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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~
第52話 会合
しおりを挟むシャワーを浴びた2人は食事のためにリビングにいた。
「…やっぱり小さいね、空汰くん」
「涼真くんが大きすぎるんだよ」
着替えがなかった森本が小野寺のシャツを借りると丈の短いワンピースのようになってしまった。
「身長いくつなの?」
「この前の身体測定では187cmだったよ」
「…」
自分とは差がありすぎて羨ましいという気すら起きなかった森本。
ズボンは裾が余って危ないという理由で下には何も履いていなかったが仕方なくソファーに座ると、注文したらしい料理をテーブルに並べられた。
「好きなだけ食べて」
小野寺は隣に座ると笑顔でそう言った。
「…ここって、涼真くんちじゃないよね?」
食事をしながら森本は室内を眺めていたが、明らかに以前来た家ではない。
「うん、父親が持ってるマンションの一室。
貸してもらったんだ」
「すご…」
そんな他愛ない会話をしながら、森本は美味しそうに食べ物を口にした。
そんな姿を小野寺は幸せそうな顔で見つめる。
「どうしたの?」
自分が食べている間、手が止まっている小野寺に首を傾げる。
「あ、ごめんね。じっと見っちゃって…こうやって空汰くんと直接話せることがすごく嬉しくて」
「…涼真くんが登校したら、こんなの当たり前になってもっと色々なこと一緒に出来るよ」
「いらないよ。僕は君がいるだけで幸せなんだ」
あまりの毅然とした態度に森本は何も言えなくなった。
とにかくここを出なければ、そう思っていたが自分が去った後の小野寺は一体どうなってしまうのかと心配や不安を抱え始めていた。
折戸は仮バスケ部のメンバーを集め、事の経緯を一通り話していた。
そしてそれを聞いた菊地がとある疑問を口にする。
「森本くんはその日どこに行くつもりだったんだろうね」
「…たぶん、小野寺って1年生の家だと思う」
「小野寺?てかなんで星場が知ってんの?」
「先生に頼まれて空汰ちゃん不登校の小野寺くんの面倒見てたんだ。毎日毎日、そのせいで体調崩すくらい健気にね」
星場はいちいち突っかかってくる折戸の態度にため息をつきながら事情を話した。
「あーだからこの前休んでたんだ」
「そう。その時空汰ちゃんにお願いされて1人で行ってみたんだけど、僕のこと完全無視だったよ」
「まさか森本くん、その子の家に居たりして」
冗談のつもりでへらへらと笑う菊地に折戸は本気になる。
「どういうことだよ」
「いやジョーダンだよ、うるさいなぁ」
「…あながち冗談じゃないかもしれない。彼の空汰ちゃんに対する執着は異常だよ」
「執着…?」
「小野寺くんの家に行ったあとから変なメッセージが来るようになったんだ。それも全部森本空汰に近づくなっていう主旨のメッセージ」
「うわ、何それコワー」
「こういう事する子ってメンヘラだから怒らせると何するか分かんないんだよね」
「経験談かよ」
節々からモテる男の雰囲気が垣間見え苛立つ折戸。
「じゃあ森本くんが学校に来てないのは小野寺くんのせいって可能性もあるってこと?」
「可能性はね」
「マジかよ…」
「だったらそいつんち行って確かめればいいだろ」
「虎谷の言う通りだ、とりあえず小野寺の家に行こうぜ」
「ちょっと待って、君らが行くとややこしくなりそう」
その言葉に2人が菊地へ詰め寄ろうとしたところ、星場が何か思いついたようだ。
「ねぇ、松城先生に同行してもらったら?」
「あいつはダメ、空汰の住所すら教えてくれないんだぜ?」
「じゃあ今度は僕と菊地くんとでお願いしてみるよ」
「え」
まさか指名されるとは思ってなかった菊池は星場が何を企んでいるのか分からず面食らった。
「2人には後で連絡するから、ちゃんと大人しくしてて」
「はぁ?ふざけんな!なんでお前の言うことなんか」
「空汰ちゃんのこと心配なんでしょ」
騒ぎ立てようとする折戸をいつになく強い口調で釘を刺す星場。
絶対大丈夫だという余裕の笑みを浮かべ菊地を連れて松城の所へ向かった。
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