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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
尊大潔癖
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「さぁて、どうしようか」
あの後、俺達は城に行ってエイレーネに面会を求めた。しかし、団長は忙しいから取り次ぐことはできないと、門兵に追い返されてしまった。まぁ、当たり前だよな。そんな簡単に軍のトップに面会できたら防衛上問題だろう。
エウリュアとメディは騎士団長がどんな人物か街で聞き込みをしてくる、とか言って商店街に向かっていった。母親が軟禁されているってのにたいした肝っ玉だ。――いや、あの伝言の力か。
デルフィニアのことが気がかりな俺は、一人になってこれからのことを考えていた。俺には魔法に対する術がない。
一人、悶々と悩みながら宿に向かって歩いていると、道の端に女の子が倒れていた。それなりに人が歩く通りなのに、誰も声を掛けようとしない。
「――おい、大丈夫か?」
「腹が……減った……」
俺は近くの喫茶店に入って、その女の子に食事を奢っているところだ。
「次はオレンジタルトにマーマレードケーキとクリームソーダ! あと、苺のショートケーキを頼む!」
「まだ食うのか? で、名前は? 家はどこだ?」
「私は迷子ではない。空腹で動けなくなっていただけだ。――だが、馳走になった」
届いたケーキを一気に口の中に押し込むと、女の子が椅子から立ち上がった。
「礼をしよう。私の名はエイレーネ。この国の騎士団で団長を努めている故、ある程度の願いは叶えられるぞ」
はぁ?なんだこりゃ。――ラノベでよくあるご都合主義って奴か? そんなことを考えながらふにゃけた顔の同級生を思い出した。
「今日、騎士団長にあったよ」
「「――えぇ?」」
俺の報告に驚く二人。正直、俺もまだ信じられない。
「明日、冒険者ギルドの訓練場で会うことになってる。で、――そっちはどうだった?」
俺は宿屋の食堂でエウリュア達と飯を食いながら今日あったことを説明した。
「えーと、王宮騎士団長エイレーネお姉ちゃんはメディより二歳上の一二歳」
「性格は誇り高く曲がったことが大嫌い。スキル剛力を使って巨大な斧で戦うそうよ」
「嘘も言わないし騙しもしない。――というかできないって感じだったな。ただし――」
「「「考えるのが苦手」」」
――やっぱり。これでどうすれっていうんだよ。モイラさん。
翌日、俺達は朝早くに冒険者ギルドへ来た。こんなことなら明日の何時頃か時間を決めておくんだった。
ギルドのドアを開けると、すでに食堂にエイレーネがいて飯を食っていた。
「遅かったな! 待ちくたびれたぞ!」
「エイレーネ――さん、一体いつから?」
「明日と言っとったろうが。新しく日がでたら明日であろう?」
エウリュアの質問に、当たり前とでも言うように答えるエイレーネ。
「はっ――筋金入りの愚直さだな」
呆れを通り越して信頼に値するほどの真っ直ぐさ。なんとなく、家の親父を思い出す。
「なぁ、エイレーネ。話したいことがある」
「わかっている。だが、その前に――勝負だ」
エイレーネが肉を俺に突きつけて言う。
「はぁ?」
「戦士の心は戦いの中に現れる。信用に値するか、まずは試させろ!」
全く――本当に尊敬するほど真っ直ぐだ。
訓練所は冒険者ギルドの隣に設けられていた。大きさはサッカーコートくらいか。土を叩いて固めた地面を石を積みあげた壁が囲んでいて――その上に何故か観客席がある。あとは訓練所なのでギルドマスターがいるのはわかる。だが、この観客はなんだ?
「また、エイレーネ様の試験ですか」
彼は王都のギルドマスターでアエティオス。柔らかい敬語口調だがごっついおっさんだ。
「またってことはよくあるの?」
「詳しくはエイレーネ様に聞いてください。私は口止めされています」
メディが聞くが、アエティオスが呆れ顔で答える。
「つまり、戦えってことか」
エイレーネが訓練所でウォーミングアップをはじめた。身長の三倍はありそうな斧を片手でブンブン振り回し、重そうな風切り音が端にいる俺のところまで聞こえてくる。ハルバードのような長柄の斧じゃない。手斧がそのまま大きくなったようなバランスの可怪しな武器だ。
「どうしたのだ? 怖気づいたか――青年」
「まさかっ!」
エイレーネのやっすい挑発に自然と笑みがでる。ふと、俺の顔を風が叩いたような気がする。殺気とは違う。戦いそのものを楽しむ本物の武人が持つという――覇気だ。しかも、とてつもない強さの。
「時逆 希望、推して参る!」
「かまわん! 来い!」
訓練場の壁際から一直線に走り寄り、真上から太刀を叩きつける。一応峰打ちだ。エイレーネが斧ではなく腰の剣でそれを防ぐ。――まだ本気は出さないってか?
