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5 ホテル到着、顔合わせ
オリオンにエスコートされてリムジンを降りると、そこは上質で都会的なホテルだった。アクセントに現代的な黒の装飾が配置されている。
「参りましょうか」
オリオンに続いてホテルの広いロビーへと入る。磨き上げられた黒いタイルと、巨大な植物のオブジェを横目に、ロビーの奥へと向かう。オリオンはフロントの男性と礼を交わしただけで、そのままエレベーターへと向かった。
「野々田様、緊張なさっていますか?」
「そう、ですね」
正直、自分の中にいろんな感情や思考が渦巻いていて、それが緊張なのか何なのか、自分でもよくわからなくなっていた。
「事前に何もお知らせしていないのですから、ご不安も当然です」
エレベーターが到着し、後から乗り込んだオリオンが扉を閉める。
「今から、お部屋にご案内いたします。部屋に、もう1人スタッフを待機させておりますので、これからのプランは、私とそのスタッフとが担当させていただきます」
担当。
言わずもがな、ここはホテルだ。
つまり、その……オレは今から……。
想像の光景が一瞬頭に過って、かぁっと顔に血がのぼった。オリオンは背中を向けていたから好都合だと思ったのに、急に振り返った。オレは慌ててオリオンを見上げる。
「野々田様……」
オレが何か言い訳を口にする間も無く、オリオンはそのまま大きな歩幅で距離を詰めてくる。腕を伸ばし、ピアニストのような指先でオレの顎の輪郭をなぞり、親指で唇をそっと愛撫した。オレは呆気にとられて目の前の顔を見る。
「オリオン……?」
深い碧の瞳がオレを見つめた。そんな風に彼に見つめられると、身動きが取れなくなることに気づく。
「我々におまかせください、野々田様。決して後悔はさせません」
「……はい」
射貫くような瞳から逃れられず、おずおずと答えてしまう。さっきから心拍数がとんでもないことになっていて、オレは目を回しそうだった。こういうのは本当に慣れてない。そんなオレの状況を知っているのかいないのか、オリオンはエレベーターの壁に手をつき、覆い被さるように鼻先を近づけた。
「野々田様」
「……は、い……?」
ふとした振動で唇が触れそうなほど、距離が近くなる。オリオンの指先がオレの耳に少し触れて、耳朶に触れる。そのまま顎の下を優しく撫でていく。そんな風に触れられて、見つめられても、オレは少しも嫌に感じなかった。むしろ、オリオンの整った唇をじっと見つめている自分に気づいてしまう。息もできずに固まっていると、チーンと無機質な音が響いた。オリオンは小さく声に出して笑い、体を離して、開いた扉に導くように手を引いた。
「おあずけですね。参りましょうか」
ふわふわした心地のまま扉を出る。手を引かれるままにホテルの廊下を進んだ。まだ胸の鼓動が治まらずにいる。
※ ※ ※
完全に熱も治まらないうちに、ホテルの一室に辿り着いた。扉の向こうで迎えたのは、華奢な印象の黒髪の青年だった。すでにバスローブを羽織っている。彼はわずかに微笑んで深々と頭を下げた。
「お待ちしておりました。野々田様。アッシュと申します」
「よろしくお願いします」
「お願いします。中へどうぞ」
扉を開いて促され、オリオンとともに部屋に入る。アッシュはオレのジャケットとネクタイを預かり、クローゼットに掛けてくれた。部屋は、出張のときに泊まるそれよりもずっと広い。部屋は暗く、間接照明が部屋の要所をわずかに照らしている。その奥の大きな窓には、星のように瞬く街の夜景が見えた。
「野々田様、よろしければバスルームをお使いください」
「ありがとう」
アッシュの言葉に、オレはここまで下着を濡らしたまま来てしまっていることを思い出す。一刻も早くシャワーを浴びてしまいたい。
すると今度は、オリオンがオレの手を引いた。彼もいつの間にかジャケットとネクタイを外している。
「野々田様、こちらへ」
部屋の扉が閉まりきる前にアッシュを振り向くと、軽く会釈して愛想よく手を振っていた。
「ごゆっくりどうぞ」
パタリとドアが閉まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※次はオリオン視点になります。
