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大馬鹿者
王太子宮に戻ると玄関ホールには大勢の人が居た。
マリーはベルラードに抱えられた私を見てすぐに駆け寄り泣いている。
「ねーさまはどこまで馬鹿なのですか!
皆がどれだけ心配したと思っているのですか!どーしてそんなに馬鹿なのよ!
こんな雨の中、何かあったらどうするのですか!」
‥‥何も変えられなかった。
馬鹿など言われたことはないが、マリーの言う通りね‥
「ルリア様!心配しておりました」
エマとフィナとカリンも涙をポロポロと流している。
その後ろにはヨハンさんが立っていて目が赤い。
私のせいで自分を責めたのかもしれない。
「ごめんなさい」
力なく口に出すと、皆が安心したように涙を拭っている。
使用人が全員勢揃いしたようで玄関ホールは溢れかえっている。
「ルリアは体が冷えている。すぐに温かい風呂とスープを用意しろ」
ベルラードの一言で皆が一斉に散らばる。
「準備できるまで温かい茶でも飲もう」
抱えられたまま食堂へ行くと、毛布に包まれ頭をタオルで拭かれている。
「自分でするわ、王太子がそんなこと」
「いいんだ、やらせてくれ」
そう言って優しく髪を拭いている。
「ごめんなさい‥」
消えそうな声で言った。
「悪いのはルリアじゃない。俺だ。俺にできることはやらせて欲しい」
ベルラードが悪いわけではない。
突然皆の生活を乱した私の方が悪いのだ。
王太子であるベルラードを巻き込んだのは私の方なのだから‥‥
私は振り返ると心配そうな黒い瞳を見つめた。
「ベルラードが悪いのではないわ。すべてはこの国に来た私のせいだもの。ごめんなさい」
そう言うとベルラードはまた私を抱きしめた。
「ルリアに会えたことを感謝している」
冷え切っている体なのに私の涙はとても温かくて不思議な感じがした。
その後‥‥
風呂に入れられスープを飲まされ、今はベッドで寝かされ足を包帯で巻かれている。
「足首の炎症を抑える為冷やさねばなりません。足をむやみに動かさず固定していた方がよろしいかと思います。歩けはしますが、無理をして悪化すると長引きますので」
王宮侍医はしっかりと固定すると、ベッドの側にずらりと並んで立っている皆にそう言った。
何故こんなにベッドの側にいるのかしら‥
心配をかけてる身で言うのもなんだけど、皆暇ではないだろうに‥‥
「分かった、気をつけよう」
ベルラードの言葉に、エマ、フィナ、カリンは頷き
「お世話はお任せ下さい!」
と何故か張り切っている。
「これでしばらくは馬で飛び出す心配がなくて安心ですわ」
嫌味を込めてマリーが言うと、
「お見舞いに毎日通うよ」
と、ヨハンさんは誓いを立てている。
「お前は別に来なくていい。俺がきちんとルリアの面倒をみる」
「もう!お兄様達おやめください!ねーさまが今度は這いつくばって逃げ出しますわよ!」
「‥‥」
何も言えない自分が情けない。
ジェイフは綺麗な花をベッドの脇にかざってくれた。
余計に皆に迷惑を掛けてしまっている‥
こんなつもりではなかった‥‥
安静にしてほしいと皆が部屋から出て行くとマリーだけが残った。
「ねーさま‥‥私があの時、側に居なかったから悪いのですわ」
マリーは何故か自分を責めた。
「マリー、誰も悪くないの。本当に誰のせいでもないの。私自身が悪いのよ。
私がこの国に来て、この王太子宮に来たことで皆の人生に悪影響を与えてしまったの。
私が来なければベルラードは、メアリー様かアンナ様とすんなりご結婚が進んだはずだし、お二人にも嫌な思いをさせずに済んだわ。
それにヨハンさんを巻き込むこともなかったし、忙しいマリーにこうして迷惑を掛けることもなかった。
私さえいなければ全て元に戻ると思ったの‥‥だから‥‥飛び出したのよ‥‥」
「死のうとでも考えたのかしら?」
「‥‥それが一番良いと思ったの」
マリーは立ち上がると、
「本当にねーさまは馬鹿ね。誰がねーさまがいなくなって喜ぶと思っているの?
いい加減その短絡的な考え方をやめなさいよ!!
本物の大馬鹿者だわ!
皆がどれだけ心配したと思ってるの?
いなくなってほしいと思う人の心配なんてしないわ!
動けないのだからちょっとは頭を使って皆の気持ちを考えてみるのね!」
マリーは大声で怒鳴ると出て行った。
「大馬鹿者よね‥‥消えることもできなかったんですもの‥‥」
高い天井を見上げるとツーっと目尻から涙が一筋流れた。
マリーはベルラードに抱えられた私を見てすぐに駆け寄り泣いている。
「ねーさまはどこまで馬鹿なのですか!
