超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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第465話 冥府の王⑯

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 由利亜が僕らを導いたのは、更に階段を上がった2階の奥にある展示室だった。
 すでに照明を消され、非常灯だけがともった殺風景な正方形の部屋である。
 壁際のガラスケースの中に陳列されているのは、倉庫にあったのと同様の土器や土偶の類いだろう。
 その正面の壁だけケースがなく、縦横1メートルほどの大きな壁画になっていた。
 額縁に入った壁画の下には簡単なキャプションがつけられていて、『8号古墳玄室壁画』というタイトルだけが読み取れた。
 近くで見ると、壁画はあのPCに保存されていた画像そっくりだった。
 サイズが大きくなっている分、画像ではよくわからなかった細部の様子がよくわかる。
「ち、寝過ごしちまった。起こしてくれればよかったのに」
 壁画を眺めていると、背後から大門剛の声がした。
「危うく歴史的瞬間を見逃すところだったじゃねえか」
 僕らの横に立つと、きまり悪そうに刈り上げの頭をかいた。
 由利亜は、そんな剛を冷ややかな目でちらりと眺めただけだった。
「で、パズルを解くって、実際はどうやるの?」
 気まずい空気に耐えられなくなって、僕は壁画を見上げて動かない由利亜にそう声をかけてみた。
「ここを見て」
 由利亜が壁画の左下の一角を指で指し示す。
「このプレートだけ、文様がない。どうしてだか、わかる?」
「え?」
 僕は身を乗り出した。
 改めて指摘されてみると、由利亜の言う通りだった。
 壁画は6×6の計36枚のプレートで構成されているのだが、左の角の1枚だけ、まっさらなのだ。
「それ、外してみたら?」
 ふいに口を開いたのは、僕の手を握って壁画に見入っていた香澄だった。
「その1枚を外しちゃえば、模様が動かせるようになるでしょう?」
「へえ」
 由利亜が感心したような表情で、香澄を見下ろした。
「香澄ちゃん、あなた、頭イイね。まさにその通り。それがパズルを解く秘密」
「香澄ね、パズルとかクロスワードとか、大好きなんだ」
 照れくさそうに微笑んで、香澄が答えた。
 僕はと言えば、ちょっと複雑な気分だった。
 妹が褒められるのはもちろんうれしいけど、その一方でなんとなく情けない気分になる。
 これでは兄としての威厳など、あってないようなものではないか。
「このレプリカはね、香澄ちゃんの言うように、各プレートが動かせるようになってるの。叔父さんがそのつもりで作ったから。でも、実際に試してみる前に、おじさん、殺されちゃったみたいなんだけどね」
 由利亜が指で強く押すと、その1枚がかすかに動いた。
 慎重に取り外し、それを剛に手渡す由利亜。
「これ、持っててくれる?」
「どのくらいかかる?」
 少し心配そうに、剛が訊く。
「6時過ぎたら、おまえの父ちゃんの見回りが始まるんだろ」
「あらかじめパソコンの方でシュミレーションしてあるから、すぐだよ。私としても、その時間には夕ご飯作らなきゃだしね」
 由利亜が壁画に手を触れた。
 空いたスペースに向かって、隣の1枚を動かしていく。
 それからは、速かった。
 無言ですいすいプレートを縦横無尽にスライドさせていく由利亜。
 ハンザキと勇者4人のプレートは、時に遠く離れたりしながらも、次第に近づいていくようだ。
「できたよ」
 10分ほどして、由利亜が手を止めた。
「構図だけじゃなく、文様もきれいにつながってるわ。つまり、これが古代からのメッセージっていうわけね」
 

 

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