花びらは掌に宿る

小夏 つきひ

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疑惑

疑惑22

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あの男とは切れたとわかった俺は開放的な気分になっていた。翌日の休みは久しぶりに1人遠出のドライブをした。行った先の風景をカメラに納めるのが趣味だ、でもカメラを構える気にはなれなかった。
その帰り、あゆみさんから頼まれた封筒をメールの住所へ投函しに行った。ポストには名前が書かれていない、マンション名と部屋番号をもう一度確かめてから投函した。封筒は中身が入っているのかと思うほど軽く、重要なものが入っているとは思えなかった。
このところあゆみさんから誘われる事が増えた。会ってもほとんどはドライブだ。でも、会話なくただただ夜の景色を見ながら車を走らせる静かな時間が結構好きだ。あゆみさんが少しでも俺といる時間を必要としてくれているならそれだけで嬉しい。


道端智香から再び合コンに誘われたのは7月に入ってからだった。前に断ってから大人しくなったと思っていたが諦めていなかったようだ。
「長谷川先輩、出会いの夏ですよ!これから海とかたくさんイベントあるんだし楽しまないと!」
目を輝かせて迫る様子に負けて合コンを組むのを約束した。
「嬉しい~!高校の時の同級生も連れてくので仲良くしてあげてくださいね」
「同級生?」
「はい。ところで先輩、今日こそランチ一緒にどうですか?」
「ああ…」
生半可に返事をして昼食を共にすることになった。
道端はこれまでに相談したいことがあると何度か言ってきた、でも結局悩みを打ち明けられる事はなく、合コンの店をどこにしようだとか今度連れて来る同級生との思い出なんかを語っていた。その同級生はハシヅメ ユウカという名で今年の4月、長野に引っ越してきたらしい。今度の合コンがきっかけで彼氏ができれば新しい環境でも楽しくやっていけるんじゃないかと道端智は言っているが、私って思いやりのある親友でしょ?というアピールをしているように見えた。
その2週間後に合コンをした。道端の同級生、ハシヅメ ユウカは話してみると想像していたよりもさっぱりとした性格で、ただの付き合いで参加した俺にとっていい話し相手になった。道端が他の男と盛り上がってはこちらをチラチラ見たり体を妙にくっつけてくる事で目的がわかった。俺はハシヅメ ユウカに興味があると見せかけるため、帰りに携帯番号を目の前で聞いた。これで道端も諦めるだろう、合コンはいい機会だったかもしれないと思った。


あゆみさんとの進展を望んだ俺は、ドライブ以外にも何かしようと言って映画に誘った。約束した日は近くで花火大会が予定されていた。花火を一緒に見るという望みもあったけど人混みを嫌うあゆみさんが行くとは思えなかった、それで映画にした。
仕事帰りに車でいつもの駅前へ向かい、ロータリーに車を止めてあゆみさんが来るのを待っていた。メールを受信して確認するとあゆみさんからだった。急用が出来たから映画に行けないと断られた。残念だが仕方ないと受け止めて車を出そうとしたその時、外に見覚えのある顔を見つけてそれが誰なのかを思い出した。ハシヅメ ユウカだ。
「ユッカちゃん!」
窓を開けて声を掛けるとハシヅメ ユウカは振り向いた。あゆみさんとの予定がなくなった俺は空虚を埋めるためハシヅメ ユウカを誘った。そしたら花火を見に行くことになった。花火を見ている間、あゆみさんを想った。以前に比べと順調なはずなのに、俺があゆみさんの心を捉えられる日はこの先いつまでも来ないのではないかという気がした。傍にいることは出来ても、あゆみさんが宙を見る先にはいつも俺ではない誰かがいる、そんなふうに思うからだ。それが誰かというのは明白だ。


ハシヅメ ユウカとはその後もあの駅で何度か出会った。彼女は次第に俺の心の隙間を埋めていった、でもそれは恋愛感情ではなかった。あゆみさんとの思い出を話す事で不安を紛らわしたこともあった。そんなある日、彼女を家に送り届けた後、暫くしてから車内に鍵が落ちているのを見つけた。翌朝、職場へ鍵を届けに行くと彼女の後ろにはあゆみさんが立っていた。2人は同じ職場に勤めているとわかった、こんな偶然があるのかと驚いた。後日、あゆみさんがまた写真を撮るよう言ってきた。何故その対象がハシヅメ ユウカになったのかわからない。以前も増して癇癪を起こすようになったあゆみさんを止められず、俺は再び覚悟を決めた。

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