箱の中身は最後の希望らしいですよ

いのうえもろ

文字の大きさ
10 / 48
七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ

はじまりの街は色んな意味で賑やからしいですよ1

しおりを挟む
 エウリュアと一緒にプロタトスの街まできた。辺境の街と言うが、かなり大きくて活気がある。
 相変わらず言葉はわからないが、終始エウリュアがにこにこしてくれているので、道中はとても楽しいものだった。途中二回ほど野宿して、美味しい熊鍋を振る舞う。ここでも香草と辛みのある草が役に立ったので、目に見える範囲全部を取り尽くす勢いで採取していたらエウリュアに怒られた。――何故だ。
 そんなことを考えながら街の門まで進むと、門の兵士らしき人物に止められ何かを出すよう手をだされる。そっと、手を乗せてワンと鳴いてみる。

「●△■●●!」

 あ、やっぱり違うのね。言葉がわからないと不便だな。
 エウリュアがその様子を見てちょっと考えると、兵士にコインを何枚か渡していた。
 兵士とエウリュアは顔見知りらしく、兵士は頭をボリボリかきながらも俺を通してくれた。エウリュアに子供のように手を引かれて門を通り抜けるのは、ちょっと恥ずかしかった。
 そのまま、エウリュアと手を繋ぎなから歩いていくと大きな建物にたどり着く。ずんずんと建物の中にはいるエウリュアに引っ張られる俺を、たくさんの男たちが凝視してきた。腰辺りのベルトや手元、足元には、短剣から片手剣、長大な斧や槍が輝いてる。
 おいおい、こんなところで刃物出すとか、どんだけエウリュア人気者だよ?見ているのは男ばっかりだ。そして、俺はエウリュアと手をつないでいたんだ。鈍感バカ以外はすぐ気付く。
 ちらほらいるおねーちゃんたちは、心配した顔でオロオロしてたり、ヤニヤしながら頬杖ついてたりしているが助ける様子は――一切ない。あー、女って怖いね。
 エウリュアに引っ張られ、後ろ――エウリュアの向いてる受付?の方向に振り返るとナイフが飛んできた。何かの警告の意味だったのか俺にあたらない軌道だったが、わざわざ手を伸ばして空中で掴み――ポケットにしまう。ナイフゲットラッキー!

「■●▼▽▼▽▼▽▼▽ー!!!」

 言葉がわからなくてもこれはわかる。殺気と怒号。盛大なブーイング。同級生のふにゃけた顔が脳裏に浮かぶ。冒険者ギルドで絡まれるのは異世界転移のテンプレだったっけ。
 脳みそにアドレナリンが溢れてくるのがわかる。エウリュアもその前に座っている受付っぽいひょろい男も、状況に気付いたが青くなっているだけだ。俺はもう一度男どもの方へ振り向き、拳をつくって指をボキボキさせながらゆっくりとあるいていく。
 その肩を大きな手で掴まれた。俺はかなり驚いたよ、全く気配を感じなかったんだから。

「○□△△△!」

 静まれ――かな? 怒号をかき消すようなひと声で殺気まで霧散していく。振り返ろうにも肩に置かれた手が身動きをさせてくれない。ただし、殺気がないのもわかっているので、俺も変に抵抗しない。
 エウリュアと何やら野太い声の女が二言三言話すと手が離された。振り向くと――さっきからくるくる回ってるな俺――俺の眼の前にごっついおっぱいがあった。肩幅は広く身長は――俺よりも頭ひとつ大きい。その顔は思ったより――いや、全然ゴツさなんてなく、優しそうな目で笑っていた。はっきり言って超がつくほどの美人だ。光沢のあるブルーの髪と驚くほどの白い牙が輝いている。
 俺が惚けていると、エウリュアが俺の背中を押して、ギルドの奥にある部屋の中へと連れて行く。その様子を見てまた殺気立つ男共と、ガッハッハと豪快に笑い出すごつい美人。
 俺達が部屋の中に入ると、美人は書類が山になった事務所机に座った。俺達は机の前にある長椅子に座る。俺達に美人が何やら訪ねてくるが、当然、俺には全くわからない。
 エウリュアが事情を――多分、話してくれてると思う。美人が机の引き出しをごそごそ漁ると、一抱えもありそうな巻き貝を机の上に置く。さほど厚みのない引き出しからでてくるということは、俺の箱と同じような機能をもっているらしい。

「これで言葉がわかるでしょ。私は冒険者ギルドのマスターをやっている、カサンドラってものだ」

「うぉ、言葉がわかる! あ、いや、失礼しました。俺は時逆希望です。はじめまして」

 俺は驚いて思わず叫んでしまう……が、失礼だったことを思い出し、頑張って敬語をつかう。完璧じゃないのは許して欲しい。

「おや? ホールの様子と違って意外と紳士じゃないか」

「あはは、そうでもないですよ」

 殺気を受けるとアドレナリンが出て性格がかわる――なんて言えるわけもなく、ここは笑ってお茶を濁す。

「どうやら彼は落人おちうどのようなんです。身分証もないので冒険者登録をしようかと思って連れてきました」

 エウリュアの唇と聞こえている言葉が噛み合わない以上、落人ってのはこの巻き貝が翻訳した言葉らしい。

「なるほど、言葉が通じないのもそのせいか」

 納得したようなカサンドラと、俺のためにわざわざ連れてきてくれたエウリュアを交互に見渡し、俺は黙っていられずに聞いてみた。

落人おちうどってのはなんなんだ?……です?」

「言葉は楽にしていいよ。あたいもかしこまった言葉はなれないしね。……さて、落人おちうどのことだけど、まずはどこから話していこうか」

 カサンドラは俺にわかるようできるだけ噛み砕いて話してくれた。
 この世界には時折、こことは違う世界からやってきたとしか思えない知識、容貌の人たちが現れるそうだ。
 最初に現れた落人おちうどは雲ひとつない青空から落ちてきたそうだ。その落人おちうどは魔王を倒し世界を救った勇者となった。以来、違う世界の人間を、落ちてきた人――落人おちうどと呼んでいるそうだ。ここ数十年現れなかったらしいけど、今でも何人かはこの世界で生きているそうだ。
 落人は発見された地域で扱いが変わるそうだ。森に落ちて国王まで成り上がるものもいれば、国に使われて一生を過ごすものもいる。落ちた場所が悪すぎて世界を憎み、魔王に成り果てた者もいるらしい。
 ここ、冒険者ギルドで落人おちうどを保護した場合は、身分証をあたえできるだけ自由に生きれるよう手助けすることになっているらしい。
「というわけで、早速身分証を作ろうと思うがどうだい?」
 なるほど、身分証を作るかどうかも俺の意志に合わせてくれるのか。本気で自由にしていいみたいだな。

「お手数かけますが、よろしくお願いします」

 俺はできるだけ感謝を込めて返事をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜

自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...