女装禁止の国のダンス少年

魔茶来

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女装禁止の国

初めての舞踏会①

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 扉の前までくるとグラセル様が持っていたケースを開けてケースの中身を私の目の前に差し出してきた。
「これをフレメル様からファティス様にお渡しするようにと言われております」

 それは普通にダイアモンドのネックレスとイヤリングに見えたが少し違う。
 良く見ると光り方が違う。

 「もしかして、これっ!、『クレライトマジック・ダイアモンド』ですか?」

 ---

 その石は何時でも光り輝く、だが魔法でも何でもない原理は蛍光ペンと蓄光塗料と同じ。

 この世界ではダイアモンドの生成時に蓄光・蛍光を持つ不純物が混じった鉱石のことを言う。

 その石は光あるところで光を蓄積する。
 そして闇の中でその蓄積した光を放出する。

 そして光あるところでは蛍光を発する。

 蛍光、それは光の増幅。
 光の中にある見えない紫外線を反射するとき見える色で反射する。
 人の目には元は見えなかった色の分だけ光が多くなったように見えるのだ。

 明るいところではより明るく、光の無いところでも光る不思議な石。
 でも実はこの世界では原理が分からない「魔法の宝石」だった。

 付け加えるもないがとても高価な宝石だった。

 ---

 「その通りです、ファティス様にピッタリだとフレメル様からのプレゼントです」

 必死に両手を前に出し拒否する。

 「いやいやいや。。。プレゼントなんてトンでもありませんよ。そんな高価なものを貰う訳には行けません」

 「受け取ってもらえないと私が困りますので、一度受け取っていただいて、ファティス様がフレメル様にお返しください」

 そう言われると、断れなくなったのでフレメル様に直接返すつもりで受け取った。

 そのネックレスは「つけ襟ネックレス」だった。
 よく見ると、蛍光を発するときは緑色に近くなるが光が強い所では白く輝くように光る。
 本当に不思議な魔法の宝石だった。

 なんだかんだ言っても興味があるので、一度だけと言い訳しつつ。
 なにかを期待して着けて見た。

 無意識のうちに言葉が漏れる。
「ドレスにピッタリ」
 
「とてもお似合いです、フレメル様の見立ては素晴らしいです。
 きっとイヤリングも似合うとフレメル様がおっしゃっておりましたのでイヤリングもお付けください」

 あの少しの間に僕のことを良く見ていのだろう。

 女装禁止のこの国だから、男である僕は女性がやっているようにピアスの穴を開けているはづもない。
 フレメル様は一緒に入っている同型のピアスではなくイヤリングを進めてくれたらしい。

 化粧とイヤリングネックレスを追加装備した僕は完全な女性として戦闘態勢に入った。
 そのまま舞踏会場に入る。

 王城の舞踏会の会場は大きなホールになっていた。
 出入りも簡単に出来るように扉は前だけでなく前後左右にあり、それも各所に数か所あった。

 案内されるままに会場の横にある前方に当たるドアを開けた。
 開いた瞬間に演奏が大きく聞こえ、それだけで胸がいっぱいになった。

「こんなに近くでこの規模の演奏を聞けるなんて」

 そして、そこは夜なのに昼間のような明るさだった。

 だが驚くのは、すぐに曲の切れ目だったようで一瞬静かになるとその広間も少し暗くなった。

 天井の大きく多数並んだローソクやランプは天井の反射構造を変化させること明るさを変えられるようだ。
 演奏に合わせ明るくも出来るようだった。

 ドアを開けて入ると何人かがこちらを見ていたが、今は暗くなっているので気づく人も少ない。
 
「フレデール公爵令嬢様、あれグラセル様じゃありません?
 可愛い相手をお連れになったようですよ。
 でも何でしょうねあのドレス。
 ご覧になって下さい真っ黒ですわ。
 まるでカラスですわ。」
 
 フレデール公爵令嬢と取り巻きがファティスを見て何やら話を始めたようだった。
 だが直ぐにフレデール公爵令嬢があることに気が付いた。
 
「ちょっと、どういうことかしら?
 ミレーネよく見て頂戴、あれは『クレライトマジック・ダイアモンド』のネックレスじゃないの?」

 ミレーネも確かにそれが『クレライトマジック・ダイアモンド』に見えたが否定した。
「そんな馬鹿なことがあるはずありませんわ。
 あれは王室にしか許されていないものですよ」

「私だって着けたことがないのに・・・
 そう言えばフレネル様の到着が遅れているし・・・
 まさかフレネル様があの女に?」

 フレデール公爵令嬢の機嫌が悪くなっていることに気を遣うミレーネは適当な話で落ち着かせようとしていた。
「まさか、大丈夫ですよフレデール侯爵令嬢様。
 今日は特別な舞踏会です、フレデール公爵令嬢様とカリミール様以外の女性は主役にはなれません。
 きっとフレネル様は大事なお友達であるグラセル様にお貸しになったんですわ」

