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しっかり者のマリー2
「私の時間が空くのは早くても五日後ですわ」
「五日‥」
「ねーさまも王女でしたら、毎日お忙しかったでしょう?私の気持ちを一番よく分かって下さるのではないかしら?」
「お茶会や夜会のことかしら?」
「主催する準備で今忙しいのです。そういえば、三日後には母主催のお茶会がありますの。当然ねーさまも出て下さいますでしょう?兄の婚約者なのですから」
「最初の約束で交わしたのは、二週間の婚約者のふりだったのよ。二週間後の夜会が終わったらここを出て行くつもりでいたのに‥どうしたらいいのかしら」
「兄はねーさまを妃にすると決めておりますのよ。王太子宮にねーさまがいることは、たぶんすぐに貴族の間で広まるでしょう。兄は婚約者を決めたと皆には説明するはずです。次の王妃主催のお茶会には、二人の婚約者候補だった令嬢も出席することになっていますから、きっとどういう事なのかと聞かれるでしょう」
「困ったわ‥今からでもその二人のどちらかに決めてもらうことはできないかしら?だって契約違反でしょう?結婚するつもりは私には無いのだから」
「兄のあの様子では無理ですわ」
「どうしたらいいのかしら」
「もう‥!これでは姉と妹の立場が逆ですわね。ねーさまは、市井の暮らしができるのなら、この王宮を出たいのでしょう?」
「ええ、もちろん」
「ならば、五日後。私と市井に行くまでしっかりと婚約者らしくして下さいませ。もし、その気が無く逃げるかもしれないと怪しまれたら私と出掛けることも許してもらえなくなるかもしれません」
「ここに閉じ込められてしまうってことかしら?」
「ええ。兄は恋愛などしたこともない人ですから、ねーさまの気持ちなど考えることもできないでしょう。ねーさまが離れようとすれば捕まえて離さないかもしれません」
「皇妃に似ているからこの王宮に置いておきたいのよね‥。両陛下も私が似ているという理由で反対しないのですから‥」
「似ていることは確かですが、似ているという理由だけではないと思います」
「いいえ。ただ似ているからよ。私の他にもっと似た方が現れたら、私のことはすぐに追い出すでしょう。この国の迷信の為に囚われる我が身を呪うわ」
「ねーさま‥」
「ごめんなさい。言い方が悪かったわ。マリーは私の親友になってくれたのに」
「そう思わせてしまった私達の方が悪いですわ。でもこの国を嫌いにならないで欲しいの。それは本音よ。この国のことを皆愛しているからなの」
「ええ‥この国の皆は親切でいい人よね。この王太子宮でも不思議に感じるほど皆優しいもの。‥‥でも、理由があったのよね‥」
「待って、違うわ!皇妃のことは王家とウェルズス公爵家以外は今知らないわ。だから、使用人達の優しさは本物だと信じて欲しいの」
「そう‥‥ありがとう。マリーに出会えたこと、感謝してるわ」
「ふふっ。ねーさまってたぶん、自分が一番自分のこと分かってないわね」
意味深な発言でクスクスと笑い出したマリーは、
「私、本当にねーさまのこと好きよ」
王太子と同じ漆黒の瞳で私を真っ直ぐ見た。
‥‥何か‥素直に喜んでいいのかしら⁈
「まずは三日後のお茶会で婚約者として堂々としていただくわ。ねーさまのことは、私と母でお守りしますから、安心してくださいませ」
ん‥‥婚約者二人と会うのは気が重いわね。
私がカイトと会うたび、いつもメルディナが付いて来ていた。
婚約者側の複雑な気持ちは私がよく分かる。
しかも婚約者として紹介されるのであれば、裏切られたあの時の私と同じ立場だ。
自分が望んでいなくても、相手に同じ思いをさせてしまうかもしれない‥‥
「そうやってねーさまは感情が表に出やすいのよね。素直なのはいいけれど、王女としては失格よ。ねーさまには目的があるのですから、しっかり兄の信頼を勝ち取ってもらわねばなりません。でなければ、自由はありませんわよ!」
兄妹揃って脅し文句が得意ね‥‥
「そうね。今後の人生の自由の為だわ」
「ええ。女なら演技くらいできなくてはね。相思相愛で相手の付け入る隙を与えないようにお願いしますわ」
「相思相愛⁈そこまでの演技は必要ないんじゃないかしら」
「そういうところが甘いんですのよ!中途半端では何か企んでいると兄に疑われたら困ります。自分の元に戻って来てくれる安心感を与えなければ、今後市井に何度も行くことができません。暮らすなら何処がいいか下調べは念入りに必要ですから。私と自由に出掛けられるように、ねーさまも努力が必要ですわ」
「‥‥マリーの言う通りかもしれないわね。努力してみるわ」
「ええ、それでよろしいですわ」
童顔のマリーは、歳よりも幼く見えるのに、中身はずっと大人でしっかりしている。
この国の王女は立派ね‥‥
