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うっかり渡っちゃった編
玉藻大捜索
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「ただいま~1人にしてごめんね、勉強が終わったからあそぼ・・・・・・タマモ?」
早足で部屋に戻って来たジークフリートは静かな事に首を捻る。
(いつも扉を開けた途端に飛びついてくるのに。寝てるのかな?)
そう思い起こさないようにそうっとソファーやベッドを見ても丸くうずくまっている姿も、仰向けで寝ている姿も無い。
「あれ、どこにいるんだろ?」
見当たらないので机の下やソファーの下、クローゼットの中を見てもいない。今日は公務という名のお茶会と聞いていたが、早く終わって王妃が自分の部屋に玉藻を連れ込んだのかと行ってみると王妃はまだ帰っておらず、ジークフリートの部屋にも顔を出していないらしい。
「あのう・・・・・・」
王妃の部屋の前で黙り込んで考えていると、先ほど自分の部屋の前に立っていた騎士が言いづらそうにしていた。
「なんだ」
「あのですね、その・・・実は勤務の交代で王子の部屋に行った時に少し扉が開いていたのですが・・・・・・」
「何だと⁉」
いつも交代の時は次の騎士が来てからするのだが、今日はたまたま呼び出しがかかり、一時的に扉の前に誰も立っておらず、来た時に扉が開いていたらしい。
「一応、部屋の中を確認しましたが何も不審な所はありませんでした」
王子が帰って来た時に何かあるといけないのでその行為を咎める事はないが、仕方ないとはいえ一時的に扉の前に誰もいなかったのには少し腹が立つが今はそれどころではない。
「少し扉が開いていたってことは部屋から出て行った?・・・・・・今から父上の所へ行く」
ジークフリートの部屋と王妃の部屋の行き来しかしていない玉藻は、たまたま開いていた扉から出てしまったのなら王宮内を彷徨っているはず。探さなくてはいけないが、今の自分では探しきれないと判断をし、王に会いに行くことを決める。
王族のエリアから国王の執務室までは相当な距離があり、小走りで向かう。一刻も早く見つけたいと気ばかり逸る。
「陛下は居られるか?火急の用事だと取り次いでくれ」
「少々お待ち下さい」
やっと執務室へ着き、重厚な扉の前にいる騎士に取り次ぎを頼む。本当は前もって連絡を入れないと会えないのだが、今は悠長な事を言ってられない。
「お入り下さい」
扉を開けられ一礼をしてから部屋に踏み込む。そこには扉と同じように重厚な机で書類を見ながら王はペンを走らせている。その周りには侍従と秘書官数名が書類の束を持って立っている。
「王子よ、連絡を入れず来て、国王である私の時間を取るという事はどういう事か分かっているのか?」
「・・・・・・はい」
王は顔を上げず、手も止める事なく聞く。
ここは執務室、仕事中は親子ではなく国王と王子の関係を保たなければならない。なのでジークフリートも4歳とはいえ王の許しがあるまで礼をしたまま顔を上げることはしない。
「・・・・・・言ってみろ」
「タマモが部屋から居なくなりました」
「なにィ⁉タマモが居なくなっただと⁉」
ダンッ!と両手を机に叩きつけ立ち上がり、大きい声を出した王に侍従と秘書官の肩が跳ねる。
「おいっ、今すぐ王宮を閉鎖しろ!各騎士団長と宰相を呼べ!それと今日登城、出入りした業者全て調べろ!」
「わ・・・分かりましたが、一体・・・・・・」
王の鬼気迫る顔に慄きながらも、秘書官は王と王子の会話の意味が分からず聞き返す。
「狐だ」
「は?」
秘書官が間抜けな声を出したのは仕方ない。あれだけ切羽詰まる表情で、騎士団長や宰相を呼べと言っているのに狐の一言なのだ。
「白銀の子狐だ。もふもふ癒しパワーがハンパないキューティー狐ちゃんだ」
この状況で言ってんだコイツ、しかも真顔で。
そう思った秘書官は悪くない。ただ彼は優秀なので顔には出さない。