 フレデール公爵令嬢はは少しイライラしながら黒いドレスの少女を見ていた。
「あれはそんなことが許される宝石ではありませんわよ。
 あのカラスにそんな価値がありますの?
 それならそれで試してみましょうか・・・・」

 フレデール公爵令嬢はアルボワ大公の所に向かった。

 それを見たミレーネは驚いて追いつき引き留めた。
「あんな変態に近づくなんて何を考えているのですか?」


「何をおっしゃるのかしら、使える者は何でも使わないとね。
 あんな変態大公でも、こんな時は適任者なのよ」 

 アルボワ大公、この男は女性からは心底嫌われていた。
 それもそのはずだ、女性と見れば見境がない。
 そしてその節操のなさは大公でなければ牢屋に入っているだろうという程酷いものだった。

 この男にとって舞踏会は彼の狩場だった。
 ダンスに誘った女性にワザと粗相をさせるとその権威でその女性もしくは関連する女性を自由にしていた。 

「アルボワ様、お久しぶりです」

「おお、これは珍しいなフレデール侯爵嬢様
 どういう風の吹き回しだね?」

「今日の創作ダンスの審査員だとお聞きいたしましたから、挨拶に来ましたの」

「既に君の両親から沢山の・・・いや、挨拶は、たんと頂いたからね。
 フレデール様は安心してダンスをすればいい」

「それより、あちらのグラセル様の横にいる黒いドレスのお方はご存じですか?
 ご存じでしたら教えて頂こうかと思いましてね」

「おおっ、なんというボリュームの胸・・・??、いやお美しい女性だ。
 一度ダンスに誘わせていただこうかな・・
 何かわかったらお教えするよ。
 すまない、フレデール様、これで失礼いたします」

 アルボワ大公はいそいそと席を立ってグラセル達が座っている方向に向かって行った。

 フレデール公爵令嬢は笑いがこみあげて来た。
「ふふふふふっ、変態に無茶苦茶にされれば良いのよカラスさん」

 だがその計画もアルボワ大公がグラセルに遮られる様子を見て変更をしなければならなかった。
 そこで、フレデール公爵令嬢は従者のクレマチスを呼んだ。

「グラセル様に私が急用があると直ぐに呼んできてくれるかしら」
 クレマチスは直ぐにグラセルの所に向かった。

 ミレーネは心配そうにフレデール公爵令嬢に話しかけた。
「大丈夫なんですか?
 もし本当にフレネル様がご招待したのであればフレネル様がお怒りになりませんか?」

「こんな大事な日に主役がまだ現れなくて、あんな女を連れてきて。
 こちらがお怒りですわ・・・
 それに招待したのであれば本人が招待されたひとを守るのが当たり前なんですわ。
 なぜ今は友達のグラセルの任せるのかしらね」

 グラセルはクレマチスからの伝言を受け、急いでフレデール公爵令嬢の所に来た。
 公爵令嬢の言いつけであるため断ることが出来なかった。

「申し訳ありません。
 急ぎでなければ・・・」

 グラセルがそう言おうとしたが、フレデール公爵令嬢は少し怒ったような声で恫喝した。

「あのひとはフレネル様と、どういう関係の人なのからかしらね。
 グラセル様は、ご存じなのでございましょう!!
 さあグラセル様、白状しておしまいなさいませ!!」

「いえ、彼女は先ほど知り合ったばかりで・・・・」

「そんな馬鹿なことがあるはずありません。
 では何ですかあのクレライトマジック・ダイアモンドのネックレスは!!」

「いや、それは・・・」

 フレデール公爵令嬢はグラセルが怯んでいる間にアルボワ大公がファティス様に話しかけるのを確認していた。
 やがて舞台の真ん中にファティス嬢を連れ出す様子を確認すると、グラセルに話しかけた。

「あら、あのお方はアルボワ大公とダンスをなさるようですわ。
 大丈夫でしょうか?」

 そしてまるで知らぬことと言う顔をして舞台を見ていた。

「ファティス様・・・」
 グラセルは声を掛けたが曲の演奏が始まってしまった。 

 ダンスに誘ってくれたアルボワ大公という男のいやらしい視線を胸に感じながら・・・

 それでも僕は感激していた。

 僕は舞台の真ん中に立っていた。
 ダンスの相手は大公と言っていた、たぶん偉い人なんだろう。
 この人の指示で人払いをされ僕達だけが舞台の真ん中に立っている。
 そうだ、それは僕たちがまるでそこの舞踏会の主役であるがごとく立っていた。

 それだけで十分に満足だった。

 そして曲が始まる。

 曲名「ランドリング」

 速いテンポの難しいステップが多いダンスだが問題はない。

 僕はドレスの袖を捻じると色を変える。
 曲のイメージに合わせてドレスは薄黄色に色が変わった。

 ドレスの色が変わることで多くの観客から驚きの声が出ていた。

 生演奏が流れる中で、僕はその曲をいっぱい身に受けた。
 そして自然と体が曲に合わせて踊り出した。

 主役が来なければ始まらない舞踏会。

 今は僕が主役だ。

 今僕が主役の舞踏会の本番の幕が上がった。
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