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80:初めてのオークション

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 オークション当日

 ソラは神聖テディア皇国の都市へとやって来たソラ。メルの報告通り、午後から奴隷のオークションが開かれるからだ、しかもオークションは国の公認で主催され、午前中は、奴隷以外のオークションも行われるらしく、国内外からも沢山の金持ちや商人、その護衛であろう冒険者や傭兵達で町の中は賑わっている様子だった。会場は映画館の様な大きなホールになっていて、正面の舞台の様な場所に出品された商品、今回は奴隷達が連れて来られるのであろう。入場時に指定された席には椅子がある訳では無く、列を整える為の腰のあたりまでの高さの柵が有るのみで。因みに、ソラが指定された席は一般席で、中央よりやや右寄りの後ろで、先着順と言う訳では無く、ギルドランクや貴族かどうか等が関係しているのだろう…Sランクであるディアン達の席は、ほぼ中央、最前列でちゃんと椅子がある様だ…。ソラの周りの様子はと言うと、一般的な商人風の者や冒険者が多い様だ。

 皇国は、人の住む国では最北の地域に位置し、更に北は切り立った山脈等の未開の地なのだと言う、ほんの数年前にやっとその一部が開発されて鉱山が発見されたとかで、益々奴隷の需要が増えているそうだ。季節は夏の少し手前だが、町の通りを行き交う人々の大半は衣類を分厚く着込み、この場に居る市民や商人たちも、その多くが魔獣等の毛皮で出来たコートなどを身に纏っている。しかし、ここに来る途上で見かけた奴隷と思わしき者達は、思った通りボロ布を重ねただけの様な身なりで、今はまだ暖かい方だと聞いたが其れでも白い息を吐き震えながらも、忙しそうに仕事に従事していた。ついつい健気に働く奴隷の獣人の少年に手を貸そうとしたら後で主人に怒られるからと断られてしまった。本来は主人に断り無く人と話すのも禁止されているそうで、助けるつもりが迷惑を掛けてしまったので…元日本人であるソラにはまだまだショックで少し気持ちが落ち込んでしまった。とは言え今日は奴隷の購入にやって来たのだ、勿論其は人手不足を補う為の労働力に他ならないが、奴隷としてではなくキチンと雇用し本人が了承すれば村人として奴隷から解放するつもりなのだからと自分に言い聞かせながら、ソワソワしながら始まるのを待っていると舞台の壇上に司会進行らしき男が現れ早速、挨拶を始めた。

「御待たせ致しました皆様、本日はようこそいらっしゃいました!本日司会を勤めさせていただきます、わたくしブロイ、と申します!どうぞ最後までお付き合いいただき、お目当ての商品を是非、競り落としていただきたく思っております。どうやら本日の会場にはSランクの冒険者様までご来場下さったそうですので、どうぞお手柔らかにお願い致します!」

 ブロイと名乗った司会の男がそう言うと、客席がざわめき皆とある一点に注目している…其所は当然ディアンの座る席である、最前列の椅子のある席の中でも明らかに椅子が他の客より立派なものだ…注目されない方がおかしい、ソラは別行動にしてよかった~と若干胸を撫で下ろした。見渡すと周りでは、Sランクの冒険者を一目拝もうと身を乗り出して注意されるものや、羨望の眼差しを向ける者がちらほら…中には、何でこんな場所にSランクが…と、苛立ちや諦めの言葉を発する者まで居るようだ。ソラの右隣には、商人らしき風貌のおっさんと、反対側には二十代後半位の冒険者らしき男性で、前者は今回の商品は全て買い占められるのでは?と心配し何やらブツブツ言っている、後者の冒険者は、異様なほどハイテンションでディアン達を見つめている。司会のブロイは、オークションの説明を始めた様だ…

