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マリエットの思惑
兄が婚約者を見つけたと私の元へ来た時は本当に驚いた。
しかもとても嬉しそうで、私は自分の目を疑った。
兄は人を好きになる感情が欠落した人間だと思っていたから‥
変な薬でも飲まされたのではないかと心配になったの。
「お兄様、一体どういうことですの!」
「一目惚れをしたようだ」
「はぁぁぁ⁈」
人生で初めて素っ頓狂な声を出した。
「昨日出会ったんだ。今王太子宮に居る」
「はぁぁぁ⁈」
人生二度目の素っ頓狂な声。
「先程、父上と母上に会わせた後、具合を悪くして寝ている」
「はぁぁぁ⁈」
人生三度目である声を出した後、私は兄に飛び付いた。
「ちょっとお兄様!正気の沙汰ではないですよね?しっかりしてくださいませ!何を飲まされたのです?何か術をかけられたのですか?」
「やめろ!何も飲んでいないし、術もかけられていない。マリーの所に来たのは頼みたい事があったからだ」
私の手を自分の腕から引き離すと、
「彼女は俺の婚約者になることを遠慮しているようだ。万が一にも目を離せば逃げ出してしまう可能性もある。俺は女性の扱いに慣れていない。お前には妹として彼女と仲良くしてもらいたい。力になってくれないだろうか?」
「はぁぁぁ⁈」
本日人生四度目‥‥呆れて言葉が出てこない。
一体どんな女なの?
兄が一目惚れ?
ありえないわ!
今までどれだけの令嬢と出会ってきたと思っているの?
縁談の話は数えきれない。
その全ての女性が、家柄も育ちも容姿も申し分のない方達ばかりだったのよ!
それをまったく相手にもせず、興味を示すことすらなかった男よ?
どうやって誑かしたの?
初めて見る兄の姿。
私を頼るなんて今までなかったのに。
そんな兄が女を逃したくないからと、私に仲良くして繋ぎ止めろと言っている‥‥
嘘でしょう?
この兄の様子だと、まだ出会ったばかりで女の本性は分からないようね‥‥
仕方ないわ‥
一国の王太子に悪い虫を付けるわけにはいかない。
ならば兄に協力するふりをして、その女の本性を見てやりましょうか。
そしてすぐに王太子宮から出てもらいましょう。
だいたい何故王太子宮に居るのよ!
まったく図々しい女ね。
「分かりましたわ、お兄様!私にとってもお義姉様になるんですもの。仲良くして、ずっとここに居てもらえるように協力致しますわ」
「ああ、すまない。俺もこんなことが初めてで、どうしたら良いのか分からなくてな。妹がいれば彼女も安心するかと思って‥‥。名はルリアというんだ。色々助けてやってくれ」
「ええ、そうですわね。女同士すぐに仲良くなりますわ」
私が主催する茶会の招待状を書くのに今日は忙しいというのに、余計な仕事を増やしてくれたわね‥‥
王太子宮に急いで向かうと、具合が悪くて寝ている部屋に案内される。
「私が呼ぶまで皆外にいて」
侍女達を部屋の外に待機させ一人で中へ入る。
何だかとても苦しそうに女性が寝ていた。
黄金の髪色‥‥美しいわね。
肌も白く、寝ていても美人だということはわかる。
すごい汗をかいているわ‥‥
さすがにこのままでは‥‥ね‥
「お義姉様?お義姉様?汗をかいていますわ。着替えなくては風邪を引いてしまいますわ」
思わず体を少しゆすり起こしてしまった。
彼女の開いた瞳は綺麗な紫色。
起き上がった彼女の姿を見て息を呑んだ。
なんて美しい人なの‥‥
「誰?」
その声にはっとして妹だと告げる。
着替えの為に侍女を呼べば何故か兄まで入って来るしまつ‥
本当にこれがあのお兄様なの?
