がんばり屋の森本くん

しお子

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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~

第50話 不穏

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「んっ、んぅ、んんっ…」

小野寺はしばらく唇を離さなかった。
まるで森本の存在を確かめるように、息が出来なくなるほどキスをした。

「りょう…ん、はぁっ…」

「ご、ごめん」

夢中になっていた小野寺は我に返り、まるで酸素を探すように開きっぱなしになっていた口を解放した。

そして苦しそうに呼吸する姿を見ると、両足の拘束を解き両手同士を繋ぐ。

「…これは、外してくれないの?」

窮屈さがなくなり、自由になった足に安堵する森本。
ダメ元で手首を顔の前にかざしてみたが、小野寺は答えてくれなかった。





森本は浴室へと連れられ、服を着たままの小野寺にまるでペットを洗うかのようにシャワーで体を流されていた。

「お腹空いてるよね、今何か頼むから」

もう夜も遅い時間だ。
小野寺は捕まって以降何も食していない森本を気遣った。

「そんなことより俺、帰らないと」

「ダメ」

優しさが垣間見えたため、もしかしたら説得出来ないかと声を上げたが即答された。

しかし簡単に食い下がるわけにはいかない。

「親もいるし、折戸くんのことも気になる…学校だってあるんだよ?」

「学校と君の両親にはあいつから連絡させてる、折戸って人にも君のスマホからメッセージ送ったから安心して」

「そ、そんな…」

今日明日の話じゃない。
しばらく解放しないつもりだ。

そう思った森本は笑顔で話す小野寺に恐怖した。

「あ、大丈夫だよ!
 君が僕のこと受け入れてくれれば、すぐ帰してあげるから」

「受け入れるも何も、俺は最初から涼真くんと友達になりたいって思ってるよ!」

「…僕だけ?」

「え…?」

「空汰くんの中には、僕だけ?
 違うよね」

「そんなこと、言われても………」

自分の中に、誰かだけを存在させるなど考えたこともなかった。

「ほら、やっぱり帰せない。
 僕は僕だけがいい。
 僕だけの君、僕も君だけの僕なんだから」

「………」

根本的に考え方が違う2人。
理解し合うのは難しく、許容し合うほど大人ではない。

やはり森本は絶望するしかなかった。

「その代わり、欲しいものはなんでも言って!
 食べたいものとか、ゲームとか。
 あげられるものはなんでもあげる」

「………外に出れないなら、何もいらないよ」

「空汰くん………」

小野寺は本当はこのままずっと2人でここにいたかった。
だから森本が外に出たくなくなるような何かを与えたかった。

しかしそれは森本の願いではない。
そう悟ると肩を落としながら部屋を出ていった。





「絶対変だ!!」

昨日、森本と一緒に居た時から記憶が途絶え、自宅で寝ていた折戸。

気絶したせいか記憶が曖昧になっていた。

「なんで空汰いないんだよ~!」

スマホに森本からメッセージが入っていたので折戸は普段通り登校し、本人の様子が気になったため1年の階へ来てみたが、森本の姿は無かった。

落胆しながら歩いていると虎谷を見付け、こんな時だけ頼るのもどうかと思ったが森本の安否の方が大切だと声をかけた。

「知らねぇよ…」

虎谷は無遠慮に話しかけてくる折戸に腹を立てながら首を振った。

それでもウダウダと頭を悩ませる折戸を急き立てるように問いただす。

「つーか、なんなんだよその曖昧な記憶は」

「仕方ねえだろ!
 なんかいきなりぶっ倒れちまったんだから…」

「あいつはなんて言ってたんだよ」

「体調悪そうだったから、家まで送ったって」

「あいつ一人でか?」

「………」

体格的に考えて、それは無理な話だ。

「あ、マッツー!」

そこへちょうど通りかかった松城に折戸は呼びかけた。
どうやら1年生の授業をしていたようだ。

「…マッツーは止めてくれるかな…」

さすがに教師をあだ名で呼ばせるのは周囲の目が痛い。

「あのさ、空汰が今日休んでる理由知ってる?」

「あぁ、それならさっき授業したのが森本くんのクラスだったから聞いたよ。
 体調不良で休んでるって生徒は言ってたけど」

「体調不良…。
 俺のこと運んで全身筋肉痛にでもなったのかな」

「ガチで言ってんのか…?」

本気で言ってそうな折戸の顔を見て、虎谷は呆れていた。



「とりあえず、明日また考えたらどうかな?
 この前も体調崩してたし、もしかしたらまだ本調子じゃなかったのかもしれない」

何があったのか事情を聞いた松城は、折戸の取り越し苦労の可能性が高いだろうと提案した。

「………」

確かに松城の言うことには説得力があったが、折戸はどうにも腑に落ちないようだ。

しかしそんな折戸を責めるように虎谷は口を開いた。

「そんな心配なら目離すなよ」

「まあまあ、もし明日も森本くんがお休みだったら僕も担任の先生に聞いてみるから」

「…うん」

いつもであれば言い返している折戸だったが自分の不甲斐なさを後悔するしか無かった。

そうして森本がいないまま学校は終わった。
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