「参りましょうか」
オリオンに続いてホテルの広いロビーへと入る。磨き上げられた黒いタイルと、巨大な植物のオブジェを横目に、ロビーの奥へと向かう。オリオンはフロントの男性と礼を交わしただけで、そのままエレベーターへと向かった。
「野々田様、緊張なさっていますか?」
「そう、ですね」
正直、自分の中にいろんな感情や思考が渦巻いていて、それが緊張なのか何なのか、自分でもよくわからなくなっていた。
「事前に何もお知らせしていないのですから、ご不安も当然です」
エレベーターが到着し、後から乗り込んだオリオンが扉を閉める。
「今から、お部屋にご案内いたします。部屋に、もう1人スタッフを待機させておりますので、これからのプランは、私とそのスタッフとが担当させていただきます」
担当。
言わずもがな、ここはホテルだ。
つまり、その……オレは今から……。
想像の光景が一瞬頭に過って、かぁっと顔に血がのぼった。オリオンは背中を向けていたから好都合だと思ったのに、急に振り返った。オレは慌ててオリオンを見上げる。
「野々田様……」
オレが何か言い訳を口にする間も無く、オリオンはそのまま大きな歩幅で距離を詰めてくる。腕を伸ばし、ピアニストのような指先でオレの顎の輪郭をなぞり、親指で唇をそっと愛撫した。オレは呆気にとられて目の前の顔を見る。
「オリオン……?」
深い碧の瞳がオレを見つめた。そんな風に彼に見つめられると、身動きが取れなくなることに気づく。
「我々におまかせください、野々田様。決して後悔はさせません」
「……はい」
射貫くような瞳から逃れられず、おずおずと答えてしまう。さっきから心拍数がとんでもないことになっていて、オレは目を回しそうだった。こういうのは本当に慣れてない。そんなオレの状況を知っているのかいないのか、オリオンはエレベーターの壁に手をつき、覆い被さるように鼻先を近づけた。
「野々田様」
「……は、い……?」
ふとした振動で唇が触れそうなほど、距離が近くなる。オリオンの指先がオレの耳に少し触れて、耳朶に触れる。そのまま顎の下を優しく撫でていく。そんな風に触れられて、見つめられても、オレは少しも嫌に感じなかった。むしろ、オリオンの整った唇をじっと見つめている自分に気づいてしまう。息もできずに固まっていると、チーンと無機質な音が響いた。オリオンは小さく声に出して笑い、体を離して、開いた扉に導くように手を引いた。
「おあずけですね。参りましょうか」
ふわふわした心地のまま扉を出る。手を引かれるままにホテルの廊下を進んだ。まだ胸の鼓動が治まらずにいる。
※ ※ ※
完全に熱も治まらないうちに、ホテルの一室に辿り着いた。扉の向こうで迎えたのは、華奢な印象の黒髪の青年だった。すでにバスローブを羽織っている。彼はわずかに微笑んで深々と頭を下げた。
「お待ちしておりました。野々田様。アッシュと申します」
「よろしくお願いします」
「お願いします。中へどうぞ」
扉を開いて促され、オリオンとともに部屋に入る。アッシュはオレのジャケットとネクタイを預かり、クローゼットに掛けてくれた。部屋は、出張のときに泊まるそれよりもずっと広い。部屋は暗く、間接照明が部屋の要所をわずかに照らしている。その奥の大きな窓には、星のように瞬く街の夜景が見えた。
「野々田様、よろしければバスルームをお使いください」
「ありがとう」
アッシュの言葉に、オレはここまで下着を濡らしたまま来てしまっていることを思い出す。一刻も早くシャワーを浴びてしまいたい。
すると今度は、オリオンがオレの手を引いた。彼もいつの間にかジャケットとネクタイを外している。
「野々田様、こちらへ」
部屋の扉が閉まりきる前にアッシュを振り向くと、軽く会釈して愛想よく手を振っていた。
「ごゆっくりどうぞ」
パタリとドアが閉まった。
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※次はオリオン視点になります。
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