箱の中身は最後の希望らしいですよ

いのうえもろ

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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ

敵対表明

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「皆様どうでしょうか。モイラ様に古代魔術を私共、宮廷魔術師達に教えていただけるようご説得していただけましたか」

「モイラさんはもうとっくに教えてるってさ」

「ちょっとノゾム」

 あっけらかんと言う俺をエウリュアが止める。さすが<剣と魔法の保護者ツインズナニー>、俺の保護もしてくれるってか。

「さきほどは、お口添えありがとうございました。おかげさまで無事、母に会うこともできました」

 エウリュアが丁寧に頭をさげた。

「いえいえ、私はこの国に損がないよう振る舞ったまで。英雄のご息女である、貴方様が気になさることではございません」

「王様はあんたの言うことをずいぶん聞いてくれるっぽいな」

「ノゾム? あんたさっきから変よ。助けてもらってその言い草はないでしょ?」

 俺の剣呑な言い方をエウリュアがたしなめる。が、そんなこと知らん。こいつは敵だ。根拠は勘だ。

「おやおや――私はずいぶん嫌われてしまったようですね。何かお気に触るようなことでも?」

「あぁ、目が光るのが気に入らねぇ。目の光る人間っていうのは俺の世界にいなかったもんでな。ましてや目が光った後に、王様が意見を一八〇度を変えちまうとか異常としか思えねぇ」

「なるほど、見られていましたか。ではどうしましょう。戦いますか? ――ここで」

 ここで戦うのはまずい。モイラさん脱獄の手伝いとかでっち上げられたら言い返せねぇ。モイラさんも本当に監獄行きになっちまうかも知れねぇ。王様が言い成りなんだから、証拠さえでっち上げれば他の大臣などなんとでもできる。

「――やめとく。下手に暴れてモイラさんをしろって主張されても困るからな」

――そうだ、こいつは王様を言葉で操る魔法を使った。だが魔法の名前は唱えてない。古代魔術名前のない魔法を使ったってことだ。じゃあ、なんで使える古代魔術をモイラさんに習う必要がある?

「お前の目的は古代魔術なんかじゃない。モイラさんをここに留めておくこと。もしくは――処刑」

「ご明察。ですがまだ殺しませんし――殺せません。この人は私よりずぅっとお強い。なにより王にとって隣国の竜と並べる最後の希望ですから……」

 デルフィニアの目が怪しく光る。これは魔法じゃねぇ。何かを企んでいる奴特有の目の光だ。

「その竜は俺が倒したはずだ!」

「王は信じておりませぬ。ましてや竜が一匹のみとは誰が申し上げたのでしょう」

「てめぇ、また王様に吹き込んだなっ!」

 デルフィニアは口元をわずかに歪め、ふふふ、うふうふ、と嗤いやがった。

「早く、このことを誰かに知らせないと……」

 エウリュアが立ち上がる。が、俺達のことを信じて動いてくれそうな貴族なんて――悔しいがあの辺境伯くらいしかいない。それも今は遠く離れた辺境の街だ。

「無駄だよ、お姉ちゃん。こういう奴が全部話したんだ。準備万端、私達が言ったところで誰も信用してくれないってこと」

「そんな……!」

 ゆっくり立ち上がったメディの指摘にエウリュアが言葉を失う。悔しいがそのとおりだ。俺達には王城ここで戦うための#信用___力__#がない。メディの握りしめた手が震えている。
 デルフィニアはただ嗤ってこちらを見ている。暴れだすのを待っているんだろう。くそっ、モイラさんを連れ出すにはそれしかないか。

「大丈夫、彼女はまだ私に手を出せないわ。その間になんとかして助けてね。ノゾムさん」

 そう言ってモイラさんが、戦うつもりだった俺にウインクする。閉じたまぶたからハートマークが飛んできて俺の頭に当たって弾ける。全くなんでこんなときにこんなに魔法を――。

「エウリュア、メディ。母さんは大丈夫だからノゾムさんのことよろしくね」

 モイラさんの余裕の表情にデルフィニアが忌々しげに顔を歪める。実力差から殺せないってのは本当らしい。だからこそ処刑する口実が欲しいのか。――兵を使うために。
 エウリュアとメディが不安そうな顔でモイラさんを見つめている。

「誰か、落人様御一行がお帰りです。門までご案内してください」

 これ以上待っても暴れそうにないと判断したのか、デルフィニアが侍女を呼ぶ。

「なぁ、てめぇ――厄災か?」

「そうです、――と言ったら?」

 デルフィニアがニヤリと嗤う。敵対した以上、隠す気はサラサラ無いってことか。
 もう少し話したかったが、侍女がやって来たので我慢した。デルフィニアが先程とは違って優雅に一礼をする。

 侍女に案内されて門をでるとエウリュアとメディがうつむいてた。握りあった手がぷるぷると震えている。
 やっと母に会えたのに、その母を殺そうとしてる奴がいた。それなのに何もできずに母を置いて帰らなかければいけない。そりゃ、悔しいだろう。でも――。

「エウリュア、メディ、泣いている場合じゃないぞ。モイラさんから伝言を預かっている」

 できる限り明るい声を振り絞ってみた。彼女の笑顔の為なら慣れねぇこともするさ。

「え? いつの間に?」

「あ、あのハートマークの魔法! 伝言だったんだ!」

「そうだ、さすがメディ。エウリュア、絶対モイラさんを助け出すぞ!」

「――わかった!」

「――うん!絶対!」

 二人に笑顔が戻ってきた。よかった。モイラさんから頼まれたんだ。

『――エウリュアの笑顔を守ってね。困ったら王宮騎士団団長エイレーネに相談すること』
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