女神に頼まれて村作りをしてみた

ひいらぎ

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女神に頼まれて村作りをしてみた

貴方が、遠くに行ってしまうのが怖いの 上

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アールが帰ってきた。元々旅人で釣人だったので暫く帰らないことは予想していたが想像するより遥かに長い外出になっていた。旅先の話を聞いていると幾つか気になる事があった。
まず五つ目に行った村なのだが、丁度リカがミーアを思い出した辺りだった。同時刻、その村でも女神様…。と呟く人がいたらしい。しかし思い出した訳ではなくただその言葉が出てきただけらしい。
「あとは……あぁ、その次の次に立ち寄った村ですね。そこが一番長居しましたね。あそこは川釣りができて良かったです」
どうやらそこでは一度だけ黒い影を見たらしい。とても禍禍しい人の形をした黒い影を…。
「その影って…一翔さん…」
「あぁ、あれと同じだろうな」
「知ってるんですか?あいつの正体を」
興味津々にアールが聞いてくるのであの日の事を説明した。勿論無駄な箇所は省いてだけど。
「なるほど……わかりました。こちらでも調べておきましょう。あ、それとなんですが」
ついでの用に取り出されたのは何かのチケットだった。
「こ、これは!ア、アールさん、これをどこで?」
「最後に行った街で頂きましてね。ペアチケットですし是非お二人でどうぞ」
「良いんですかっ?」
「えーと、アール。これはなんだ?」
「あぁ、一翔さんはわかりませんよね。ここから少し離れた街にデパートがあるんですが、それの入場チケットです」
よくわからないがリカの目の輝き方が凄いので断ることはできない。という事は理解できる。いや、察せる。
「私、はじめてアールさんのことかっこよく見えました……!」
「うーん、一言余計ですよ?まぁ、楽しんで来てください」
「はい!ありがとうございます!行きましょう?一翔さん」

さっきのチケットはどうやら例のデパートのプレミアムデー的なのをやっていてそれの入場チケットらしい。
「一度行ってみたかったんですよね!あぁ、楽しみだなぁ…」
リカがこれ程まで楽しそうにしているのはもしかしたらはじめてかもしれない。追っ手から逃げて村へやって来て最近も色々とあった。これがリカの素なんだろうか?もしそうだとしたら今まで彼女にしてきた事は本当に正しかったんだろうか?揺れる車体の中でそんな事を考えていた。物思いに耽ていると、時間と言う物は本当にはやく、いつの間にか目的地に着いていた。
「一翔さん!着きましたよ!ほら、ボーとしてないで行きますよ!」
「あ、あぁごめん」
「一翔さんがボーとするなんて珍しいですね?何かありました?」
「いや、大丈夫。なんでもないよ」
その後、世間話をしながら歩いてデパートまで行った。流石プレミアムデーなんてやるくらいだからかなりの大きさだ。

久しぶりに買い物をしたけどやっぱり男の俺には疲労が大きい。リカの方は……どの世界でも買い物は女性にとって楽しいんだろうか?信じられないくらいには元気だ。
「ふぅ、楽しかったですねー、一翔さん後半はかなり息切れでしたけど」
「うぐ、そこを疲れると辛い…」
朝一から出発して昼までデパートが開いていたので流石に昼食を取ることにした。リカのオススメの店があるらしい。パフェとかパンケーキが出てくるような所なのかな?まぁ、パンケーキはともかくパフェは意外と腹に貯まるけど…。
「あ、そういえばリクエストとかありますか?一応この街には詳しいので大体のリクエストには答えられますよ」
「うーんそうだな…この世界にあるかわからないけどハンバーガーとかあるか?」
「ハンバーガー…?あ、もしかしてパンみたいなので色々挟んでるあれですか!?」
「そうそうそんな感じ。こっちにもあるんだなぁ…」
「お母さんは連れてってくれなかったけど場所は知ってますよ!私も一度行ってみたかったんですよね~」
これだけ楽しそうなリカを見ているとこの世界がどこかおかしいのが嘘の用にも見えてくる。でも、多分確実に何かがおかしい。リカの住んでいた村の人ももしかしたら戻ってくるかもしれない。ここ最近、この世界でのんびり暮らすのも悪くはないと思うようになってきた。でものんびり暮らしてるだけじゃ何もかも間に合わなくなるかもしれない。何をしたら良いのかもわからない。でも…できるのは俺しか居ないんだと思う…………。
「一翔さん!また怖い顔して」
「あ、あぁ。ごめん…」
「あの、一翔さんは女神様からのお願いを聞いてここに来たんですよね?」
「まぁ、そんな感じだな」
「じゃあ…一翔がそのお願いを終えたらやっぱり元の世界に帰るんですか?」
それは……どうなんだろうか。最初は速く帰りたいと思っていたけど…。今ではこのまま居たいと思う気持ちもある。少し黙りこんだ後、結局結論は出せなかった。
「お願いします。帰らないで……もしこの世界を救って帰っちゃうならこんな世界どうなったって良い!村は燃やされて、両親はもう居ない!大国からは追われてる。そんな中、ようやく見つけた光なんです!一翔さん……お願い。一緒に居て……」
「リカ……」
「好きです…。一翔さん……好きです、何度だって言える!このまま、貴方が遠くに行ってしまうのが怖いの」
「リカ…俺だってリカの事は好きだ。だけど、だからこそこの世界を終わらせたく無いんだ。それに、まだ帰るって決まった訳じゃないだろ?」
「本当にそう思いますか?神でもどうしようもないこともあるんですよ」
「それってどういう…」
「まだわからないけどそんな気がするんです……」
そう言ったままリカは泣いたまま俯いていた。こんな時、どうしたら良いんだろうか…僕は、俺はどうしたら良いんだ?今まで正しいと信じて来たことが一人の少女の心によって根本から覆された。今までこの世界を救うためたならこの世界の住人に恨まれようとも憎まれようともなんとしても救って見せる。そう思ってたしそう信じていた。でも、側に居たい。そんな気持ちが芽生えてしまっていた事に気づいたんだ。
「フフ、ごめんない一翔さん。困らせちゃいましたね。もしかして恋愛経験あまりないんですか?」
「無くは無いんだけど……その何て言うか」
「失敗続きだったんですか?」
「うん、まぁ…」
「そうなんだ…よし、いっぱい泣いた事だしご飯にしましょ?ご飯でも食べながら向こうでの話聞かせてくださいよ」
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