「タマモが部屋から出て居なくなったのは一大事だ。あの子は明後日、女神アマンベールとお会いになる予定だ。それまでに見つからないと大変な事になる恐れがある」
「女神様と・・・・・・!分かりました、緊急配備を敷きます!」
慌てて秘書官がバタバタと各所へ走って行くのを見て王は深々と椅子に座り、えらい事になったと深い息を吐く。
王が玉藻が居なくなった事に慌てるのには理由がある。それは先日見た本に書かれていた事と、嘘を言っていないと思っているが玉藻は話した事、それらがもし繋がるのであれば玉藻にもし何かあった時、王国が滅びる可能性があるからだ。間違っても癒しのもふもふが・・・・・・と思ってはいない。多分。
「もふもふ癒しパワー・・・・・・」
王の呟きは聞こえていたが、侍従は聞いていない事にした。
その後各騎士団長と宰相に事態を話し捜索させたが、玉藻を見つける事が出来ず途方に暮れるも、庭で玉藻が子狐になってもしていた黒い首輪が落ちていた報告を受け攫われた可能性が出てくる。
「今日登城した者は三家、アイズリー公爵、モエル侯爵、ファンガーク伯爵の三名です。業者に関しては出入りが多く、またかなりの者が働いているので見かけていたら連絡があるはずですが、無いようです」
「ふむ・・・・・・いくら小さくても普通の狐と違う毛色のタマモに気づかない訳はないだろうから業者の線は薄そうだな」
「そうですね。しかもここまで探して見つからないという事は既に連れ去られ後かもしれませぬ」
宰相の報告を受け、登城者に絞る。アイズリー公爵はまだ王宮にいる為、理由を話し所持品検査は済んでいる。
「モエルとファンガークか・・・・・・」
「王都邸につきましては、ファンガーク伯爵邸の方が王宮に近い位置にあります」
歴史がある爵家は王都に居を構えているが、地方に領がある貴族達は王都に別邸があるのが常で、歴史がある爵家から王宮に近い場所に建てている。ファンガーク伯爵家はかなり歴史がある貴族で、かなり良い場所に居を構えている。モエル侯爵邸は去年侯爵位を賜わっている為、通常の侯爵邸やファンガーク伯爵邸よりも王宮から離れている。
「今日はもう遅い。明日の朝、屋敷に行き二手同時に調べろ」
「ハッ、そのように手配いたします」
騎士団長が礼をし執務室から退出する。一段落したので侍従が紅茶を淹れテーブルにお菓子と一緒にセットする。部屋には王と王子と宰相のみで、ソファーに座り一息つくと宰相が口を開く。
「ファンガーク伯爵家は歴史も古く、卿は規律を重んじる方、塵だとしても王宮のものを持ち帰るとは思えませぬ」
「分かっている」
「それに本日モエル侯爵は令嬢と一緒に登城し、王子に面会を求めています。もしかすれば令嬢がタマモ様を持ち帰った可能性もあります」
そうだったと王は顔を顰める。モエル侯爵家から来た釣り書を送り返し、王子の婚約者選定はしないと明言、まだ一度も王家主催の王子のお茶会という名の友人、側近候補の選定の場を設けていないのに直接面会を申し込む厚顔さ。それが親戚関係の家なら何の問題も無いが。全く関係ない伯爵から侯爵になったばかりの貴族の浅慮に不快感を覚える。
「心象が悪い中、玉藻が侯爵家に攫われていたら処罰を重くしそうだ。・・・・・・もしそれが娘だとしても、だ」
「致し方ないでしょう。いくら子供とはいえ高位貴族、王宮に来るという事はここでの作法や約束事を分かっているはずですから」
「タマモ・・・・・・」
ジークフリートは玉藻が酷い事をされていないか、淋しがっていないか心配をし、王は今日はあのもふもふを触れないのかとしょんぼりし、宰相は玉藻の身の上を聞き、下手すると神罰が下るのでは?と内心恐れ慄いている。
そして公務が終わり玉藻が居なくなったのを聞いた王妃が、執務室に突撃してくるまであと少し・・・・・・
早足で部屋に戻って来たジークフリートは静かな事に首を捻る。
(いつも扉を開けた途端に飛びついてくるのに。寝てるのかな?)
