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本編

お仕置きの前にキスされました

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 ヘルプミーと心の中で叫びながら廊下を緋色に担がれながら移動している俺。
 通り過ぎる生徒の「あいつまた担がれてるよ(笑)」という声が聞こえる気がする。

「ぎゃっ、何でケツ揉むんだよ!」

「わりぃ、ヒマでな」

 ヒマでケツを揉まれる俺可哀想じゃね?

 もう、呑気に歩いてないで助けてと青藍に手を伸ばすと、両手を取られにこやかに笑われてしまった。でも目の奥が笑ってない。智也やいちるに助けを乞おうにも俺や2人の鞄を取りに行っているから孤立無援である。

 そして気づいてしまった。緋色に担がれ青藍に両手を握られ運ばれる俺……端から見たら絶対おかしな格好してる!!
 かぁぁぁっと顔に熱が集中したのが自分でも分かる。放課後遅いとはいえさっきから何人もの生徒とすれ違っているのだ。

「青藍恥ずかしぃ…」

 恥ずかしさのあまり潤んだ瞳で訴えると、両手を握る青藍の手に力が入り顔が近づいてくる。

「んんっ⁉」

「あっ、こら青藍てめぇ!」

 あっ、と思った時には唇が重なり近くにいた生徒から悲鳴が聞こえる。

「そんな可愛い顔をしたらダメだよ」

 唇を離し頬と耳を染めぺろりと自分の下唇を舐める姿が、壮絶にエロくて色っぽい青藍に心臓が痛いくらい早くなる。何でそんなことしたんだよとかそういえば俺のこと愛してるって言ってたなとか頭の中がぐるぐるぐちゃぐちゃになって、俯くしかできなくなってしまった。

 結局その状態のまま靴を履き替えさせられ寮まで羞恥プレイである。

 エレベーターに乗り最上階にある部屋に連れ込まれ黒い革張りの大きなソファーにそっと降ろされる。
 俺の顔はまだ赤いままだ。青藍がエレベーターの中でまたキスをしてきたからだ。しかも舌まで入れた濃厚なやつを!

「青藍マジいい加減にしろよ!」

「悪いつい、な。でもあんな志摩の顔見たらお前だって我慢できないぞ」

「チッ、担ぎ方間違えたな。次は前になるように担ぐ」

 えっ、その結論に辿り着いちゃう⁉担がない選択肢は⁉それともお姫様抱っこがいいかって?それは勘弁してください。

 遠い目になりながらも部屋を見渡す。一般生徒の2人部屋よりも広いここは生徒会や各委員長のみのフロアで1LDKの部屋を1人で
 使うようになっているらしい。黒で揃えられた家具はシンプルだけど質が良さそうだ。
 というか緋色の部屋だというここは余計な物が全くなく、机の上も整理されていて脇にある本棚もスッキリ収納されている。豪快そうに見えてキレイ好きなのかも。
 それにしても生活感がなさすぎてきょろきょろしていると、寝に帰ってくるだけだし人を入れたくないのだそう。今まで部屋に入ったのは青藍といちるだけらしい。じゃあセフレとどこでヤってたんだという言葉は、答えを聞きたくないのでグッと飲み込む。

「さて、どう仕置きするかな」

 どっかりと隣に座わり耳元で響いたエロボイスで我に返る。反射的に反対側に体を反らすも、反対隣に青藍が座っているため青藍に寄りかかる感じになってしまった。

「し…知らない人に付いて行ったのは軽率だったけどほら、何もなかったし……」

「何かあってからじゃ遅いんだがなぁ」

「スミマセンデシタ」

「分かればいいんだ」

「んっ……」

 だから耳元で喋らないでくれ。ホントこの声に弱いんだって!また変な声出ちゃったよ。

「本当俺の声に弱いな。可愛い」

「ん……ふあっ…」

 ふっ、と笑った緋色に唇を塞がれ青藍より肉厚な舌が口内を蹂躙するようにかき回す。青藍のふわふわした気持ち良いキスと違い性的な興奮を呼び覚ますような感覚が襲ってくる。
 何度も角度を変えされるキスに頭がぼーっとしてくる。頭の上でごくりと音が聞こえたけどそれが青藍の喉なのか確認する余裕もない。

 唇が離れた時には息も上がり、目の前にある緋色の濡れた唇が軽くリップ音をさせ啄まれるのを見ているだけしかできなかった。

「蕩けた顔をしてる志摩可愛い」

 そう言って今度は覆い被さるように青藍が唇を重ねてくる。
 緋色のエロいキスも気持ち良かったけど青藍のキスは馴れていないのか少し拙いけどふわふわして気持ち良い。無理矢理されたはずなのにあまりの気持ち良さについ夢中で応えてしまう。

「ふぁ……」

 名残惜しくて追いかけそうになってしまったキスが終わると我に返って恥ずかしさのあまり手で顔を隠してしまう。

「……嫌だったか?」

 濃厚にキスした後とは思えない不安そうな声に、指を広げその隙間から見ると、緋色と青藍が緊張と不安に揺れた瞳で見ていた。

 いつも無理に触れてこない2人が衝動的にキスをしてしまったからなのかそれとも俺が男にキスされて嫌悪しているのではないかと心配しているのか……どっちもか?でも2人からキスされて嫌な気持ちにならなかったし寧ろ気持ち良かった。なんならもっとしたかったし。青藍と緋色だからなのかはまだ分からないけどは全くなかった。

「……嫌じゃない」

「そうか」

 2人が安堵した顔をし優しい笑顔を見せる。学園では見せない顔にドキドキしてしまう。

「兄貴~鞄持ってきた~っと、……お楽しみだった?」

 鍵が開いていたのか元気よくいちるが部屋に入って来て一瞬驚き、すぐニヤけながらじろじろ見てくるのが居たたまれない。後から入って来た智也も暖かい目で見ないでくれ。

「さて、お楽しみも終わったことだし仕置きするか」

「えっ?」

 驚いて緋色を見ると

「気持ちイイのは仕置きにならねぇよ」

 ですよねー。ということは地獄の筋トレですかね?数日廃人になるの確定なんだけど。
 慄く俺を尻目に2人が話し合って1週間ずつ生徒会と風紀の仕事の手伝いをすることに決まった。

 ヨカッタヨー俺腕立て一回も出来無いもん。

 しかし手伝いの最中事ある度に人目を気にせずキスをされ、生暖かい目で見られるという羞恥プレイに耐えなければいけなくなることを居間の俺は知る由もなかった。
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