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戴冠の間11
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「ライーズ・ブロイド。
あなたが王家を思い血脈を重んじてきたことは理解できます。
父が言葉足らずであったこと、母が私一人しか生むことができなかったこと‥
それはこの国を支えてきた者達にとって不安であり不満であったことでしょう。
代々王位継承は男性のみのこの国で、世継ぎの男が生まれなかったことが、この様な悲劇の引き金になった‥
けれど父は歴史を塗り替えようと準備してくれていた。
歴史は時代によって変わるべきです。
大国だからこそ、新しい時代を築いていくべきです。
たとえ王家の血が途絶えても、その時はこの国を一番に考え愛し尽力した者が王となればいいのです。
その時こそ、支え続けたブロイド家の名が挙がったかもしれないのに、あなたは子孫の道を閉ざした」
「うるさい!!綺麗事を言うな!!
私の息子を骨抜きにして、あんな役立たずにしたお前ほど悪い女はいない!
私は国の為にやったのだ!!
この国の発展にお前など必要ない!!」
「あなたこそ綺麗事言わないで!
何と言おうと王と王妃、王家に仕えていた大勢の者の命を奪った事実は変わらない。
お前のその命をもって償いなさい!!」
「くっ‥‥」
「だからこの娘も殺しておくべきだったのよ!!
この娘を生かしておくからこんなことになったのよ!!
すべて、すべてあんたの母親のせいよ。
アリアンはヴィルドルフ様だけじゃなくリベール様までも誑かし私から奪った。
リベール様はいつもあの女のことばかり気にかけ私のことなんて見向きもしない。
そうでしょう?リベール様!
私がこうなったのはあなたのせいでもあるわ!
あなたが私よりあの女ばかりを気にかけていたせいよ!
そうでしょう?
あなたにも責任があるはずだわ!!」
「‥そうだ‥私の責任でもある‥‥」
叔父は右手で目を覆った。
きっとまた自分を強く責めている。
‥‥私やっぱり感情は抑えられないわ。
「いい加減にしなさい、ライナ!
あなたは何でも人のせいね。
そうやってあなたは人生をすべて人のせいにするつもりなの?
父に選ばれなかったことも、叔父に愛されなかったことも、ライーズ・ブロイドに加担したことも何もかもが相手のせい?
笑わせないで!
全部自分のせいでしょう!!
ここにはエリックの部屋から見つかった物があるわ。
これには、エリックは双子の親であることを一生涯口外しないこと、その代わりに騎士団長としての地位と一生困らないだけの金銭をライナから受け取ることが書かれている。
あなた達二人の署名があるのよ!
ライナ、あなたの意志でエリックの子を生み、そして王家を欺いた。
人のせいにしないで!
自分の犯した罪は命をもって償いなさい!
関係した者全てを公開処刑とする!!」
耳をつんざくような叫び声‥
私の合図でシルヴィオはすぐに指揮を執り白騎士達が動く。
会場の中にもライーズに加担していた者が崩れ落ち、騎士に引きずられていく。
マルクスはふらふらになったメルディナを支えるようにして歩いていく。
一度だけ私の方を見ると、
「ルリアにしては上出来だ‥」
そう言って出て行った。
力が抜けて玉座にへたり込む。
足に力が入らない‥‥
終わったのね‥‥
終わったのよね?
あの事故の犠牲者の中には、結婚したばかりの者がいた。
子供が生まれたばかりの者もいた。
あの仕事を最後に病気の親のもとへ戻るつもりの者もいた。
全員に未来があった‥‥
少しは彼らの無念を晴らすことができたのかしら‥‥
「ルリア!!」
ベルラードが玉座にへたり込んだ私の所へすぐに駆け寄り、両手を強く握る。
「よくやり遂げたな。
立派にやり遂げたそなたを父上も母上も誇りに思っているだろう」
その一言に涙が溢れる。
事故の真相を知ってから、重く冷たい石をずっと背負わされているようだった。
重くて押し潰されそうで怖かった。
皆の苦しみを思うと体が震えて手足の先まで冷たくなるような感覚さえあった。
「ルリア‥‥辛い役目を‥‥背負わせてすまない」
リベール叔父様が深々と頭を下げる。
私の溢れた涙が零れ落ちていく。
「ダルトタナードの皆のお陰よ」
私も頭を下げた。
子供のように泣きたい気持ちになった。
声をあげて泣いてしまいたいほど言葉にできない感情が溢れる。
「ルリア‥後でいくらでも俺の胸で泣いていい。けれど今は王であるそなたがここで泣くべきではない」
そう言ってベルラードは隠すように私を抱きしめ涙を拭った。
「ハァ‥まったくお兄様ったら人目もはばからず困ったものね‥‥
さて‥‥ではそろそろご褒美といきますか‥‥」
マリーがそっと呟いた声は誰にも聞こえていなかった。
あなたが王家を思い血脈を重んじてきたことは理解できます。
父が言葉足らずであったこと、母が私一人しか生むことができなかったこと‥
それはこの国を支えてきた者達にとって不安であり不満であったことでしょう。
代々王位継承は男性のみのこの国で、世継ぎの男が生まれなかったことが、この様な悲劇の引き金になった‥
けれど父は歴史を塗り替えようと準備してくれていた。
歴史は時代によって変わるべきです。
大国だからこそ、新しい時代を築いていくべきです。
たとえ王家の血が途絶えても、その時はこの国を一番に考え愛し尽力した者が王となればいいのです。
その時こそ、支え続けたブロイド家の名が挙がったかもしれないのに、あなたは子孫の道を閉ざした」
「うるさい!!綺麗事を言うな!!
