箱の中身は最後の希望らしいですよ

いのうえもろ

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七つの厄災【悲哀編】:悲しみは積み重なるものらしいですよ

はじまりの街は色んな意味で賑やからしいですよ2

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「お手数かけますが、よろしくお願いします」

「あぁ、いいってことよ! 落人を保護できたってことであたいにも泊がつく」

 頭をさげた俺にそう返し、綺麗な顔で豪快に笑うギルドマスター。机の上のアーチのついた巻き貝にひと声かけると、引き出しをゴソゴソして一枚の黄ばんだ紙を取り出す。

「えーっと、多分文字はかけないよね。口頭でいいから質問に答えてくれるかい?」

 そう言って、カサンドラがいくつか質問しながら書類の欄を埋めていく。
 この世界ではファミリーネームが後にくるので、名前欄をノゾム=トキサカとした。特技の欄は、エウリュアに見られた体術と一般的な感じで剣と回答。他の弓や槍については答えない。手の内を全部をさらすほど馬鹿じゃない。

「失礼します」

 ひと声あってドアが開き、先程のひょろい男性が重箱みたいな箱を大事そうに抱えてきた。蓋をあけるといくつか道具らしいものがはいっている。手慣れた感じで机の空いているところに広げ、準備ができると一歩下がる。

「ありがとう、クリス。あとはあたいがやるから下がっていいよ」

 クリスと呼ばれた男は一礼すると、俺の顔をまじまじとみつめ――ビビってる?―― ドアの向こうに消えてった。

「この板のくぼんだところに指を乗せてくれるかい」

 見ると黒い石版の上に先程の書類をのせてある。手前に指の形に少し凹んだ部分があり、俺が指を乗せると書類のステータス欄が埋まっていく。ゲームみたいだなと思ったのもつかの間、書類がドンドン縮んでいき、カードサイズのプレートになった。表面には精巧な俺の顔の絵と名前、一八という数字が書かれている。

「お、ちゃんとできあがったようだね。それがあんたのギルドカードだよ」

「へぇ、まだ一八レベルなんだ。あんなに強いのに……」

 カサンドラの説明を受けていると、エウリュアが俺のギルドカードを覗き込んでいう。

「そういうエウリュアはいくつなんだ? 基準がわからん」

「私は三五レベルだよ。年齢の割には強いほうかな」

「エウリュアはかなり強いよ。なんてったって英雄の三姉妹――っと今のあんたにはちょっとつらい通り名だったね。すまない」

眉を寄せ困った顔をするエウリュアに謝るカサンドラ。詳しく聞いていいのか戸惑う俺が二人の顔を見比べているとカサンドラが答えてくれた。

「あたいからは言えないよ。聞きたかったら、エウリュア本人に聞いておくれ。さて、用事はこれでおしまいかい?」

「あ、トリオプスベアの皮があるので買って欲しいんだけど」

「了解、倉庫の方に人をやっておくからそこで聞いておくれ」

 カサンドラはアーチのついた巻き貝に一言二言話すと、エウリュアに倉庫に行くよう促す。俺達はカサンドラに礼をいい、またエウリュアに手をひかれて部屋を後にする。
 倉庫はギルドの裏手にあるみたいで、担当の男が待っていた。エウリュアが熊の皮を取り出して、担当の男となにか話している――が全くわからない。あの魔道具どこかで買えないのかな。持ち運んで使うにしてはちょっとでかいけど。
 ちょっと悩んでいるような顔でエウリュアがちらりちらりとこちらを向く――そして目をそらす。その様子から熊の皮がもっと必要なのかもしれないと、箱から取り出してエウリュアに渡してみる。箱にしまえる俺が持てる量は、エウリュアの二倍から三倍あるはずだ。
 なぜわかったのか不思議そうな顔をするエウリュアを見て、気にすんなと俺は笑う。担当の男もびっくりしたようだが、気を取り直してエウリュアと交渉を再開した。どうやら無事に納得できる金額になったみたいだ。
 俺も担当者に礼を言うと――言葉がわからなくても気持ちが大事だろ? ――エウリュアと冒険者ギルドをでる。ギルドの外には男共が待っていた――が、エウリュアがひと睨みと全員大人しくなった。

 エウリュアに手をひかれて連れて行かれた次の店は、薬臭い刺激臭のするところだった。店には長身の女性が座っており、挨拶もそこそこに、エウリュアからトリオプスベアの瞳を受け取っていた。二人が二、三言葉を交わすとすぐ店をでた。なんだかエウリュアの顔が赤くなってる。
 エウリュアに連れられて大通りに戻ると、今度はいろいろな道具を売っている店に連れて行ってくれた。店に入ってすぐに、戸棚にあった小さな巻き貝を買って俺に手渡してきた。顔をみるとエウリュアは耳を指差す。どうやら耳に差し込んで使うらしい。

「どう? これでまた話せるよね?」

「おぉ。また意味がわかるようになった!」

 耳に巻き貝を突っ込むと、エウリュアが声をかけてきた。俺のためにわざわざ買ってくれたのかも。

「ありがとう、エウリュア!」

「お礼はいいわよ。だってあなたのお金で買ったんだもの」

「どゆこと?」

 意味がわからず問い直すと、先程の倉庫で売った熊の皮の代金で買ったとのこと。丁度、商業ギルドが丈夫な毛皮をまとめて欲しがっていたところに、刀傷のない俺の狩った毛皮はなかなかの金額になったそうだ。全部、頭だけをふっとばしたからな。
 俺はジャラジャラと金のはいった袋をエウリュアから受け取った。

「あなたのおかげで、傷の多かった私の毛皮もまとめて買い取ってもらえたの。こっちこそありがとうだわ」

「なるほど。――どういたしまして」

 エウリュアが手を差し出して、お互い得だったと握手する。それから、エウリュアは真剣な顔つきに戻り、俺に提案してきた。

「それでね、ちょっと言いづらいんだけど……、そのお金貸してくれない?」
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