上手くなってくれれば、いいんだ」
 俺は、苦笑しながら亜耶の頭を何度も何度も撫でる。
「遥さん。ごめんなさい。」
 って、亜耶が謝ってくる。
「何に謝ってるの? 俺たち夫婦だぞ。出来ないことがあればそれをサポートするのが俺の役目だろ。俺は、亜耶が、無理して体を壊す方が怖いんだよ。」
 俺は、ゆっくりと自分の思っていることを口にした。
「それに、亜耶は、俺にとって自慢の奥さんなんだからな。」
 俺は、笑みを浮かべてそう口にした。
「うん……。ありがとう。私も遥さんが、自慢の旦那様だよ。」
 亜耶から、笑顔で言われたら、動揺するだろ。
 うわ~、それホント反則だわ。
 俺の顔、赤くなってると思う。
 亜耶が、俺の顔を凝視してくる。
「ちょ、亜耶。こっち見るな。」
 俺は、顔を反らし、テーブルの上の物を見て、夕飯の途中だったのを思いだし。
「飯、冷めちまうから、食べちまおう。」
 俺はそう言うと、そそくさと自分の席に戻り、箸に手を伸ばして、食べ始めた。

 亜耶が、クスリと笑みを溢して、オムライスを食べ始める。

 さっきよりも、ご機嫌になったみたいだ。

 そういえば、俺、亜耶に自分の事話してない事に気付いた。
 今度、時間がある時にでも話そうと思った。








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