私の息子を骨抜きにして、あんな役立たずにしたお前ほど悪い女はいない!
私は国の為にやったのだ!!
この国の発展にお前など必要ない!!」
「あなたこそ綺麗事言わないで!
何と言おうと王と王妃、王家に仕えていた大勢の者の命を奪った事実は変わらない。
お前のその命をもって償いなさい!!」
「くっ‥‥」
「だからこの娘も殺しておくべきだったのよ!!
この娘を生かしておくからこんなことになったのよ!!
すべて、すべてあんたの母親のせいよ。
アリアンはヴィルドルフ様だけじゃなくリベール様までも誑かし私から奪った。
リベール様はいつもあの女のことばかり気にかけ私のことなんて見向きもしない。
そうでしょう?リベール様!
私がこうなったのはあなたのせいでもあるわ!
あなたが私よりあの女ばかりを気にかけていたせいよ!
そうでしょう?
あなたにも責任があるはずだわ!!」
「‥そうだ‥私の責任でもある‥‥」
叔父は右手で目を覆った。
きっとまた自分を強く責めている。
‥‥私やっぱり感情は抑えられないわ。
「いい加減にしなさい、ライナ!
あなたは何でも人のせいね。
そうやってあなたは人生をすべて人のせいにするつもりなの?
父に選ばれなかったことも、叔父に愛されなかったことも、ライーズ・ブロイドに加担したことも何もかもが相手のせい?
笑わせないで!
全部自分のせいでしょう!!
ここにはエリックの部屋から見つかった物があるわ。
これには、エリックは双子の親であることを一生涯口外しないこと、その代わりに騎士団長としての地位と一生困らないだけの金銭をライナから受け取ることが書かれている。
あなた達二人の署名があるのよ!
ライナ、あなたの意志でエリックの子を生み、そして王家を欺いた。
人のせいにしないで!
自分の犯した罪は命をもって償いなさい!
関係した者全てを公開処刑とする!!」
耳をつんざくような叫び声‥
私の合図でシルヴィオはすぐに指揮を執り白騎士達が動く。
会場の中にもライーズに加担していた者が崩れ落ち、騎士に引きずられていく。
マルクスはふらふらになったメルディナを支えるようにして歩いていく。
一度だけ私の方を見ると、
「ルリアにしては上出来だ‥」
そう言って出て行った。
力が抜けて玉座にへたり込む。
足に力が入らない‥‥
終わったのね‥‥
終わったのよね?
あの事故の犠牲者の中には、結婚したばかりの者がいた。
子供が生まれたばかりの者もいた。
あの仕事を最後に病気の親のもとへ戻るつもりの者もいた。
全員に未来があった‥‥
少しは彼らの無念を晴らすことができたのかしら‥‥
「ルリア!!」
ベルラードが玉座にへたり込んだ私の所へすぐに駆け寄り、両手を強く握る。
「よくやり遂げたな。
立派にやり遂げたそなたを父上も母上も誇りに思っているだろう」
その一言に涙が溢れる。
事故の真相を知ってから、重く冷たい石をずっと背負わされているようだった。
重くて押し潰されそうで怖かった。
皆の苦しみを思うと体が震えて手足の先まで冷たくなるような感覚さえあった。
「ルリア‥‥辛い役目を‥‥背負わせてすまない」
リベール叔父様が深々と頭を下げる。
私の溢れた涙が零れ落ちていく。
「ダルトタナードの皆のお陰よ」
私も頭を下げた。
子供のように泣きたい気持ちになった。
声をあげて泣いてしまいたいほど言葉にできない感情が溢れる。
「ルリア‥後でいくらでも俺の胸で泣いていい。けれど今は王であるそなたがここで泣くべきではない」
そう言ってベルラードは隠すように私を抱きしめ涙を拭った。
「ハァ‥まったくお兄様ったら人目もはばからず困ったものね‥‥
さて‥‥ではそろそろご褒美といきますか‥‥」
マリーがそっと呟いた声は誰にも聞こえていなかった。
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