文芸部の小野塚眞緒は無口

風枝ちよ

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回復魔法のマオは無力

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マオは悩んでいた。
極東支部内の、〈依頼掲示板〉の前で、ひたすらに悩んでいた。

「マオ、珍しいな! トイレ掃除か?」

極東支部部長補佐に肩を叩かれる。

「依頼探してるんです」
「お前は出す方じゃないのかよ?」

シカトの方向で。
依頼掲示板には、依頼が書かれた紙が貼ってある。
一般市民からの依頼もあれば、国からの依頼も地味依頼もある。
自分が受けたい依頼があれば極東支部部長に話を通して、自分の印を依頼の紙に押すシステム。
えっと、勇者様の印は.….…。
ない。
そういえば勇者様の本名しらない。
受付で訊くと、【フジ】というらしい。
フジ、フジ、….…。
あった!
1つ、2つ。3つ?
数えると、全部で6個あった。それも、依頼ランクが高いものばかり。
勇者様は人間じゃないのかな。
勇者様の近くの依頼は….…。やっぱりモンスター討伐とか高ランクしかないのか。
ん。
この、印がまだついていない依頼は地味依頼かな?
これならいけそう。
極東支部部長に言い紙に印を押し、マオは極東支部を出る。
勇者様を探しに、マオは歩き出す。
依頼の内容を忘れてしまったので、極東支部でもう一度紙を見る。



ひたすらソメラプッペを摘む。
大袋3袋分って。依頼主が鬼畜すぎる。
でも、勇者様に会うためなら。
最早ストーカーじみてきていることに気づくマオ。
違う、これは。
たまたま偶然、運命の悪戯と歯車の噛み合わせが重なりに重なって、地球の自転と宇宙の膨張、原子レベルでの計算ミスが積もり積もって塵も積もれば山となる。
ここで勇者様と会ったとしても、それは物理法則がちょっと捻れただけ。
神様のケアレスミス。
とにかくマオは、ソメラプッペを摘み続ける。
まだ最初の袋の半分もいってない。泣きそう。
依頼放り出して帰ろうかな、とか思いつつ。

「伏せろ!」

伏せるってどうするんだっけ。まず手を地面につけて、
後ろから飛んできた物が、マオの頭上をかすめる。
細い髪の毛が数本、風に舞う。
え。

「すまない。怪我はないか?」

切れ長の目が、マオを覗く。

「勇者様?!」
「君は、この前の….…」

覚えててくれたんだ。

「そうか。君なら怪我しても治せるな」

まって何か違う展開。

「モンスターも君が治したしな」

痛烈な皮肉。
痛みは肉体的なまでに感じられる。

「それで? ここで何をしているんだ?」
「ソメラプッペの、採取を」
「馬鹿か」

勇者様って馬鹿とか普通に言っちゃう人なんだ。

「極東支部の裏庭にでも生えているだろう」
「そこがモンスターに荒らされたみたいなんです」
「ほう。誰かが回復させたモンスターに、な」

五月蝿い。

「でも、なんで知ってるんですか、裏庭のこと」
「私も昔は底辺冒険者でな、せこせこ地味依頼をこなしていたのだ。その合間に自己特訓をして、ここまで来たのだよ」

勇者様も、なのか。
じゃあマオも、今から特訓すれば勇者様みたいに、

「冗談だ」

勇者様みたいにはなれないらしい。

「昔からこうだ」

そうですか。
冗談とホントが逆な気がする。

「だが、何故チームで来ないのだ?」
「ソメラプッペを採るだけですから」
「モンスターに襲われたらどうするんだ」
「この辺モンスターいるんですか?」
「いるに決まっているだろう」

いるんだ。

「でも勇者様はチーム作らないんですか?」
「それについてなんだがな、」

お。
夢的な展開。

「一人だとどうも淋しいしな、」

淋しいし?

「何かこう….…物足りなくないか?」

マオに訊かれても。

「だから私もチームを作ろうと思っててな、何処かの回復屋に頼まれたら入れてやらないこともないが」

上から目線やめてください。
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