そう思い起こさないようにそうっとソファーやベッドを見ても丸くうずくまっている姿も、仰向けで寝ている姿も無い。
「あれ、どこにいるんだろ?」
見当たらないので机の下やソファーの下、クローゼットの中を見てもいない。今日は公務という名のお茶会と聞いていたが、早く終わって王妃が自分の部屋に玉藻を連れ込んだのかと行ってみると王妃はまだ帰っておらず、ジークフリートの部屋にも顔を出していないらしい。
「あのう・・・・・・」
王妃の部屋の前で黙り込んで考えていると、先ほど自分の部屋の前に立っていた騎士が言いづらそうにしていた。
「なんだ」
「あのですね、その・・・実は勤務の交代で王子の部屋に行った時に少し扉が開いていたのですが・・・・・・」
「何だと⁉」
いつも交代の時は次の騎士が来てからするのだが、今日はたまたま呼び出しがかかり、一時的に扉の前に誰も立っておらず、来た時に扉が開いていたらしい。
「一応、部屋の中を確認しましたが何も不審な所はありませんでした」
王子が帰って来た時に何かあるといけないのでその行為を咎める事はないが、仕方ないとはいえ一時的に扉の前に誰もいなかったのには少し腹が立つが今はそれどころではない。
「少し扉が開いていたってことは部屋から出て行った?・・・・・・今から父上の所へ行く」
ジークフリートの部屋と王妃の部屋の行き来しかしていない玉藻は、たまたま開いていた扉から出てしまったのなら王宮内を彷徨っているはず。探さなくてはいけないが、今の自分では探しきれないと判断をし、王に会いに行くことを決める。
王族のエリアから国王の執務室までは相当な距離があり、小走りで向かう。一刻も早く見つけたいと気ばかり逸る。
「陛下は居られるか?火急の用事だと取り次いでくれ」
「少々お待ち下さい」
やっと執務室へ着き、重厚な扉の前にいる騎士に取り次ぎを頼む。本当は前もって連絡を入れないと会えないのだが、今は悠長な事を言ってられない。
「お入り下さい」
扉を開けられ一礼をしてから部屋に踏み込む。そこには扉と同じように重厚な机で書類を見ながら王はペンを走らせている。その周りには侍従と秘書官数名が書類の束を持って立っている。
「王子よ、連絡を入れず来て、国王である私の時間を取るという事はどういう事か分かっているのか?」
「・・・・・・はい」
王は顔を上げず、手も止める事なく聞く。
ここは執務室、仕事中は親子ではなく国王と王子の関係を保たなければならない。なのでジークフリートも4歳とはいえ王の許しがあるまで礼をしたまま顔を上げることはしない。
「・・・・・・言ってみろ」
「タマモが部屋から居なくなりました」
「なにィ⁉タマモが居なくなっただと⁉」
ダンッ!と両手を机に叩きつけ立ち上がり、大きい声を出した王に侍従と秘書官の肩が跳ねる。
「おいっ、今すぐ王宮を閉鎖しろ!各騎士団長と宰相を呼べ!それと今日登城、出入りした業者全て調べろ!」
「わ・・・分かりましたが、一体・・・・・・」
王の鬼気迫る顔に慄きながらも、秘書官は王と王子の会話の意味が分からず聞き返す。
「狐だ」
「は?」
秘書官が間抜けな声を出したのは仕方ない。あれだけ切羽詰まる表情で、騎士団長や宰相を呼べと言っているのに狐の一言なのだ。
「白銀の子狐だ。もふもふ癒しパワーがハンパないキューティー狐ちゃんだ」
この状況で言ってんだコイツ、しかも真顔で。
そう思った秘書官は悪くない。ただ彼は優秀なので顔には出さない。
「タマモが部屋から出て居なくなったのは一大事だ。あの子は明後日、女神アマンベールとお会いになる予定だ。それまでに見つからないと大変な事になる恐れがある」