私のように逃げ出した失格王女とは違うわ‥‥。
「五日‥」
「ねーさまも王女でしたら、毎日お忙しかったでしょう?私の気持ちを一番よく分かって下さるのではないかしら?」
「お茶会や夜会のことかしら?」
「主催する準備で今忙しいのです。そういえば、三日後には母主催のお茶会がありますの。当然ねーさまも出て下さいますでしょう?兄の婚約者なのですから」
「最初の約束で交わしたのは、二週間の婚約者のふりだったのよ。二週間後の夜会が終わったらここを出て行くつもりでいたのに‥どうしたらいいのかしら」
「兄はねーさまを妃にすると決めておりますのよ。王太子宮にねーさまがいることは、たぶんすぐに貴族の間で広まるでしょう。兄は婚約者を決めたと皆には説明するはずです。次の王妃主催のお茶会には、二人の婚約者候補だった令嬢も出席することになっていますから、きっとどういう事なのかと聞かれるでしょう」
「困ったわ‥今からでもその二人のどちらかに決めてもらうことはできないかしら?だって契約違反でしょう?結婚するつもりは私には無いのだから」
「兄のあの様子では無理ですわ」
「どうしたらいいのかしら」
「もう‥!これでは姉と妹の立場が逆ですわね。ねーさまは、市井の暮らしができるのなら、この王宮を出たいのでしょう?」
「ええ、もちろん」
「ならば、五日後。私と市井に行くまでしっかりと婚約者らしくして下さいませ。もし、その気が無く逃げるかもしれないと怪しまれたら私と出掛けることも許してもらえなくなるかもしれません」
「ここに閉じ込められてしまうってことかしら?」
「ええ。兄は恋愛などしたこともない人ですから、ねーさまの気持ちなど考えることもできないでしょう。ねーさまが離れようとすれば捕まえて離さないかもしれません」
「皇妃に似ているからこの王宮に置いておきたいのよね‥。両陛下も私が似ているという理由で反対しないのですから‥」
「似ていることは確かですが、似ているという理由だけではないと思います」
「いいえ。ただ似ているからよ。私の他にもっと似た方が現れたら、私のことはすぐに追い出すでしょう。この国の迷信の為に囚われる我が身を呪うわ」
「ねーさま‥」
「ごめんなさい。言い方が悪かったわ。マリーは私の親友になってくれたのに」
「そう思わせてしまった私達の方が悪いですわ。でもこの国を嫌いにならないで欲しいの。それは本音よ。この国のことを皆愛しているからなの」
「ええ‥この国の皆は親切でいい人よね。この王太子宮でも不思議に感じるほど皆優しいもの。‥‥でも、理由があったのよね‥」
「待って、違うわ!皇妃のことは王家とウェルズス公爵家以外は今知らないわ。だから、使用人達の優しさは本物だと信じて欲しいの」
「そう‥‥ありがとう。マリーに出会えたこと、感謝してるわ」
「ふふっ。ねーさまってたぶん、自分が一番自分のこと分かってないわね」
意味深な発言でクスクスと笑い出したマリーは、
「私、本当にねーさまのこと好きよ」
王太子と同じ漆黒の瞳で私を真っ直ぐ見た。
‥‥何か‥素直に喜んでいいのかしら⁈
「まずは三日後のお茶会で婚約者として堂々としていただくわ。ねーさまのことは、私と母でお守りしますから、安心してくださいませ」
ん‥‥婚約者二人と会うのは気が重いわね。
私がカイトと会うたび、いつもメルディナが付いて来ていた。
婚約者側の複雑な気持ちは私がよく分かる。
しかも婚約者として紹介されるのであれば、裏切られたあの時の私と同じ立場だ。
自分が望んでいなくても、相手に同じ思いをさせてしまうかもしれない‥‥
「そうやってねーさまは感情が表に出やすいのよね。素直なのはいいけれど、王女としては失格よ。ねーさまには目的があるのですから、しっかり兄の信頼を勝ち取ってもらわねばなりません。でなければ、自由はありませんわよ!」
兄妹揃って脅し文句が得意ね‥‥
「そうね。今後の人生の自由の為だわ」
「ええ。女なら演技くらいできなくてはね。相思相愛で相手の付け入る隙を与えないようにお願いしますわ」
「相思相愛⁈そこまでの演技は必要ないんじゃないかしら」
「そういうところが甘いんですのよ!中途半端では何か企んでいると兄に疑われたら困ります。自分の元に戻って来てくれる安心感を与えなければ、今後市井に何度も行くことができません。暮らすなら何処がいいか下調べは念入りに必要ですから。私と自由に出掛けられるように、ねーさまも努力が必要ですわ」
「‥‥マリーの言う通りかもしれないわね。努力してみるわ」
「ええ、それでよろしいですわ」
童顔のマリーは、歳よりも幼く見えるのに、中身はずっと大人でしっかりしている。
この国の王女は立派ね‥‥
私のように逃げ出した失格王女とは違うわ‥‥。
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