おやじ猫を拾う

kony

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二人の始まり

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今日、土曜日はお客様から修理を依頼された革の鞄を届ける日だ。この鞄は、昭和から令和まで時代を跨いできたレトロな逸品。持ち込まれた時は色褪せや擦り傷が目立ち、痛々しい状態だったが、色を塗り直し、補修して現代風にリメイクした。依頼主は30代のサラリーマンで、聞けばお祖父さんが使っていたものだという。今のビンテージブームの中、この鞄は新鮮に映ったのだろう。生まれ変わった鞄を見たらきっと喜んでくれると思い、写真を撮って依頼主に送った。

ご帰宅が20時頃とのことで、ちょうどいい時間だ。今日は辰雄のバーに行くつもりだったので、身支度をしていると、例の鞄の依頼主が来店された。「少々お待ちください」と伝え、工房から鞄を取ってきて見せると、目を輝かせて「いいですね!」と気に入ってくれた様子。金具はすべてシルバーに替え、内張りはシルクで張り替えたことを一通り説明すると、快く代金の6万円を支払ってくれた。嬉しそうなお客様を見送り、戸締りを済ませ、片道20分の散歩がてらバーに向かった。

歩きながら、親父のことを思い出した。いつもスーツにボルサリーノの帽子をかぶり、ステッキと鞄を持って歩いていた。そんなことを考えているうちにバーに到着。ドアを開けると、ケン君が「おはよう、ヒロさん!」とニコッと出迎えてくれた。どうやら今日の俺は一番乗りらしい。二人で乾杯し、たわいもない最近の出来事を話していた。実は、ケン君と二人きりだと少し緊張する。お気に入りの子と二人だと、ついドキドキしてしまう。早く辰雄が来ないかな、なんて内心思っていた。

するとケン君が、「そういえば、昨日、大通りの信号のところでヒロさんを見かけたんですけど、バレました?」とクスッと笑う。「ヒロさんかなと思ったけど、迷惑かなと近寄らなかったんです。楽しそうでしたね。あそこ何なんですか?」と聞かれ、一瞬、正直に答えようか迷った。「あそこは家だよ。他の人には内緒な」と釘を刺すと、ケン君は興味津々。「仕事は何してるんですか?」と聞くので、「何でも屋みたいなもんだよ」と軽く答えた。「今度、お邪魔してもいいですか?」とケン君から意外な提案。「いつでも歓迎だよ、遊びにおいで」と返すと、「嬉しい、行きますね!」と笑顔で言われた。

この街の住人に自宅を教えたことはないが、ケン君が来てくれたら嬉しい気持ちはあった。だが、土曜の夜、いや、日曜の1時になっても人が少ない。給料日前だからだろうか。ケン君に辰雄からのLINEが来たようだ。客の入りが気になったのだろう。俺だけと分かると、「店閉めてもいいよ」という内容らしい。辰雄の粋な計らいだ。俺にも辰雄からLINEが来て、「楽しんでw」と一言。俺は「w」とだけ返した。

「で、どうします? 辰雄ママから店閉めていいよって言われたんですよ」とケン君。どうしますって、俺の胸はドキドキだった。「俺が行く?」と小さな声で言うと、「どこへですか」と意地悪なことを言う小悪魔だ。意を決して「ラブホテルだよ」と言うと、「いいですよ」とニコッと笑う。でも、「ヒロさんの家に行ってみたいな」とも言われ、

「良いよ」と言いながらも、お風呂は洗ったかな、部屋は綺麗かなと自問していた。

そして二人で店を出ると、通りは人もまばらだった。「タクシー乗ろうか」と言うと、「歩こうよ、ヒロさん」とケン君。すると、俺の手を握ってきた。この小悪魔め、ニコニコだ。まだ深夜は涼しい。今宵も月が綺麗だ。

じゃれあいながら歩く20分の距離は、あっという間だった。

深夜2時を回った頃に家に着いた。帰り道のわずか20分で、どれだけ心を許してしまったのだろうか。

家の鍵の開け方まで教えてしまったのかもしれない。目が覚めた時には、すでに昼を回っていた。

二人で全裸でベッドにいるということは、一線を越えたんだろうな。

ケンの腕の中で寝ていたのは俺だった。ケンの腕に抱きしめられ、こうなった経緯を振り返ると、一線を越えた喜びと、ケンの心臓の音が聞こえるほどの近さで吐息を感じるだけで、俺は高ぶっていた。  

ケンの体の曲線は美しく、まさに「美」そのものだった。その若さゆえか、彼のそれは力強くそそり立ち、水滴のように先走りをこぼしていた。俺はその愛おしい肉体を優しく口に含み、愛撫した。

ケンはこの瞬間を待ち望んでいたかのように、俺の口の中で愛を放出した。俺はその愛液を全身で受け止め、再び二人で眠りについた。夕陽が差し掛かる頃に俺は目を覚ましたするとけケンは鼻歌まじりにフライパンを握ってこちらを向いてヒロさんおはようってニコっとされまるで夢の様な土日だった。

これが全ての始まりだった。まさか拾った猫に飼育されるなんて夢にも思わなかった

思えば、ケンの愛液には麻薬のような成分が含まれていたのではないか。

俺の尊厳やプライド、すべてをケンが奪い去っていくとは知らずに、甘くも鬼畜のような性欲のすべてが朝日とともに始まった。

愛なのか、性欲の発散なのか、今の二人にはわからなかった。

ただ身体を求め合う二人。しかし、求め合う二人には魔物のような一体感があることを、日々の生活の中で知ることになる。

「ツインレイン」という言葉の通り、ケンと俺は同じ思想を持ち、同じ性欲を感じる。

陰と陽、SとM、求める者と与える者の関係になっていた。
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