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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
死霊争葬
しおりを挟む「なぁ、こいつらに攻撃は効くのか?」
幽霊達の進行速度は遅く、ほんの少し相談する時間があった為、俺はエウリュア達に聞いてみた。
「ノゾムも太刀を抜いて! 魔法をかける! 光よ集いて刃となれ――ブーストエッジ」
エウリュアが駆け寄ってきて、俺の太刀にも魔法をかける。エウリュアの手が太刀をなぞり、刀身が青白い光に包まれる。
「ゴーストに物理攻撃はほぼ効果ないわ。魔法か魔力を持った武器じゃないと」
「浄化聖域 これで弱いゴーストは勝手に浄化するよ」
エウリュアがゴーストに向き直り、メディが広範囲浄化魔法を唱える。一定範囲の床がうっすら輝き、やってきた幽霊――ゴーストがそこに入ると、次々と消えていく。残ったのは力の強い奴ってことか。
「メディには近づけさせない!」
エウリュアがメディ周辺のゴーストを排除している。メディは魔法を維持しているせいか動けないようだ。
「エウリュア! メディは任せた!」
「任せて! ノゾム、ゴーストに触られたら駄目! 体力を奪われるわ!」
俺はゴーストの集団に突っ込んで行き片っ端からぶった斬る。ほとんどのゴーストはメディの魔法でダメージ受けているのか一撃で消えていく。
「ヤ…ミォォ……ツドェェ、マナ…バレットォォォ!」
「があぁぁぁ!!」
魔法使いのゴーストが魔法を撃ち出す。仄暗く光る球が弾丸のように飛んできて直撃してしまった。後で聞いたが、魔力を打ち出すだけの初歩の魔法らしい。そうじゃなかったら、後で聞くこともできなかったが……。
「くそっ!――たれぇ!」
気合で痛みを我慢して、距離を詰めようと走る――が、盗賊風のゴーストが俺の行く手を阻む。連携――しているのか? 盗賊ゴーストが数撃繰り出してくるとバックステップで距離をとった。直後に盗賊ゴーストの影から矢が飛び出してくる。ほぼ同時に三本。その向こうには弓射が次の矢をつがえて、俺が動くのを待っている。動いた先を射抜くつもりのようだ。
「いいようにされてっ……たまるかよっ!」
手首を返し太刀の重さで矢を落とす。すぐに太刀を中段に構え――刃に体を隠す。
「グッ……」
矢をつがえたまま、射つ先がわからず動きを止める弓射のゴースト。だが、この構成ならもう一人――前に出て戦う奴が必要なはず。
俺がバックテップで後ろに下がると、横から大きな斧が降ってくる。わかってやった訳じゃねぇ――運が良かったってだけだ。
「エウリュア、すまん! 連携のできる奴らがいるっ! 俺は動けねぇ!」
ゴースト戦士が斧を持ち上げ横に振る。距離がある。太刀を弾く気だ。甲高い金属音が鳴り響き太刀が弾き逸らされる。わかっていたところで、防げねぇ。太刀は俺を隠していたんだ。刃の影から出た俺に、間髪入れず矢が飛んでくる。狙いは正確――眉間!
太刀を腕力だけで引き戻す。腕の筋肉がメキメキと悲鳴をあげる。間に合え! 太刀に鏃が当り、再度金属音が響き――左耳をかすめて矢が飛び去る。
「ふぅ……」
命拾いした安堵から軽く息を吐く――フリ。襲って来るかと思ったが、奴らはゆっくり、こちらを伺いながら隊列を整えていた。ゴーストなのに慎重だな。いや、一度死んだゴーストだから、油断する感情なんか持ってないってことか。
「ノゾム、大丈夫? メディ、聖域を解いてこっちに! 弱いゴーストはもういないみたい。それにこいつらには意味ないわ」
「わかった!」
「助かった! 四対一じゃ分が悪い!」
彼女に助けられるとか、格好つかねぇ――なんて言ってる場合じゃねぇ。こうも巧く連携されたら手も足も足りねぇんだから。
「堅固! 肉体強化! 速度増加 お兄ちゃん行けぇ!」
メディから援護魔法を貰って走る。体が軽い! 肉体強化はそのまま筋力が、速度増加は筋力とは関係なく移動や攻撃速度が速くなる感じか。
最初は慣れない速度で動く体に戸惑ったが、体幹の筋力もあがっているようで、大きくバランスを崩すことはなさそうだ。飛んでくる矢も――捕まえられる。動体視力も上がっている。
まずは邪魔な弓を狙う――当然、戦士が間に割って入るしかない。盗賊はエウリュアが相手をしているし、魔法使いの攻撃は単純な魔力の塊なのでメディが撃ち落としている。あ、魔法使いがメディの魔法で吹っ飛んで消えた!
俺はしゃがんで足を踏ん張り、馬上の一撃すら受け流す構えで戦士の斧を逸らす――そのまま繋がる斬馬の一撃をハルバードに叩き込こんだ! 真っ二つになるハルバード。 突如、戦士が怨嗟の声をあげ消えていく。ハルバードも幽霊の一部――もしくは思いが残る大切な武器だったか――。
弓射が消えた戦士を貫くように、続けざまに矢を射る。手首を返して太刀を一回転。太刀の遠心力を利用して体を動かしもう一回転。それでも二本ほど矢が抜けてきた。魔法で強固になった鎧が弓を弾く。すげぇな魔法。さすが戦争のために産まれた技術。
そのまま、弓射の横を走り抜け、すり抜けざまに胴を撃つ。弓射は声もなく消えた。
「エウリュア!」
エウリュアの方をみると盗賊が両手に短剣を持ち手数で押している。手助けに入ろうとした瞬間――
「火よ集いて柱となれ……#__フレイムピアー__#!」
盗賊の真下の床が炎を噴き、盗賊の体を突き上げる。すでに振りかぶっていた剣が、盗賊の頭を二つに分ける。盗賊は意外と安らかな顔で、静かに消えていった。
「これで全部かメディ?」
「うん、集まっていた奴らは全部終わったみたいだよ」
「風よ留まりて音を遮れ……遮音。ここに留まっていると、新手がくるかも。急いで行こう!」
「今のは?」
「音を消す魔法よ。これで走っても大丈夫」
エウリュアの魔法で音を消し、俺達は、ネクロタフィオに降りる階段まで、一気に駆け抜けた。
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