王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

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生徒会編

突然の発情期

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 今回も愛加視点です。


「白畑!」

 床に倒れて息が荒い白畑に駆け寄りブレザーを脱ぎ頭からかける。
 その間も肩で浅く息をし、体が震えていて顔は頬に赤みがさし瞳は潤んでいる。

 オレはこの状態を知っている。……でも白畑はαのはずだ。

「皆んな教室から出てくれ!!井上、保険医を呼んで!」

「分かった!」

 呆けている中、井上がいち早く我に返り教室を出て行く。他は宏太が威圧フェロモンを受けてしまったのでのろのろと廊下に向かって行く。転入生は腰を抜かしてしまっていて取り巻きに抱えられるように歩いていく。

 震える背中を撫でると大げさなくらいビクリと体を跳ねらせ色っぽい吐息が口から漏れる。

「はっ……はっ……んぅっ……なん…だ……これ……」

「辛いよな。辛いだろうけど聞いてくれ。白畑お前、発情期ヒートを起こしてる」

「は、え、ひーと?」

「うん、αなのにヒートを起こしてる」

「……なんで……なんでいま……」

 整った顔は歪められぽろぽろとなまじりから大粒の涙が溢れて床に落ちてゆく。

「僕……Ωになったの……?」

「白畑………」

 αの白畑がΩに?でもヒートを起こしているのは間違いない。原因は分からないけどαがΩになってしまうのはショックだろう。βがΩになるのとはわけが違う。αだから持てていたのもが全て無くなってしまうのだから。

「さわるな!!」

 ネクタイを緩め楽にさせようと白畑を手を伸ばすと後ろから鋭い声がして、手を引っ込めてしまう。

「貴島っ!お前教室から出て行かなかったのか⁉」

 オレの横に立った貴島と白畑の間に素早く手を広げ立ちふさがる。

「どけっ!」

「わっ!」

 乱暴に押し退けられ飛ばされるも宏太が受けとめてくれたので転ぶことはなかったけどやはりα、力が強いから結構な勢いで飛ばされた。

「楓……」

「よぉ……へぇ……?」

 無表情に見下ろす貴島に震えながらも潤んだ目を合わせようと顔を上げる白畑に、舌打ちをしてオレが被せたブレザーを放り投げしゃがむ。

「泣くな楓」

「陽平……僕が…分かるの……?あんなに……あんなに立花の匂いに夢中になってたのに……?」

 眦を優しく拭う親指に涙が伝っていく。

「確かに樹……あいつの匂いは虜になる匂いだ。でも楓から出ている匂いはそれ以上……いや、俺だけの匂いだ」

 ぐしゃりと顔を歪ませた貴島は自分のブレザーをかけ腕を掴み抱き上げ、周りに見せないように抱え込み白畑の首元に顔を埋めている。

「はぁん……陽平の匂い……」

「楓……楓……」

 貴島の息も荒くなってきていて下半身は既に張りつめている。そろそろ理性が焼き切れてしまうかもしれない。

「貴島、そのまま教室ここで抱くつもり?その状態だと発情期ヒート棟まで間に合わないでしょ。今連絡したから保健室にある緊急発情期ヒートシェルターに行くといいよ」

 冷静に話す宏太に鋭い視線を送ると早足で教室を後にする。廊下から「陽平!どこに行くんだ!そんなの捨てとけよ!」という転入生の言葉に腹が立つ。

「なんだあいつ。しかしさすがだな宏太」

「ふふっ、愛加が急にヒートになった時のシュミレーションしてたのが役にたっただけだよ」

 キュンとして宏太を抱きしめる。オレの番格好いい。

「さて、今教室にヒートフェロモンが充満しているだろうから封鎖しないとね」

「そうだな」

 教室を出るとクラスメイトと一緒に国語の授業に来た教師がおろおろとしていて、宏太が教室にヒートフェロモンが充満しているのを伝え、封鎖と空気清浄を指示する。あんなにあたふたして何も出来ないなんて大丈夫かあの教師。

 そしてめげずに宏太に近づこうとする転入生には呆れていいのか感心すればいいのか……

 クラスメイトが間に入り阻んでいる間に宏太と一緒に保健室へ行き、フェロモン用の消臭剤を全身にかけそのまま生徒会室へ足を運ぶ。2時間は教室に入れないし、戻るとまた転入生が絡んでくるだろうからな。


 ◇◇◇◇◇


「ホント助かる~」

 久しぶりに生徒会室に顔を出すとチカ以外の役員に拝まれた。

 ここんとこ授業に出れないと泣きを入れてきていたから仕方ないんだろうけど。
 こんなに忙しい原因は満也さんと柚木さんがまだ生徒会に復帰していないからが大きい。いまだに転入生にべったりで、出禁が明けても生徒会室に寄りつかないらしい。

「さっき教室で揉め事があったんだって?」

 親衛隊からの報告なのか既に皆んなある程度は把握しているらしく、明らかに「詳しく!」と顔に書かれているのは見間違いではないな。

「転入生が僕にも『運命』と言い出しました」

「「「「はあ!?」」」」

 うん、みんな驚くよな。食堂であれだけチカに言い寄ってたんだろ?つーか、宏太話が端的すぎないか?

「会長と僕2人を『運命』と言い張りました」

「「欲張りすぎ~」」

 オレも双子と同意見だよ。好きなケーキ2種類あって選べ無いからどっちも買っちゃお!的なノリだったしな!

「愛加をブサイクと罵りました」

「あいつ殺すか……ちょっと殺し屋雇うから待ってろ」

「待てーーーーい!!」

 待てません、待てませんって!チカ目が本気なんですけど⁉

 慌てて携帯を手にするチカの手を握りダメだと懇願すると、触られた嬉しいのか少し口元を緩める。うん、オレの番可愛い。






「とりあえず転入生は超絶面食いだって分かった」

 ムスッとしてミートボールを口に放り込むが意外に大きくて目を白黒させモゴモゴしてしまう。

 作業を手伝っていたら昼になり、チカ以外食堂へ行き、生徒会室に鍵をかけて3人でお重を広げて食べている。ボディペイントしている顔を見せられないからな。
 何故かソファーに3人並んでいるのでちょっと狭い。

「オレのチカと宏太なのに勝手に『運命』呼ばわりして!」

「それに関しては俺達も気分が悪い」

 ぷんぷん怒るオレを宥めるように羊々亭の杏仁豆腐をチカが手渡してくるけど気分は上がらない。

「それに愛加をブサイク呼ばわりしたのもね」

「別にそれはいいよ」

「「良くない!!」」

「ユニゾン!!でもさー、まだ世間的にはお披露目されてないから今素顔見られて騒がれるのは困るんだよ。だからいいの!」

「むう……」

「それにさ、あまり酷いならって前提だけどうちの親から提案があるんだよね。それは……………」

「………成程。でもマナはいいのか?」

「目立ちたくないけどそこまでされたらオレだってムカつくし?まあ遅かれ早かれって感じだし?チカや宏太の親にも了解取ってるから大丈夫」

「問題は理事達だよね」

「そこは親達がなんとかしてくれるってさ」

「ならいいか」

 かなりの量があったお重も食べ終わり、デザートの杏仁豆腐を大事そうに食べながらもう一つの出来事を思い浮かべる。

(白畑と貴島どうなったんだろ?)
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