王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

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生徒会編

邂逅

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 はい、生徒会編に入りました!

 愛加と宏太本体は少しの間出てきませんがそれまでは惟親クン・・・いや、惟親視点でお送りします。




 俺が運命に出会ったのは中2の4月だった。

 ―――――見つけた、俺のΩ。

 お互い驚き固まり、異変に気付いた周りが騒ぎ始めて我にかえる。
 これ以上騒がれては困るのでその華奢な手を取り移動しようと手をのばすと、叩き落される。
 びっくりして俺のΩの隣を見ると茶髪のふわりとした髪を持つ背の高い端正な顔立ちの生徒が、不機嫌そうに立っていた。
 その生徒を俺のΩが不安そうに見上げる。

 ―――――そいつを見るな。俺のΩだろ。

 しかしここで騒ぎを大きくするわけもいかず、2人を連れ立って生徒会室へ移動する。向かい合わせでソファーに座り、付いてきた生徒は当たり前のように俺のΩの隣に座る。

「名前は?」

 ムッとしながらも俺のΩに名前を聞く。

「姫川……姫川愛加」

 愛加か……いい名前だ。ついでに奴にも名前を聞く。

「北大路宏太。愛加は僕の運命です」

「なっ!」

 何だと⁉奴……北大路が俺のΩの『運命』だと⁉じゃあこの感覚は何なんだ?見た瞬間に分かった片割れ。愛しい存在。誰かに奪われる前に囲い込まないとという焦燥。これを『運命』と言わず何と言うんだ。
 それに愛加も気付いたはず。俺を見て固まったのが何よりの証拠じゃないか。

 北大路を睨みながら何と言おうか逡巡していると愛加がおずおずと北大路の袖を引っ張る。

「宏太、あの人オレの『運命』だよ」

「えっ⁉」

 今度は北大路が固まる番だった。そうだろう、自分で『運命』と言ったのにその運命から否定されるのだから。

「で……でも愛加は僕の運命じゃないか。分かるだろ⁉」

「うん。宏太はオレの運命だ。でもあの人もオレの運命だよ。だって宏太の時と一緒の感覚だもん」

 どういう事だ?俺と北大路が愛加の『運命』?そんな事があるのか?
 ………まてよ、前に聞いた事があるぞ。まさか……

「まさか番の共有……?」

「ばかな⁉は希少な事案だ。そうそうある事ではない。そんなこと……」

 額を押さえ唸るように吐く。

「僕は親の仕事柄二組の番の方達と会った事があります。稀だけど0じゃない」

「だとしてもだ。俺は帝グループの後継者だ。番を共有なんて注目度が違う。上げ足を取ろうとする奴や、番う前に排除しようとしてくるやからが出てきてしまう」

 排除の言葉にビクリと肩を跳ねさせる愛加を抱き寄せる北大路に自分のせいで怯えさせているのに腹を立ててしまう。

「これは俺達だけの問題ではない。親に連絡をするから近いうちに話し合いの場が設けられるだろう」

 俺はすぐ父親に連絡を取り『運命』を見つけた事、そのΩにはもう一人『運命』がいるらしい事を告げる。父親は驚いていたが、2人の名前を告げると知っていたらしくその週末には話し合いをしたらしい。

 その時に決められた事は「フェロモン検査を受ける事」「2人共愛加の『運命』だった場合、リスクを下げる為俺の運命が愛加だということを秘密にする事」「番うのは愛加と宏太が大学に入ってから」「発情期ヒートの時はどうするか3人で決める事」「子供は跡取りが必要な帝家が先に作る(これは帝家が強く希望したらしい)」「不測の事態が起きた場合、番うのを前倒しする」だった。

 北大路の父親がバース性の権威らしくそこで調べた結果、やはり愛加の運命は俺と北大路だと証明された。証明されてしまっては否定出来ないので俺達はその事実を渋々受け入れた。

 しかし1人より2人の方が愛加に懸想する奴や害する奴を蹴散らせるのではないかと思い至り2人で話し協力する事にした。

 その時は気付かなかったが、他の奴等が愛加に近づくのは排除せねばと感じるのに北大路には気に食わないという思いしか湧かなかった。やはり本能でΩを共有していると認識していたのだろう。

 それに俺達は見た目こそ違うが似ていた。愛加以外のフェロモンを感じたくないし他のΩのフェロモンが不快でしかない……どうやら1人のΩを共有するαに共通する事らしいが、幼い頃からαだと分かる見た目と能力で色んなΩから言い寄られていた。
 男女老若男女関係無く近づかれ辟易していた俺達は番を見つけた事によって余計に不快感が酷くなってしまったのだ。

 そこで北大路の母親がトップの製薬会社でオーダーメイドの抑制剤を臨床試験も兼ねて処方してもらう事になった。
 その抑制剤は『運命』以外のフェロモンを感知出来なくし、ヒートを起こされても欲情しなくなるものだった。
 北大路の母親である百合子さんの話では「『運命』が出すフェロモンは本能に直接働きかけるから出来る芸当」だと言っていた。何にしても俺達にはとても有難い薬だ。

 今では仕事に支障をきたすからと生徒会役員や風紀委員はこの抑制剤を服用している。

 不満があるとすれば俺の『運命』が愛加だというのを公表出来ない事だ。しかし愛加の安全を考えたら仕方ない。運命に出会えただけで僥倖だろう。

 その後、一足先に高等部に入学し愛加を俺が守れなくなった分北大路が周りに『運命』だと周知させしっかり守ってくれたのは良かった。


 ◇◇◇◇◇


「………って事があったなぁ」

 発情期ヒート明け愛加と宏太を空港で見送った次の日、朝早く生徒会室へ来てぽつりと呟く。

 愛加と番ったからだろうか。初めて出会った時の事を思い出し、その頃に思いを馳せる。

 初めての発情期ヒートでどちらが処女を奪うかで揉め、結局ジャンケンで勝負し負けて後でこっそり悔しくて泣いた。初めてのフェラは貰ったがな!

 しかしマナと番えたのは素直に嬉しい。いつもより重いヒートで乱れるマナ……控えめに言っても最&高だった。

 いまだ残る感触に惟親クンが一気に元気なってしまうのは生徒会室ここだけにしないと世間的に死ぬ。オチツケ惟親クン元気になっても当分マナの中には入れないんだぞ。……あ、少し萎えた。

 素直な惟親クンだな。

 気分をいつも通りに戻し、秋の学園祭の案件を詰めようと書類に目を通していると扉が開く音がし、双子庶務の挨拶が聞こえる。
 だが声にいつもの元気が無く、いぶかしげに顔を上げるとその姿にギョッとする。

「どうしたお前達⁉」

「「いや~~~」」

 チラリと気まずそうに互いを見て頭を掻く顔は赤黒く腫れていて痛々しい。2人共左頬を腫らしているという事は殴った相手は右利きか。

 ………いやいや今そんな推理する場面じゃない。しかし何があったんだ?
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