彼女は兄を見て喜ぶどころか困っているように見える。
どちらかといえば、私から見て‥‥嫌そうだわ。
親しみを込めるように、ねーさまと呼びお茶に誘えば兄まで付いて来る。
兄の異常な執着を見て、逆に憐れに思えてきてしまった。
彼女はやはり困っているわ‥‥
兄は婚約者になることを遠慮していると言っていたけれど、これは完全にここから逃げたいのだと察した。
彼女は私に相談があると言ってきた。
何だか訳ありなのは分かったから、王宮へ連れて行き話を聞くと、あの大国の王女だと言うのだから五度目の声を上げそうになる‥‥
王女なのに彼女はあまりにも素直で感情を隠さない。
その真っ直ぐさに、私の心が動いた‥‥
危ないほどの純真さだ。
欲の欠片も感じない。
一国の王太子に惚れられれば、喜ばない令嬢など一人もいないはずだ。
妹の私から見ても兄は良い男だ。
見た目も次期国王としての素質も一級品であるといえる。
彼女が望めばこの国で一番権力を手に入れることさえできるのに、平民になりたいなどと言い出す。
王家に伝わる皇帝に最も愛された女性、皇妃ルリア。
彼女はよく似ている。
髪も瞳も違うが、生まれ変わりを信じるほどに似すぎている。
名前まで同じとくれば気味の悪さを感じてしまう。
兄は彼女を離したくない為に、父や母にすぐに会わせ、理由も皇妃に似ていることを口実に必死のようだけど、彼女にとっては逆効果に働いているようね。
お兄様ったら、馬鹿ね。
女心を知らないから自分だけ先走っているわ。
ねぇ、お兄様。
私、妹として協力してさしあげますわ。
生まれ変わりなんてどうでもいい話。
私、ねーさまを気に入ったわ。
こんな純粋で危ない人、手放すことはできないわ。
私の親友にして側におきます。
だからお兄様とはまったく別のやり方で、私は彼女を捕まえることにしますわ。
感謝してくださいね。
しかもとても嬉しそうで、私は自分の目を疑った。
兄は人を好きになる感情が欠落した人間だと思っていたから‥
変な薬でも飲まされたのではないかと心配になったの。
「お兄様、一体どういうことですの!」
「一目惚れをしたようだ」
「はぁぁぁ⁈」
人生で初めて素っ頓狂な声を出した。
「昨日出会ったんだ。今王太子宮に居る」
「はぁぁぁ⁈」
人生二度目の素っ頓狂な声。
「先程、父上と母上に会わせた後、具合を悪くして寝ている」
「はぁぁぁ⁈」
人生三度目である声を出した後、私は兄に飛び付いた。
「ちょっとお兄様!正気の沙汰ではないですよね?しっかりしてくださいませ!何を飲まされたのです?何か術をかけられたのですか?」
「やめろ!何も飲んでいないし、術もかけられていない。マリーの所に来たのは頼みたい事があったからだ」
私の手を自分の腕から引き離すと、
「彼女は俺の婚約者になることを遠慮しているようだ。万が一にも目を離せば逃げ出してしまう可能性もある。俺は女性の扱いに慣れていない。お前には妹として彼女と仲良くしてもらいたい。力になってくれないだろうか?」
「はぁぁぁ⁈」
本日人生四度目‥‥呆れて言葉が出てこない。
一体どんな女なの?
兄が一目惚れ?
ありえないわ!
今までどれだけの令嬢と出会ってきたと思っているの?
縁談の話は数えきれない。
その全ての女性が、家柄も育ちも容姿も申し分のない方達ばかりだったのよ!
それをまったく相手にもせず、興味を示すことすらなかった男よ?
どうやって誑かしたの?
初めて見る兄の姿。
私を頼るなんて今までなかったのに。
そんな兄が女を逃したくないからと、私に仲良くして繋ぎ止めろと言っている‥‥
嘘でしょう?
