【完結】逃げ出した王女は隣国の王太子妃に熱望される

風子

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気になる病

王妃からの招待状はすぐに届き、王妃宮に行くことになった。
朝からエマを中心にフィナとカリンも張り切って準備をしている。
私は気が重く対照的なのだけど、マリーに言われた通り自由を手にする為にもしっかり王太子の信頼を得て、ここから逃げる機会を作りたい。

コンコン

「はい?」

扉が開くと紫色のドレスを抱えた女性が入って来た。

「お初にお目にかかります。ルリア・アルンフォルト王女様。ティナ・モーガンと申します」

「モーガンとはヨハンさんの?」

「はい。ヨハンは私の息子です」

「では、フェルネスさんの?」

「はい。妹です」

「まぁ!!私ヨハンさんにもフェルネスさんにもご迷惑をおかけしたままだったんです」

立ち上がり女性の側に歩み寄ると、彼女は優しく微笑んだ。

「二人とも、ルリア様の大変な状況は理解しておりますからご心配をいただかなくても大丈夫ですわ」

手に持ったドレスを侍女のエマに渡すと、

「ベルラード殿下から衣装の直しを頼まれておりましたのでお持ちしました」

紫色の鮮やかなドレス。

「とても綺麗ですね」

「ええ。本当に良い素材を使われて、立派なドレスでございます。
ですが、デザインを今の時代に合わせて着やすいように、宝石を少し減らしレースやリボンを品良く足して仕上げて参りました。
これから衣装部屋のドレスは全て、ルリア様が着やすいようにお直しさせていただきます。
まずは一着、間に合いましたので今日お持ちしました」

「全て?」

「はい。ベルラード殿下からは、全ての手直しと新たなドレスを二十着ご注文いただいております」

「⁈待って!!ティナさん、待って下さい」

新しいドレス二十着に、衣装部屋の全ての手直しなんて困るわ!
すぐに出て行くことになるかもしれないのに、国のお金を使わせるわけにはいかないわ。
とにかくこれは止めなきゃ!
ティナさんの耳元に近付き小声で言った。

「あの、ベルラード殿下には内緒で、その全てを取りやめてほしいの。その代わりに、今王都で流行っているワンピースを一着頼みたいわ。布地は安いもので結構よ。そしてなるべく色や柄は控えめな物でお願いしたいの」

ティナさんは一瞬驚いた反応をしたが、すぐに微笑んだ。

「かしこまりました。ワンピースは明日お持ちしますわ」

「ありがとう。助かるわ、ティナさん。ヨハンさんやフェルネスさんにもお世話になったのに、ティナさんにまでお願いしてごめんなさい」

「いいえ。何でもお申し付け下さい。私も元はアルンフォルトの人間です。王女様のお力になれることなら何でも致しますわ」

「ありがとう」

「さぁ、では、お支度を始めましょう。私もお手伝いさせていただきますわ」

そう言うと、エマやフィナ、カリンに指示を出しながら私の身支度を手際良く進めていく。

「ルリア様ならどんなドレスも美しく着こなしてくださるでしょうね。仕立て屋の経営者として、ルリア様をイメージしたドレスを一着作りたいですわ」

「いえ‥ドレスはもう結構ですから」

「そうですか?一着だけ作らせていただければ、ベルラード殿下にも私の顔が立ちますし、ドレスを全て取りやめた莫大な損失も少しは助かるのですけれど‥‥」

困ったようにため息をついて私を見る。

‥‥損失‥‥迷惑をかけた上に、仕立て屋に損失を与えてしまうのは‥‥心苦しいわ‥

「‥では‥一着だけ」

「ええ。ありがとうございます。夜会までにはルリア様にぴったりのドレスをご用意致します」

「夜会‥ね。でも夜会用のドレスは時間が足りなくて大変でしょう?シンプルで飾りのない普通のドレスで十分よ」

「大丈夫ですわ。ご心配いりません。私の仕立て屋は優秀なお針子達がおりますの。今はルリア様の為にチームを組みましたので万全の体制で臨みますわ」

チームって何?
私の為に何かするのはやめてほしい。
どうしたら皆に分かってもらえるのかしら‥‥
正直に出て行くつもりだとも言えないし‥
はぁ‥事態が悪化していってる様にしか思えない。

「さぁ、お化粧が崩れますから少し動かないで下さい」

「‥‥」

「本当にお美しいですわ。ヨハンが伏せているのも分かります」

「伏せる?具合でも悪くされたのですか?」

「ええ。天国と地獄を同時に味わってしまったと‥」

天国と地獄?
‥とは一体どういう意味かしら‥

「体調を崩されてしまったのなら心配ですわ。‥その、私が迷惑をかけてしまったせいでしょうか?」

ヨハンさんに迷惑ばかりかけて心労がたたったのかもしれない‥‥

「お気になさらないで下さい。ヨハンも必要な学びでしょう。人生にはそういう時期があるものです」

「はぁ‥‥そうですか。お見舞いに行ければ良いのですが‥‥」

「いいえ。そっとしておいていただける方が治りも早いですから」

「そうですか‥」

元気そうに見えていたけれど、きっとあんな騒ぎに巻き込んだせいで具合を悪くされたんだわ‥‥
私なんかに会うより、寝ている方がきっと治りは早いのだろう‥

バンッ

「ねーさま!お迎えに来ましたわ!私と共に参りましょう」

マリーは勢いよく扉を開け、座ってる私の後ろから鏡を覗き込んだ。

「お化粧をされるとより華やかですわね。女神が嫉妬しますわよ」

「口が上手ね、マリーは」

「あら、私本当のことしか言いませんわ。今日会う女神達にもお気をつけ下さいませ」

婚約者を含めた令嬢達のことだろう。
女にとっての茶会、夜会は戦場だ。
アルンフォルトでも何処の国でも同じなのね。
言葉に毒を忍ばせて、すぐに効くものから後で効くものまで女達は上手く使い分ける。
いつとどめを刺すのか、逆に刺されるのか‥‥
女の戦場は言葉ひとつで戦況が変わる。
面倒な世界ね‥

「ティナ、素敵なドレスね。ねーさまによく似合っているわ」

「ありがとうございます。元のドレスが素晴らしい物でしたので、少し手を加えただけです」

「モーガン商会の仕立て屋は国一番ね」

「マリエット王女様にその様にお褒めいただき光栄です」

「ヨハンは元気になった?」

「いえ、まだ伏せております」

「そう‥。ヨハンは良い男だから可哀想だけど、ごめんなさいね」

「いえ。若い時はこの様な経験も必要です」

「そう思って割り切って、早く元気になってもらいたいわ」

「ありがとうございます」

ヨハンさんは結局何のご病気なのかしら‥
マリーが謝っているということは、何かマリーと関係しているのかしら。
大丈夫かしら‥‥
早く回復して元気な姿をまた見せてくれるといいけど‥‥
何の病気か気になるわね‥‥




























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