「其れでは皆様、今回のオークションについて初めての方もおられるでしょうから、簡単にルールを説明させて頂きます。まず、商品の紹介の後、此方から最低落札価格をご提示させていただきますので、御購入されたい方は、ご希望額のご提示と、その金額をお出しください。間違っても所持していない金額を提示はしないで下さい。御購入が確定致しましたら、その場で商品と交換いたしますので係りの者が金額を確認しますのでお預け下さい。あと、一つの商品に付き、お一人様三回まで参加可能で、幾ら高額であろうとこれは必ず守って頂き、参加の際はよく考えて慎重に行って下さい。因みに、御購入後に落札者との交渉につきましては、当方は一切関わりませんので、後はご自由にしていただいても構いませんが、オークション終了後に御願いします。なお、多数御購入されるお方は、本館の店舗に商品の一時保管室をご用意いたしますので、仰って下さい。以上で簡単なルール説明とさせて頂きます。ご質問は御座いませんか?」

 ソラは少し疑問に思った事があったが、舞台の少し手前に居た商人が同じ疑問を抱いたようで、

「すいません!宜しいでしょうか?」

「どうぞ、構いませんよ仰って下さい。」

 少しふっくりとした、身なりの良い商人風の男が立ち上がり、司会のブロイに問い掛けた。

「私は隣国の帝国よりやって参りました…商人をしております…私共商人としては……あ~…一人三回までと言うことですが…何故です?どうも納得いきません。金額が多ければ其れに越したことは無いはず、三回とは実に少ないのでは?」

「なるほど…しかし、既に知っておられる方も居られるとは思いますが…今回の商品は前年度の倍の50品ほど出品されています勿論、国中からの選りすぐりの品です。叩き売るつもりはありませんので従来の物より高く金額が設定されています、此方としては、その金額より多く落札していたたければ構いません。国より開催の期間が本日中と決められておりますし、商品の品質管理もタダでは御座いませんので、去年の倍の速さで進めさせていただきます。」
 
「う…な…なるほど…分かりました。」

「ご理解感謝いたします、他に質問は御座いませんか?…宜しいようですね?其れでは早速始めさせていただきます。まず始めの商品ですが…」

 ソラはへ~商人も大変だな~と思いながら念話でメルに確認をとった。

「メル、さっきの話しは本当か?」

〔ハイ!マスター間違いないようです。付け加えるなら期間が決められ始めたのは去年からの様ですね…期間内に終わらなかった場合、売れ残った商品は政府に安く買い叩かれてしまい、更には莫大な税金も取られてしまうそうです。〕

「へ~でもなんで其処までしてオークションをやるんだ?其れなら普通に売買すればいいんじゃないか?」

「其は、皇国独自の優遇処置のせいですね、この国では本来奴隷の需要は余り無かった様ですが…近年急激にその需要が増え、これは、5年程前に近くで鉱山が発見されたとかで、その働き手として連れて来られたのが広まり、元々北国の工業が盛んな国であったため、食料が高騰したためその対策として、奴隷商人や奴隷を購入した者達に食料等の維持費などに減税や給付金を出すなど優遇処置を行い、その代わり定期的にこの様なオークションを開かせ、上手く運営した物を更に手厚く厚遇するなどの支援する法律が出来たそうです。」

「其で、国公認と言う事か~」

「ハイ、商品の品質は国も認めていると言う事ですので、客も安心して商品を買えるので、購入者が増えますし。他国のように非公認ですと、粗悪…怪我や病気、反抗的だったりと言う場合が多い様です、今回のように、海外からも人が来れば外貨の獲得もできますし、ルールに反した者は厳しく罰則があるので、違法な業者が少ないようですので、現在では一般家庭にまで奴隷を持つものが増えているようです。」

「色々あるんだな~よく分からんけど…」

 ソラがメルに確認している間にも、オークションは順調に行われ、次々に落札されていく。そして、いよいよ落札予定であった奴隷が紹介される番となった。



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 読んで下さり有り難う御座います。次回も宜しければ暇潰しに読んでいってください。宜しくお願いします。
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