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七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ
はじめての狩りは楽しいらしいですよ
しおりを挟む俺達は鍋などを片付けたあと、ジェスチャーでコミュニケーションを取りながら、三つ目のクマを探して歩いてる。
三つ目の熊の魔物は、トリオプス、もしくはトリオプスベアと呼んでいるらしい。まあ、見たまんまってことだ。
俺がトリオプスベアと言うと、エウリュアは頷いて正しく発音できたか教えてくれる。文法まではわからないが、単語だけでもわかると違う。いくつか話しているうちに、簡単な会話ができるようになってきた……気がする。
「ノゾム、戦う、●□?」と、言ったあとエウリュアは首をかしげる。
「●□」はなぜって感じかな?なんで俺がトリオプスベアと戦うか聞きたいんだろう。まぁ、エウリュアが泣いているのをみて可哀想と思ったから……、なんて恥ずかしくて言えないけどね。
他の言葉も思いつかないので、ニッコリ笑ってサムズアップする。エウリュアは訳がわからず、それでも気持ちは伝わったのか、つられてニッコリ笑ってくれた。んー!!いいね!いいね!可愛い女の子の笑顔ってさ!
そんなことを考えながらエウリュアを見つめていると、後ろでガサガサ音がする。すでに索敵は済んでいる為、落ち着いて――いや、俺はイライラして振り返る。
「うるせぇな! こっちは今、最高の時間を堪能してんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」
意味が通じると恥ずかしすぎる内容を叫んで威嚇すると、数頭のトリオプスベアが一瞬止まり身構えた。
「さぁ! ショーのはじまりだ!」
俺はこれから思いっきり戦えるができる喜びから、獰猛な笑みを浮かべる。それを見てしまったエウリュアが恐怖でヒッと小さな悲鳴をあげた。戦うときは性格が変わる……そうじゃなきゃ命のやり取りなんてやってられない。
「グァオ!」
「まずは一匹目!」
一番近かった、体長二メートルほどのトリオプスベアが立ち上がり、大きく右前足を振り下ろす。俺はステップを踏んで、腕の内側に入り込むと、右手を口の中に突っ込み舌をつかんで思いっきり引っ張った。ぶちぶちと音を立てて舌がちぎれる。ベアハッグするつもりだったトリオプスベアが痛みで四つん這いに戻る。右手と入れ替えになるように、三番目の瞳に左手の抜き手を突っ込んでほじくり出すと、そのまま眼孔で拳を握り力を込める。ボンッとトリオプスベアの頭から音がして、力が抜けていくのがわかる。中国拳法でいう発勁のようなものだ。もちろん、親父直伝家の技だ。
手を引き抜いて、血と脳漿が混じった液体まみれの目を見つめる。良かった潰れていない。結構、硬いらしい。それから、目視で他のトリオプスベアを数える。気配だけだと見逃しがあるかもしれないからな。ひい、ふう、みぃ……後三匹か。お?こいつら、それなりに知能あるんだな。――ちゃん怯えてやがる。
ビビるクマに気をよくした俺は、また獰猛な……狼みたいに口を釣り上げて笑う。いけねえなぁ……、これじゃ、【微笑みのパンドラ】の微笑みみたいじゃねぇか。
俺の口は、耳まで裂けたような――もちろん錯覚だが――三日月型の笑みをつくっていた。トリオプスベア達が逃げ出そうと踵を返す。
「逃さねぇよ!!!!」
笑いながら近くの枝をへし折ると、真ん中のトリオプスベアへやり投げのように投擲する。大して鋭くもないただの木の枝が、トリオプスベアの後頭部から綺麗に三つ目の瞳を押し出して貫通する。よかった。瞳は潰れていないみたいだ。
「エウリュア、左のは頼んだ!」
枝を投げた勢いのまま駆け出して右のトリオプスベアの背に飛び乗り、ジェスチャーも交えて残った一匹をエウリュアに頼む。――わかってくれたのか、頷いてくれてる。かわいいなぁ。
エウリュアが剣を抜き、刃に手を当てて呪文を唱えつつ左へ走る。トリオプスベアのさらに左に回り込むように駆ける。
手が切っ先まで滑り刀身が青く輝き、横に一線。また一切のブレのない太刀筋がトリオプスベアの左前足を切り飛ばす。
「おぉ、すっげぇ痛そう。」
俺は俺のトリオプスベアの背にのり、両足で首をはさみながら、両手でトリオプスベアの後頭部を殴りながら、エウリュアの戦いを見ている。
エウリュアの方のトリオプスベアは、左前足を失ってバランスを崩し、頭から転がって仰向けになっていた。
エウリュアはその腹に飛び降り、落ちる勢いのまま喉元に剣を突き刺す。どうやらしっかり息の根を止めたみたいだ。どかどか殴り続けていたこっちのトリオプスベアも、徐々に力をなくしてその場に気絶した。
エウリュアと俺は、今回の瞳十二個、全部回収した。最初の二個と合わせて十四個。
俺の必死のお願いで、熊肉とついでに熊皮も手に入れた。鑑定眼で見たら極上の味とか書いてあるんだもの。皮はエウリュアが欲しがっていたので渡した後のあまりだ。全部箱にしまう。便利だな箱。
エウリュアはそれを見てちょっとびっくりしていたが、すぐに落ち着いた。そんなに珍しいものではないのかも。ちょっと残念。
食えない内蔵は悩んでいたらエウリュアが燃やしてくれた。
一通り終わって空をみると、ちょうど太陽がのぼりはじめたところだった。
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