「そんな舐めてると、本気になる前に終わっちまうぞ!」
袈裟、逆袈裟を防がせてから右薙。それを下から上に力づくで弾かれた。これがスキル剛力! 確かにとんでもない力だ。
弾かれた力に逆らわず、そのまま飛んで距離を取る。エイレーネが追撃してくる。袈裟、逆袈裟、そして右薙――俺と同じ連撃――だが、俺は同じように防ぐことはできない。スキルの有無――地力が違いすぎる。
俺はしゃがんで左足をのばし、太刀を逆さに掲げ、その影に隠れるように足を踏ん張る。馬上からの一撃を地上で受けるための構えだ。――ギンッと金属が擦り合う音が響き、エイレーネは自分の剣が防がれたことに驚いて――ニヤリと笑う。
「どうした? 防ぐだけか?」
「そんなわけっ! ねぇだろっ!」
右足に体重を移しながら立ち、弧を描くように逆さの太刀を振り抜く。さっきの構えで初擊を防ぎ、これで斬る。どうだ? 馬を断ち切る為の技がエイレーネの――剛力の剣を弾いく。
エイレーネの小さな体は剣を弾かれた勢いで飛んでいき、――空中でくるりとまわると器用に斧の柄に降りたった。
「面白い! それがお前の世界のスキルか! ならば私も本気を出すとしよう!」
エイレーネの手が斧の柄にかかる。巨大な斧が地響きをあげて引き抜かれ――投げつけて来やがった! 暴風のような音をさせて巨大な手斧が迫ってくる。
「くそったれぇ!」
俺は唐竹割りに太刀を振るう。手斧が俺の横をすり抜けて壁にぶつかる。――俺は、体から力がぬけるのを感じ、地面にへたりこんだ。
「迫りくる絶望に真っ向から立ち向かうか! その心意気や良し!」
そうか――これ試験だった。あー、死ぬかと思った。
あの後、俺達は城に行ってエイレーネに面会を求めた。しかし、団長は忙しいから取り次ぐことはできないと、門兵に追い返されてしまった。まぁ、当たり前だよな。そんな簡単に軍のトップに面会できたら防衛上問題だろう。
エウリュアとメディは騎士団長がどんな人物か街で聞き込みをしてくる、とか言って商店街に向かっていった。母親が軟禁されているってのにたいした肝っ玉だ。――いや、あの伝言の力か。
デルフィニアのことが気がかりな俺は、一人になってこれからのことを考えていた。俺には魔法に対する術がない。
一人、悶々と悩みながら宿に向かって歩いていると、道の端に女の子が倒れていた。それなりに人が歩く通りなのに、誰も声を掛けようとしない。
「――おい、大丈夫か?」
「腹が……減った……」
俺は近くの喫茶店に入って、その女の子に食事を奢っているところだ。
「次はオレンジタルトにマーマレードケーキとクリームソーダ! あと、苺のショートケーキを頼む!」
「まだ食うのか? で、名前は? 家はどこだ?」
「私は迷子ではない。空腹で動けなくなっていただけだ。――だが、馳走になった」
届いたケーキを一気に口の中に押し込むと、女の子が椅子から立ち上がった。
「礼をしよう。私の名はエイレーネ。この国の騎士団で団長を努めている故、ある程度の願いは叶えられるぞ」
はぁ?なんだこりゃ。――ラノベでよくあるご都合主義って奴か? そんなことを考えながらふにゃけた顔の同級生を思い出した。
「今日、騎士団長にあったよ」
「「――えぇ?」」
俺の報告に驚く二人。正直、俺もまだ信じられない。
「明日、冒険者ギルドの訓練場で会うことになってる。で、――そっちはどうだった?」
俺は宿屋の食堂でエウリュア達と飯を食いながら今日あったことを説明した。
「えーと、王宮騎士団長エイレーネお姉ちゃんはメディより二歳上の一二歳」
「性格は誇り高く曲がったことが大嫌い。スキル剛力を使って巨大な斧で戦うそうよ」
「嘘も言わないし騙しもしない。――というかできないって感じだったな。ただし――」
「「「考えるのが苦手」」」
――やっぱり。これでどうすれっていうんだよ。モイラさん。
翌日、俺達は朝早くに冒険者ギルドへ来た。こんなことなら明日の何時頃か時間を決めておくんだった。