皆がどれだけ心配したと思っているのですか!どーしてそんなに馬鹿なのよ!
こんな雨の中、何かあったらどうするのですか!」
‥‥何も変えられなかった。
馬鹿など言われたことはないが、マリーの言う通りね‥
「ルリア様!心配しておりました」
エマとフィナとカリンも涙をポロポロと流している。
その後ろにはヨハンさんが立っていて目が赤い。
私のせいで自分を責めたのかもしれない。
「ごめんなさい」
力なく口に出すと、皆が安心したように涙を拭っている。
使用人が全員勢揃いしたようで玄関ホールは溢れかえっている。
「ルリアは体が冷えている。すぐに温かい風呂とスープを用意しろ」
ベルラードの一言で皆が一斉に散らばる。
「準備できるまで温かい茶でも飲もう」
抱えられたまま食堂へ行くと、毛布に包まれ頭をタオルで拭かれている。
「自分でするわ、王太子がそんなこと」
「いいんだ、やらせてくれ」
そう言って優しく髪を拭いている。
「ごめんなさい‥」
消えそうな声で言った。
「悪いのはルリアじゃない。俺だ。俺にできることはやらせて欲しい」
ベルラードが悪いわけではない。
突然皆の生活を乱した私の方が悪いのだ。
王太子であるベルラードを巻き込んだのは私の方なのだから‥‥
私は振り返ると心配そうな黒い瞳を見つめた。
「ベルラードが悪いのではないわ。すべてはこの国に来た私のせいだもの。ごめんなさい」
そう言うとベルラードはまた私を抱きしめた。
「ルリアに会えたことを感謝している」
冷え切っている体なのに私の涙はとても温かくて不思議な感じがした。
その後‥‥
風呂に入れられスープを飲まされ、今はベッドで寝かされ足を包帯で巻かれている。
「足首の炎症を抑える為冷やさねばなりません。足をむやみに動かさず固定していた方がよろしいかと思います。歩けはしますが、無理をして悪化すると長引きますので」
王宮侍医はしっかりと固定すると、ベッドの側にずらりと並んで立っている皆にそう言った。
何故こんなにベッドの側にいるのかしら‥
心配をかけてる身で言うのもなんだけど、皆暇ではないだろうに‥‥
「分かった、気をつけよう」
ベルラードの言葉に、エマ、フィナ、カリンは頷き
「お世話はお任せ下さい!」
と何故か張り切っている。
「これでしばらくは馬で飛び出す心配がなくて安心ですわ」
嫌味を込めてマリーが言うと、
「お見舞いに毎日通うよ」
と、ヨハンさんは誓いを立てている。
「お前は別に来なくていい。俺がきちんとルリアの面倒をみる」
「もう!お兄様達おやめください!ねーさまが今度は這いつくばって逃げ出しますわよ!」
「‥‥」
何も言えない自分が情けない。
ジェイフは綺麗な花をベッドの脇にかざってくれた。
余計に皆に迷惑を掛けてしまっている‥
こんなつもりではなかった‥‥
安静にしてほしいと皆が部屋から出て行くとマリーだけが残った。
「ねーさま‥‥私があの時、側に居なかったから悪いのですわ」
マリーは何故か自分を責めた。
「マリー、誰も悪くないの。本当に誰のせいでもないの。私自身が悪いのよ。
私がこの国に来て、この王太子宮に来たことで皆の人生に悪影響を与えてしまったの。
私が来なければベルラードは、メアリー様かアンナ様とすんなりご結婚が進んだはずだし、お二人にも嫌な思いをさせずに済んだわ。
それにヨハンさんを巻き込むこともなかったし、忙しいマリーにこうして迷惑を掛けることもなかった。
私さえいなければ全て元に戻ると思ったの‥‥だから‥‥飛び出したのよ‥‥」
「死のうとでも考えたのかしら?」
「‥‥それが一番良いと思ったの」
マリーは立ち上がると、
「本当にねーさまは馬鹿ね。誰がねーさまがいなくなって喜ぶと思っているの?
いい加減その短絡的な考え方をやめなさいよ!!
本物の大馬鹿者だわ!
皆がどれだけ心配したと思ってるの?
いなくなってほしいと思う人の心配なんてしないわ!
動けないのだからちょっとは頭を使って皆の気持ちを考えてみるのね!」
マリーは大声で怒鳴ると出て行った。
「大馬鹿者よね‥‥消えることもできなかったんですもの‥‥」
高い天井を見上げるとツーっと目尻から涙が一筋流れた。
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