この兄の様子だと、まだ出会ったばかりで女の本性は分からないようね‥‥
仕方ないわ‥
一国の王太子に悪い虫を付けるわけにはいかない。
ならば兄に協力するふりをして、その女の本性を見てやりましょうか。
そしてすぐに王太子宮から出てもらいましょう。
だいたい何故王太子宮に居るのよ!
まったく図々しい女ね。
「分かりましたわ、お兄様!私にとってもお義姉様になるんですもの。仲良くして、ずっとここに居てもらえるように協力致しますわ」
「ああ、すまない。俺もこんなことが初めてで、どうしたら良いのか分からなくてな。妹がいれば彼女も安心するかと思って‥‥。名はルリアというんだ。色々助けてやってくれ」
「ええ、そうですわね。女同士すぐに仲良くなりますわ」
私が主催する茶会の招待状を書くのに今日は忙しいというのに、余計な仕事を増やしてくれたわね‥‥
王太子宮に急いで向かうと、具合が悪くて寝ている部屋に案内される。
「私が呼ぶまで皆外にいて」
侍女達を部屋の外に待機させ一人で中へ入る。
何だかとても苦しそうに女性が寝ていた。
黄金の髪色‥‥美しいわね。
肌も白く、寝ていても美人だということはわかる。
すごい汗をかいているわ‥‥
さすがにこのままでは‥‥ね‥
「お義姉様?お義姉様?汗をかいていますわ。着替えなくては風邪を引いてしまいますわ」
思わず体を少しゆすり起こしてしまった。
彼女の開いた瞳は綺麗な紫色。
起き上がった彼女の姿を見て息を呑んだ。
なんて美しい人なの‥‥
「誰?」
その声にはっとして妹だと告げる。
着替えの為に侍女を呼べば何故か兄まで入って来るしまつ‥
本当にこれがあのお兄様なの?
彼女は兄を見て喜ぶどころか困っているように見える。
どちらかといえば、私から見て‥‥嫌そうだわ。
親しみを込めるように、ねーさまと呼びお茶に誘えば兄まで付いて来る。
兄の異常な執着を見て、逆に憐れに思えてきてしまった。
彼女はやはり困っているわ‥‥
兄は婚約者になることを遠慮していると言っていたけれど、これは完全にここから逃げたいのだと察した。
彼女は私に相談があると言ってきた。
何だか訳ありなのは分かったから、王宮へ連れて行き話を聞くと、あの大国の王女だと言うのだから五度目の声を上げそうになる‥‥
王女なのに彼女はあまりにも素直で感情を隠さない。
その真っ直ぐさに、私の心が動いた‥‥
危ないほどの純真さだ。
欲の欠片も感じない。
一国の王太子に惚れられれば、喜ばない令嬢など一人もいないはずだ。
妹の私から見ても兄は良い男だ。
見た目も次期国王としての素質も一級品であるといえる。
彼女が望めばこの国で一番権力を手に入れることさえできるのに、平民になりたいなどと言い出す。
王家に伝わる皇帝に最も愛された女性、皇妃ルリア。
彼女はよく似ている。
髪も瞳も違うが、生まれ変わりを信じるほどに似すぎている。
名前まで同じとくれば気味の悪さを感じてしまう。
兄は彼女を離したくない為に、父や母にすぐに会わせ、理由も皇妃に似ていることを口実に必死のようだけど、彼女にとっては逆効果に働いているようね。
お兄様ったら、馬鹿ね。
女心を知らないから自分だけ先走っているわ。
ねぇ、お兄様。
私、妹として協力してさしあげますわ。
生まれ変わりなんてどうでもいい話。
私、ねーさまを気に入ったわ。
こんな純粋で危ない人、手放すことはできないわ。
私の親友にして側におきます。
だからお兄様とはまったく別のやり方で、私は彼女を捕まえることにしますわ。
感謝してくださいね。
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