ギルドのドアを開けると、すでに食堂にエイレーネがいて飯を食っていた。
「遅かったな! 待ちくたびれたぞ!」
「エイレーネ――さん、一体いつから?」
「明日と言っとったろうが。新しく日がでたら明日であろう?」
エウリュアの質問に、当たり前とでも言うように答えるエイレーネ。
「はっ――筋金入りの愚直さだな」
呆れを通り越して信頼に値するほどの真っ直ぐさ。なんとなく、家の親父を思い出す。
「なぁ、エイレーネ。話したいことがある」
「わかっている。だが、その前に――勝負だ」
エイレーネが肉を俺に突きつけて言う。
「はぁ?」
「戦士の心は戦いの中に現れる。信用に値するか、まずは試させろ!」
全く――本当に尊敬するほど真っ直ぐだ。
訓練所は冒険者ギルドの隣に設けられていた。大きさはサッカーコートくらいか。土を叩いて固めた地面を石を積みあげた壁が囲んでいて――その上に何故か観客席がある。あとは訓練所なのでギルドマスターがいるのはわかる。だが、この観客はなんだ?
「また、エイレーネ様の試験ですか」
彼は王都のギルドマスターでアエティオス。柔らかい敬語口調だがごっついおっさんだ。
「またってことはよくあるの?」
「詳しくはエイレーネ様に聞いてください。私は口止めされています」
メディが聞くが、アエティオスが呆れ顔で答える。
「つまり、戦えってことか」
エイレーネが訓練所でウォーミングアップをはじめた。身長の三倍はありそうな斧を片手でブンブン振り回し、重そうな風切り音が端にいる俺のところまで聞こえてくる。ハルバードのような長柄の斧じゃない。手斧がそのまま大きくなったようなバランスの可怪しな武器だ。
「どうしたのだ? 怖気づいたか――青年」
「まさかっ!」
エイレーネのやっすい挑発に自然と笑みがでる。ふと、俺の顔を風が叩いたような気がする。殺気とは違う。戦いそのものを楽しむ本物の武人が持つという――覇気だ。しかも、とてつもない強さの。
「時逆 希望、推して参る!」
「かまわん! 来い!」
訓練場の壁際から一直線に走り寄り、真上から太刀を叩きつける。一応峰打ちだ。エイレーネが斧ではなく腰の剣でそれを防ぐ。――まだ本気は出さないってか?
「そんな舐めてると、本気になる前に終わっちまうぞ!」
袈裟、逆袈裟を防がせてから右薙。それを下から上に力づくで弾かれた。これがスキル剛力! 確かにとんでもない力だ。
弾かれた力に逆らわず、そのまま飛んで距離を取る。エイレーネが追撃してくる。袈裟、逆袈裟、そして右薙――俺と同じ連撃――だが、俺は同じように防ぐことはできない。スキルの有無――地力が違いすぎる。
俺はしゃがんで左足をのばし、太刀を逆さに掲げ、その影に隠れるように足を踏ん張る。馬上からの一撃を地上で受けるための構えだ。――ギンッと金属が擦り合う音が響き、エイレーネは自分の剣が防がれたことに驚いて――ニヤリと笑う。
「どうした? 防ぐだけか?」
「そんなわけっ! ねぇだろっ!」
右足に体重を移しながら立ち、弧を描くように逆さの太刀を振り抜く。さっきの構えで初擊を防ぎ、これで斬る。どうだ? 馬を断ち切る為の技がエイレーネの――剛力の剣を弾いく。
エイレーネの小さな体は剣を弾かれた勢いで飛んでいき、――空中でくるりとまわると器用に斧の柄に降りたった。
「面白い! それがお前の世界のスキルか! ならば私も本気を出すとしよう!」
エイレーネの手が斧の柄にかかる。巨大な斧が地響きをあげて引き抜かれ――投げつけて来やがった! 暴風のような音をさせて巨大な手斧が迫ってくる。
「くそったれぇ!」
俺は唐竹割りに太刀を振るう。手斧が俺の横をすり抜けて壁にぶつかる。――俺は、体から力がぬけるのを感じ、地面にへたりこんだ。
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そうか――これ試験だった。あー、死ぬかと思った。
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