コハクチョウとおばあちゃんの真珠

魔茶来

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成人編

08.沙也加さん

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 結局朝まで『アルザス財団』を調査していた。

 なるほど裕也が働きたいというはずだ。

 絶滅危惧種の保護活動をしている団体である。

 ただしこの団体には国際的に保護活動をするために必須の力があった。
 それは国際的な組織や各国の政権への影響力である。

 もし研究員として従事できれば、研究者は各自の提案内容が承認を得られることで、その承認は派遣される各国の承認にもなる。
 つまり派遣国での研究所開設も可能だし、保護活動は派遣国の研究者からの支援も十分に得られる。

 資格としては研究対象に合わせた資格、私達なら獣医ということかな、
 それと3か国以上の言語能力、最後に1年以上の国際活動に従事した経験か……
 
(裕也そうなのね)
 私は、理解した、多分裕也が、私に『アルザス財団』の話が出来ない理由はこれだな……

 未だに海外に行くかどうかも決められていない。
 ハッキリ言って来年の春は無理だと決めつけていた。
 だから、そんな内容で裕也にもメールしてしまったと思う。

 裕也が海外に誘いにくくなって、何となく言い出し難くなったんだろう。

 私は私に問いかける。

「ねぇ私、私は何になりたいの?」

 答えはそんなに簡単には出る筈もない。

 私は、そのままインターネットでネットサーフィンを始めた。
 
 私は、沢山のコハクチョウの写真を見つけて眺めていた
 コハクチョウの写真の中にアメリカの女性研究者の写真があった。
 解説を読んでみる。
「アメリア・カルセドニー女史か」

 女性研究者と言うのが気になって、そのままアメリア女史の話を追い始めた。
 保護活動団体を作って、企業や国から寄付を集め、鳥を含む野生動物の保護活動をしているようだ。

 いろいろな情報を得ながら、気になる。
 そして追加の情報を見ながら、さらに気になる。
 最後には朝になったが、更なる情報を探し続け、最後には「会ってみたい」という要求が大きくなっていた。

 その日は寝不足でバイトに行く、山城さんが「顔が少し青いしクマが住んでいるよ」と言ったので急いで化粧を濃くした。

 その日バイト中に思いもかけない人から「サエラちゃん?」と声を掛けられた。

 最初(はて、誰だろう?)と思う、顔は見覚えがあるのに咄嗟に名前が出て来なかった。

 やがて、沙也加さんだと気が付いた、そうか「編集社のえらいさん」になったと聞いていたが、少し風格と言うか前の感じとは少し印象が違っていた。

「久しぶりです、沙也加さん!!」

「やっぱりそうね、サエラちゃんだ、大きくなったわね見違えたわ
 でも当たり前ね、あの時は小学生だったものね」

 沙也加さんは年相応に風格が出ているが、昔通りの人だった。
 沙也加さんと少し話をする。
「そっか、こっちの大学に来ていたのね、獣医か大変ね6年間だわね」
「ごめんなさい、お仕事中だったわね
 そうだ、もう直ぐお昼だから、そこの喫茶店で待っているからお昼休みになったら来て
 あれからどうなったのか聞かせてくれると雑誌のネタになるかも?だから頼むわ」

「はい!!、喜んで!!」と笑顔いっぱいに返事した。

 喫茶店に入ると手を振って席に導いてくれた。
 沙也加さんは、お昼を一緒に食べてくれて話を聞いてくれた。

「そうか、覚悟か、難しい課題ね」

 私は少し恥ずかしそうな表情になって……
「でも良かった、お父さんに言ってもらって、だって本当に覚悟も何も無かった……」

「今頃分かって来た、自分の未来を自分で決めなくてどうするのかって
 あの時も自分から勉強をすることで自分の欲する未来を得ようと頑張ったんだ
 決して受け身では無かった」

 沙也加さんは優しい顔で私に微笑むと後押しの言葉をくれる。
「そうね、なりたい未来があるなら、その未来に向けて進むべきね
 引き返すことや出来ないことを最初から考えていたら何も出来ないし
 そんな気持ちで始めたら中途半端に終わるわよ」

「つまり自分で決めて、その結果を受け止める『覚悟』があるということかな?」
「お父さんに覚悟が伝われば、サエラちゃんは真珠を手放さなくても、大丈夫だと思うわよ……」

 その言葉に私は少し安心した。
「ありがとう沙也加さん、そうね、そうよね……」

 沙也加さんもなんか嬉しそうな顔をしていた。 
「あの真珠は絶対に売らない方向で頑張ってね」

 ただ心配そうな顔をして、沙也加さんは最後にひとこと付け加えてくれた。
「もしどうしても真珠を売るというのなら私に連絡して頂戴、
 あの記事を書いてから数名の著名な人から貴方の支援がしたいというお手紙を頂いているのよ
 あの記事を見て真珠の意味や値打ちを知っている方々に買ってもらうから
 だから早まらないでね」

 昼食も終わり、沙也加さんと別れてバイトに戻った。
 なぜだろう、少し肩の荷が下りた気がする。

「どうしたの、なんかすっきりした顔をしているわね、顔でも洗ったの?」
 山城さんが茶化してきた。

「そうね、顔を洗って目が覚めた気分かな♪」
 そう答えると明るい気分で仕事に戻って行った。

 実は今日のバイトは時短にしていた。
 そうマエストロ教授の緩急室に行ってみようと思っているのだ。
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