猫耳王子

麻沙綺

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5話 変わらない…春菜

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  あれは、小学校に上がる前だった。

  家族ぐるみでよくお隣の幼馴染み “あっ君たち親子” とお出掛けをしていた。
  休みの度に海・山・水族館・遊園地・動物園と遊びに行く間柄だった。
  だから、あっ君が引っ越すって聞いたとき、凄く寂しくて、ワンワン号泣した。
  そんな私にあっ君が。
『僕、必ず春菜の所に戻ってくるから、今は辛いだろうけど待ってて。』
  って、安心させる為の言葉を言ってくれた。

  子供ながらにその言葉を信じようって思ってた。


  何時しか、彼の存在自体が薄れていってた。

  そして、今目の前にその彼が居る。
  約束…守ってくれたんだね。


  でも、私は彼が現れるまで、忘れていた。
  辛い思い出だったから……。
  だから、今更現れてもどうこう思ってない。

  それが今の私の思い。



「春菜。吉井くんとは、どんな関係なの?」
  真理こと伊上真理が唐突に聞いてきた。
「ん? 吉井くんとは、幼馴染みだよ。彼、小学校に上がる前に引っ越しちゃったからね。」
  昔を懐かしんで口にした。
「ふ~ん。」
  納得してない?
  まァ、私があっ君にベッタリだったのは、言わなくていいかな。
「昔の幼馴染みが戻ってきて思うことは?」
  何、その質問?
「変わってない。」
  それしか浮かばない。
  まァ、殆んど覚えてないから、仕方ないんだけど。
「そうなの?」
「うん。雰囲気全然変わってない。」
  フンワリとした誰にでもなつく雰囲気は、今も変わってない。
  そんな彼だから、自然と人が集まる。
  今も、他のクラスの女の子達が、彼を見ようと集まってる。

「今日一日落ち着かないかもね。」
  真理が、うんざりした顔をする。
「そうだね」
  私は、苦笑交じりに頷いた。


「ねぇ、真理に聞いてもいい?」
「ん?」
「吉井くんの頭に猫の耳ついてるよね?」
  声のトーンを落として聞いてみた。
  さっきから気になってたから……。
「はっ? 何それ。そんなの付いてないよ、まァ、彼だったら似合いそうだけど……。」
  って言葉が返ってきた。
  私の目がおかしいのか?
「…でも、現に付いてる。」
  って口を滑らしてた。
「何が付いてるって?」
  突然、目の前にあっ君が現れた。
「うわぁーー。…えっ…あっ……吉井くん。」
  慌ててて口ごもってしまった。
「どうしたの春菜?」
  キョトンとした顔で首を傾げるあっ君。
  そんな仕草も可愛いんだけど……。
「…何でもない。」
  首と手を横に振る私。
  本人を目の前にして言えるわけ無い。
「ふ~ん。で、春菜。“吉井くん”って呼ばれるのヤダ。前みたいに“あっ君”って呼んでよ。」
って、悲しそうな表情かおで懇願される。
  捨て猫みたいな顔をされたら、誰だって頷いてしまうだろう。
「…えっと……。」
  私が呼ぶまで、ずっとそんな顔をされるのは、ちょっと気が引ける。それにソワソワしてる。    尻尾をブンブン振ってるのがわかるぐらい。
  呼んで欲しいって、期待の色を滲ませて私を見つめる彼。
  えぇい女は度胸だ。
「……あ、あっ君」
  私がそう口にしたら、フワリとした笑顔を見せる。


  うわーーーー。

  なんちゅう笑顔を見せるのよ。
  こっちが恥ずかしい。
  周りも顔を赤らめてあっ君を見てる。
「ねぇねぇ、私たちも "あっ君" って呼んでもいい?」
  いつの間にか女の子たちが集まっていた。
「う~ん。ごめんね。この呼び方は、春菜だけ。他の子は、違う呼び方をして…ね。」
  あっ君が、口許に人差し指を持っていきトントンッてしてから答える。
  小さいときからのあっ君の癖。
  考え事してる時にいつもしてる。

  変わってないな。

  何て思いながら、その光景を見ていた。






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