「女神様と・・・・・・!分かりました、緊急配備を敷きます!」
慌てて秘書官がバタバタと各所へ走って行くのを見て王は深々と椅子に座り、えらい事になったと深い息を吐く。
王が玉藻が居なくなった事に慌てるのには理由がある。それは先日見た本に書かれていた事と、嘘を言っていないと思っているが玉藻は話した事、それらがもし繋がるのであれば玉藻にもし何かあった時、王国が滅びる可能性があるからだ。間違っても癒しのもふもふが・・・・・・と思ってはいない。多分。
「もふもふ癒しパワー・・・・・・」
王の呟きは聞こえていたが、侍従は聞いていない事にした。
その後各騎士団長と宰相に事態を話し捜索させたが、玉藻を見つける事が出来ず途方に暮れるも、庭で玉藻が子狐になってもしていた黒い首輪が落ちていた報告を受け攫われた可能性が出てくる。
「今日登城した者は三家、アイズリー公爵、モエル侯爵、ファンガーク伯爵の三名です。業者に関しては出入りが多く、またかなりの者が働いているので見かけていたら連絡があるはずですが、無いようです」
「ふむ・・・・・・いくら小さくても普通の狐と違う毛色のタマモに気づかない訳はないだろうから業者の線は薄そうだな」
「そうですね。しかもここまで探して見つからないという事は既に連れ去られ後かもしれませぬ」
宰相の報告を受け、登城者に絞る。アイズリー公爵はまだ王宮にいる為、理由を話し所持品検査は済んでいる。
「モエルとファンガークか・・・・・・」
「王都邸につきましては、ファンガーク伯爵邸の方が王宮に近い位置にあります」
歴史がある爵家は王都に居を構えているが、地方に領がある貴族達は王都に別邸があるのが常で、歴史がある爵家から王宮に近い場所に建てている。ファンガーク伯爵家はかなり歴史がある貴族で、かなり良い場所に居を構えている。モエル侯爵邸は去年侯爵位を賜わっている為、通常の侯爵邸やファンガーク伯爵邸よりも王宮から離れている。
「今日はもう遅い。明日の朝、屋敷に行き二手同時に調べろ」
「ハッ、そのように手配いたします」
騎士団長が礼をし執務室から退出する。一段落したので侍従が紅茶を淹れテーブルにお菓子と一緒にセットする。部屋には王と王子と宰相のみで、ソファーに座り一息つくと宰相が口を開く。
「ファンガーク伯爵家は歴史も古く、卿は規律を重んじる方、塵だとしても王宮のものを持ち帰るとは思えませぬ」
「分かっている」
「それに本日モエル侯爵は令嬢と一緒に登城し、王子に面会を求めています。もしかすれば令嬢がタマモ様を持ち帰った可能性もあります」
そうだったと王は顔を顰める。モエル侯爵家から来た釣り書を送り返し、王子の婚約者選定はしないと明言、まだ一度も王家主催の王子のお茶会という名の友人、側近候補の選定の場を設けていないのに直接面会を申し込む厚顔さ。それが親戚関係の家なら何の問題も無いが。全く関係ない伯爵から侯爵になったばかりの貴族の浅慮に不快感を覚える。
「心象が悪い中、玉藻が侯爵家に攫われていたら処罰を重くしそうだ。・・・・・・もしそれが娘だとしても、だ」
「致し方ないでしょう。いくら子供とはいえ高位貴族、王宮に来るという事はここでの作法や約束事を分かっているはずですから」
「タマモ・・・・・・」
ジークフリートは玉藻が酷い事をされていないか、淋しがっていないか心配をし、王は今日はあのもふもふを触れないのかとしょんぼりし、宰相は玉藻の身の上を聞き、下手すると神罰が下るのでは?と内心恐れ慄いている。
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