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第一章 おまけ

事情

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俺、草薙アギトは悩んでいた。
幼馴染のヒナといる時に溜まる、性欲の発散に。

俺とて男なのだと、ここ数日よく思う。
というのも、あの事件があってから数日ほど、ヒナの背中を洗っていたのだ。
なんで洗うのかというと、昔そんなことをよくやっていたからなのだが、まあそこの経緯はどうでもいい。
要は、昔やっていたことを今もう一回やってみようというノリだった。
単なるお遊び…………のはずだった。

あの一瞬までは。

「はあ……はあ……」

背中越しに見える幼馴染の白い肌は、まるで甘露の限りを尽くしたショートケーキのクリームみたいで、シャワーでなにもかも流しているはずなのに砂糖の香りが鼻腔をくすぐった。
触れればもちもちとした柔らかさで、思わずぎゅっと抱き締めたくなるほどだ。
白銀の髪はとても綺麗で、さらさらとしたそれは彼女をより女としての印象を強めていく。

そんな奴が、目の前で裸で、しかも…………。


____えっちなこと、してもいいよ____



「ヒナ……っ、あ、くぅ」

だからこそ、今日という時間は貴重なのかもしれない。
ヒナはセシル達と依頼へと出掛け、俺は一日部屋の中を独占している状況だ。
誰もいない部屋のなか、シャワールームで自分のあれをしごいていた。

もしも、あの時……理性なんて放り捨ててヒナを抱いていたら……。
そんなことばかり反芻して、妄想して、空想上のヒナに腰を振る。

幼馴染で異性として見ることもない相手なのに。
どうして、あの時俺はあんなにも、押し倒したいって思ったんだ?
疑問を抱けども、答えはない。
ひたすら性欲に従って、気持ちよくなろうとする。

最低だ。
あの腐れ勇者と同じだ。

ヒナはお姫様で、守るべき存在なのに。

俺は……俺は……。

それでも欲望が沸き上がる。
ヒナの背中に、尻に、アソコに……。
ムスコを擦り付けて、入れて、おもいっきり。

ヒナはなんというのかな。
泣くのかもしれない。
やめてくれと懇願するかもしれない。
それを、力ずくで押さえつけるのか……?

でも。

そうだとしても、したい。
この二人暮らしだって、そういうつもりなのかもしれない。
童貞と処女のままでいても、大して意味なんてないはずだ。
ならば、してしまおう。
一夜の間違いってことで、そのつもりで。

「ふざけろ……」

そんな考えを、俺は壁に額をぶつけることで消し飛ばす。
そして代わりに、カイロルから貰った春画を見ながら、射精した。

「…………ヒナは守る。それだけだ」

使い終わった写真をビニール袋にいれて、ぐしゃぐしゃにする。
汚れを全部洗い落とし、シャワーから出るとごみを捨てた。

自慰行為は、やはりなれない。
色んなことを思ってしまうから。

それは元の世界から続く、俺の悩みだった。
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